Donnerstag, 10 Oktober 2013 09:20

高齢者の共同生活
シニア版WGで安心&健康な生活!?

フィッシャー平松 由紀子

WG(Wohngemeinschaft=ルームシェア)と聞くと、まずはドイツでよくある大学生の共同生活を想像することでしょう。「1人で住むより経済的だから」という理由から、何人かでアパートの家賃を分割し、それぞれが1部屋を所有。キッチンやバスルームは共同で、その他、各自が掃除などの雑用を分担し、時々一緒に食事をしたり、お互いに協力し合ったりして楽しい学生生活を過ごす……。これがよくあるWGのイメージ。実際に、WG生活を若かりし頃に経験された方もいることでしょう。親の目線から見れば、共同生活をすることで子どもが孤独にならず、寮生活と個室アパートの中間のような感じで、適度にプライベートを保ちつつ、周囲の協力を得られる環境に安心を感じるのではないでしょうか。

老後

しかし、「WGのシニア版!? 大人で、年のいった私には関係のない話」「今さら、共同生活なんて無理」、と思われる方もいるかもしれません。でもここで、上記の「子ども/学生」を「シニア」という文字に、「親」を「同居できない家族」と置き換えて、もう一度読んでみてください。そして、シニア版のルームシェアが本当に100%無理で無関係な話かどうか、じっくりお考えいただければと思います。

2012年夏、ドイツ社会保障法の改正案が可決されました(第11編38条項a)。この改正により、介護度の認定(I~III)に応じて在宅訪問介護サービスを受けている人が、3人以上のグループで新たにWGを作ると、介護保険会社より経費の扶助が得られることになりました。

この法改正の背景には、1人暮らしの高齢者数を減らすという目的のほかに、自宅で老後を過ごすことを重視する視点、そして、高齢者同士の社会性を維持し、コミュニケーションのある生活を通して認知症やその他の疾患を予防しようという願いがあります。また、要介護者が一緒に暮らすことを推奨することで、介護する側への援助にもなります。

同じ改正により、いわゆる「要介護」の認定を受けていない人でも、介護が必要な人が何人か集まって1人の介護者に世話を頼む場合、介護時間数の総計が週14時間以上になることを条件に、介護保険の会社から介護者に年金の保証をしてもらうことが可能となりました。

ここで、ルームシェアによるメリットについて考えてみましょう。まず第1に、1人住まいではなくなることです。1人で住むのは確かに気楽です。同居人に憚られることなく、好きな時間に起き、横になり、飲食し、誰と会うにも遠慮が要りません。ただ、その背景に見え隠れするのは、孤独化による社会性の喪失や言語障害です。実際に、会話をしなくなると言語中枢が退化し、文章構成や発語に不自由が生じたり、人とのコミュニケーションに必要な忍耐力が低下し、会話のタイミングにずれが発生したりします。1日の生活が不規則になることは後々、認知症の促進にもつながっていきます。

刺激や変化が無いことは、「安定」とも言えますが、高齢者の場合はこれが「退化」につながりかねません。誰かと同居していれば、否応なく顔を合わせて何かを話します。そうでなくとも感情の起伏が生じるものです。それらをすべてマイナス面と捉えるのではなく、誰かが傍にいてくれて、もしもの時に自分の異変に気付いてくれる。そして、必要に応じて家族や病院に連絡を取るなどの緊急措置を施してくれる。そう考えると、「安心」というメリットが見えてきます。次回も、シニア版WGについて、もう少し考えてみましょう。

関連ドイツ語
(m)男性名詞、(f)女性名詞、(pl)複数
フィッシャー平松 由紀子
1971年生まれ。93年看護師・保健師国家試験に合格後、サッカーが縁で訪れたのがきっかけで、デュッセルドルフへ来独した。1年間のオペア経験の後、市内各種医療機関に勤務し、ドイツでも看護師国家試験に合格。Dejak友の会、竹の会の会員。在独邦人の高齢化について考える。
最終更新 Montag, 20 Mai 2019 17:19