短期滞在者のNHS利用に課金へ
女王の施政方針演説
エリザベス女王は8日、政府の施政方針演説を行い、その中で英国に短期間のみ滞在する移民が国民医療制度(NHS)を利用した場合には、費用の負担を求めるとの方針を発表した。
英国では国会の開会日に政府が起草した施政方針を女王が代読するのが習わしとなっている。一般的に「クイーンズ・スピーチ」と呼ばれるこの行事においては国会での法制化を目指す項目が読み上げられるため、現政権が今後どのような政策を進めようとしているかが明らかになる。
今年の施政方針演説では、女王は政府の最優先事項が財政赤字の削減であると述べた上で、不法移民の取り締まりにも注力していくとの考えを発表。「国家に貢献する人々を誘致し、貢献しない人々の流入を阻む」とした上で、短期滞在者によるNHS利用に際しては、利用者本人または出身国の政府に金銭的負担を求める方針を示した。
現在のところ、外国人であってもNHSへの加入が認められた者は原則的に診察時などに支払いをする必要はなく、また緊急治療の大部分は国籍や滞在期間を問わず費用は無料と定められている。
BBCなどによると、今後の法制化が検討される移民政策には、貸家の大家が借家人の在留資格を確認することの義務付けや、不法移民を雇用した企業への厳罰化、不法移民に対する運転免許証の発行の禁止などが含まれる。
また今年の国会開会式には、チャールズ皇太子が故ダイアナ元妃との離婚後初めて出席。エリザベス女王からの王位継承を視野に入れての動きと見られている。
8日の国会開会式に出席したエリザベス女王(右から2人目)と
チャールズ皇太子(同3人目)ら
数字で見るNHSの実態
4000万ポンド(約62億円)
過去4年間に英国への旅行者に対して行った治療などの費用のうちでNHSが回収不可能と判断した最低見積額
1066億ポンド(約17兆円)
2012~13年に見込まれるNHSの総支出額
146,075人
2012年にNHSが雇用した医師の数
660,153人
2013年2月末の時点で診断を受けるための順番待ち名簿に記載されている患者数
52件
ブライトン・サセックス大学病院トラストで今年1月から3月にかけて救急患者が12時間以上の待機を余儀なくされた件数