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老後への備え
ドイツでの介護費用は保障されているか ②

渡辺・レグナー 嘉子

今回は、介護ホームに掛かる膨大な経済的負担をいかに軽減するかについてお話しします。老後は言うまでもなく、なるべく長く自宅で過ごせることが一番で、かつ経済的です。自宅に長く住み続けるために最も大事なのは、元気なうちにバリアフリーの家へ引っ越す、もしくは自宅を改築することです。そして、自宅介護を確実なものにするために、近所の介護支援センター(Pflegestützpunkt)や介護サービス会社、食事の宅配サービス会社の情報を入手しておき、自身や家族が要介護になったらすぐに対応できるようにしておきましょう。また、自身で手続きができなくなったときのために、それらを代行してくれる代理権(Vorsorgevollmacht)を持つ人を決めておくことも大切です(当会発行の冊子『ドイツで送る老後』もご参照ください)。

また、法定介護保険に加えて、要介護になったときに介護費が支払われる任意の介護用保険(要介護時に月々一定額が支払われるPflegetagegeldversicherungや、法定介護保険だけでは賄えない介護ホームの費用をカバーするPflegekostenversicherung)に加入しておくこともお勧めします。ただし、保険会社と被保険者の年齢により掛け金に差があるので、複数の保険会社を扱う代理店に相談したり、保険会社の条件を比較できるウェブサイト (INOVEXX、Pflegeversicherung Experten、testsieger.pflegeversicherung24)などで、掛け金や要介護時の支払い額、加入時の年齢制限や健康診断の有無などを事前に調べることが必要です。当会のウェブサイトもぜひ参考にしてください。

さて、どこに住もうとも、要介護状態となって家事ができなくなった場合、食事の問題は大きな割合を占めます。和食が食べたくても、経済性を考えると、毎回の食事を日本食レストランに注文するわけにはいきません。そこで、ほかの可能性として考慮の対象となるのは、やはり日本人を含むグループホームやWG(共同住宅)のメリットと、互助や日本人ボランティアの援助です。

老後

現在、在独外国人のうち最大の割合を占めるトルコ系住民は、異文化であるがゆえに起こる介護時の不便さを解消するため、自分たちの言語や文化を配慮したデイケア施設や介護用WGを作り、言葉の通じる介護士やヘルパーの派遣、ボランティアグループなどを組織しています。ドイツの国や州、および市の厚生・移民担当機関、そして介護現場を担う社会福祉法人は、異なる文化を持つ人々の介護に積極的で、全国レベルで「文化を配慮した介護 (Kultursensible Pflege)」をテーマにプロジェクトを進めています。このトルコ系住民の例を見れば、外国人が独自の施設計画を練って国や市に援助を求め、人材や経済的な施設を確保することも不可能ではないのだということが分かります。

私たち日本人も、こうしたシステムを上手く取り入れ、我々の状況に生かしていくことが必要です。介護の準備は、本人が必要となってから始めていては手遅れです。介護を必要としない元気なときにこそ、自分たちのための「文化を配慮した介護」、経済的な介護施設やWGを準備していくこと、そのために関連諸機関に積極的に働き掛けていくことが、ドイツでの老後をより確かにする唯一の道と言えるのではないでしょうか。

 DeJaK-友の会からのお知らせ 

ピアノコンサート気軽に楽しむクラシック
クリスマス前の午後のひとときを、ぜひ一緒に楽しみましょう。

期日: 12月17日(水)14:30~
ピアノ演奏: 山田千夏氏
場所: zentrum plus(Flingern, Flurstr. 57c, 40235 Düsseldorf)
入場料: 大人2ユーロ、子ども50セント

渡辺・レグナー 嘉子
在独法人の高齢時の問題に積極的に関わっていくことを目指す「DeJaK-友の会」代表。 著書に日本語教科書『Japanisch, bitte! 日本語でどうぞ』『ドイツ会話と暮らしのハンドブック』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』などがある。
DeJaK-友の会((www.dejak-tomonokai.de)

最終更新 Montag, 20 Mai 2019 17:16  
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