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Fr. 25. Mai. 2018

ドイツ歯科事情

ドイツの歯科治療の話になると、「すぐに歯を抜こうとするから行きたくない」「ドイツ人の大きな手で歯を治療されるのは嫌だ」「全身麻酔をすることもあるから怖い」と、事実かどうかは別として、ネガティブなイメージが先行しがちです。しかし、日独どちらも世界に誇る先進国。医療の基本は同じはずなのに、なぜこんなにも認識に差があるのでしょう。当コラムでは、実際の日本とドイツの歯科治療の違いや、国民性や社会的背景も踏まえてお伝えいたします。

歯科医師 宮川順充
1971年札幌生まれ。95年歯科医師資格、2003~07年オーストリア・ドナウ大学院大学の講師およびルドルフィナーハウス病院内歯科医院(ウィーン)勤務。08年歯科医療技術インスティテュート IDEA(カリフォルニア)顎機能矯正学部門講師。09~13年ランドハウス歯科医院勤務。14年より同院の経営パートナー。 www.landhausstrasse.com

歯の根管治療について

虫歯に気が付いて歯科医院に行ったら、「虫歯が進行して神経にまで達しているので、歯の神経を抜きましょう」と歯科医師から言われた経験がある方も多いと思います。初期の虫歯であれば、少し削ってプラスチック系の素材で詰め物をしたり、また、もう少し大きな虫歯であれば、金属やセラミックで歯を修復したりします。しかし、虫歯が進行して感染範囲が広がると、神経を抜かなければならない可能性が高くなります。

「歯の神経」とは、正確には「歯髄」といって、歯の中心部にある管の中に「感覚器官の神経」と「栄養補給源となる毛細血管」が詰まった神経組織です。一般的に、身体に細菌感染が起こると、その場所に免疫細胞などが集まって、身体を外敵から守ろうとする反応が活発に起こります。しかし、歯髄の場合は身体との交通路が歯根の先のわずか0.2~0.3mmほどの大きさしかないため、一度歯髄に細菌が侵入して急激な増殖を始めると、感染を防御するだけの十分な免疫反応が働きません。一度感染を許してしまった歯髄は、細菌にとって、いわば「栄養の宝庫」なのです。

実際に神経の治療(根管治療)をする際には、いくつかのプロセスが必要になります。まず、①麻酔をした後に歯に穴を開けて歯髄をすべて取り出し、②空洞になった管の壁面から侵入した細菌を削り取り、③消毒を十分に行った上で、④隙間が生じないよう歯根先まで人工物で管を封鎖します。

根管治療に必要な通院回数は2~3回(感染が強い場合には3~4回)、治療に必要な時間は、すべての通院を合わせて、前歯で約1.5時間、奥歯では3~5時間ほどかかります。

根管治療には完全に滅菌された器具が用いられ、専用のマイクロスコープで拡大した視野の下で、口腔内と歯の治療を行う必要があるのですが、このような質の高い治療は、基本的に自己負担診療になります。ドイツの歯科医院では一般的に、前歯で500~800ユーロ、奥歯で1500~1800ユーロの治療費を設定しているところが多いようです(歯冠部の治療費は含まず)。米国ではさらに高く、2500ドルを超える治療費設定をしている根管治療専門医もあるようです。

当歯科医院で日本人の患者さんにこの話をすると、大抵の方は「日本ではこれほど長い時間をかけて治療なんてしたことないし、そんな高い治療費は考えられない!」と口を揃えて言われますが、実はここに日本の歯科医療保険制度が抱える問題点があるのです。

日本ではこの根管治療にも保険が適応されるため、多くの歯科医院が保険の範囲内で治療を行っています。しかし、そこにはしっかりとした治療を行うための機器や技術への対価は含まれていません。奥歯の治療でも、保険の補助額は数千円です。

「歯の断面組織図
歯の断面組織図

したがって、本来ならば数時間かかる治療を、わずか30~40分以内に終了させなければ、歯科医院側としては割が合わないというのが現実で、結果として、治療の失敗(膿がたまって歯肉が腫れる、顎の骨が溶けるなど)が多くなります。統計的に、日本の公的保険における根管治療の成功率は約4割、再治療に至っては2割以下ともいわれています。

根管治療が必要になる前に、予防歯科を心掛けましょう!

 
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