ドイツの食生活と生活習慣病

ドイツの食事は美味しいのですが、カロリーや体重の増加が気になります。主人はドイツビールが美味しいと言って毎晩たくさん飲みます。このような食生活を続けて、大丈夫でしょうか?

Point

生活習慣病

生活習慣(ライフスタイル)病とは
食べ過ぎや運動不足など、ライフスタイルに起因する肥満、高血圧、脂質異常、糖尿病、脳卒中、心臓病などを指します。日本人の約3分の2が、生活習慣病が原因で亡くなっています。肥満(内臓肥満)に加えて、高血圧、高血糖(糖尿病)、脂質異常のうち2つ以上が当てはまると、メタボリック症候群とも呼ばれます。

生活習慣病

なぜ生活習慣病になるのか
若い世代では、新しい細胞をつくるために多くの栄養分を必要とします。しかし、新陳代謝が落ちてくる年代では、摂取カロリー量が体を動かす消費エネルギーを上回った状態が続くと、余分な栄養分は脂肪としてたまり、この脂肪が、種々の動脈硬化性疾患の素地となります。

ドイツの食生活の特徴

日本と比べ、ドイツの食生活にはいくつかの特徴が挙げられます。ドイツ栄養協会(DGE)は、ドイツ人の糖質・塩分・脂質分の過剰摂取を警告しています。

摂取カロリー量が多い
日本人の成人の1日当たりの摂取カロリー量は、男性が平均2084Kcal、女性が1667Kcalです(平成22年「国民健康・栄養調査結果の概要」より)。一方、ドイツでは男性2500〜3000Kcal、女性2000〜 2500Kcal(年齢によって異なる)がおおよその基準ですが、この範囲を越える割合が男性で36%、女性も約31%に上っています(DEGS2、マックス・ルブナー研究所「第2回国民栄養調査」調べ)。

脂質の割合が多い
日本人のエネルギー摂取の割合は、炭水化物(お米やパンなど)の比率は60%と高いですが、脂質分は28%。ドイツでは、炭水化物の比率は約40%、脂質分は45%です。脂質の摂り過ぎはコレステロール値を上昇させます。

ドイツでよく食べられる食品のカロリー

食品ドイツ語カロリー(kcal)脂質
(%)
【参考】ごはん(1膳) Reis 160 0
ファストフード
ドュナーケバブ1食 Döner Kebab 644 19
カリーヴルスト (1人前) Currywurst 510 80
サラミピザ (1枚) Pizza Salami 800 45
フライドポテト(100g) Pommes Frites 155 30
デザート
アプフェルシュトゥルーデル (100g) Apfelstrudel 230 45
ヘーゼルナッツアイス
(100g)
Haselnuss-Eis 260 60
チョコレートプディング
(100g)
Schokoladen-pudding 150 16
サクランボの甘煮と生クリーム添えワッフル(1人前) Waffel mit Kirsch und Sahne 400 - 600
アルコール
ビール(200ml) Bier 80 -
白ワイン(200ml) Weißwein 150-160 -
* カロリーはおおよその値。脂質はカロリーに占める割合。

運動不足の要因

日常の交通手段が車
ドイツでは通勤に車を使っているという方も少なくないでしょう。実際、ドイツ人の平日の移動手段をみてみると、車・バス・電車などを利用する人が54%、健康のために徒歩や自転車を積極的に用いる人は39%です(2013年「Techniker Krankenkasse(TK)」調べ)。車は便利な反面、運動不足に繋がります。

デスクワーク時間の増加
コンピューター作業が増え、座って仕事をする時間が長くなっています。前出のTKの調査によると、1日のうち、座っている時間が9時間以上というドイツ人は全体の27%、5~8時間の人は46%です。半日以上、ほとんど体を動かしていないことになります。

日本人の生活習慣病

太っていないのに糖尿病
欧米人の2型糖尿病患者(成人後になる糖尿病)のほとんどが見た目も肥満であるのに対し、日本人の2型糖尿病患者はそれほど太って見えません(平均BMIが24 kg/m2前後)。原因としては、過食による高血糖に対応するインスリン(膵臓から分泌される血糖低下ホルモン)の分泌が十分でないことと、インスリンの作用の受け皿となる臓器の作用不足が指摘されています。

塩分による高血圧
日本人の高血圧の約半数は、塩分の摂り過ぎが血圧上昇に繋がる「塩分感受性高血圧」と言われています。運動不足や海外生活からくるストレスも、血圧上昇に関与しています。

心筋梗塞・脳梗塞の発症
血管の内側にできたプラーク(LDL-コレステロールなどが沈着した固まり)が破れ、そこに血栓ができて発症します。高コレステロール血症、高血圧、糖尿病の人は要注意です。喫煙は、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患のリスク因子です。

生活習慣病の予防のために

散歩や階段昇降も有効な運動
徒歩通勤や散歩も立派な運動に入ります。「車はできるだけ目的地から遠くに停める」「階段を使う」「地下鉄やバスは1駅手前で下車する」「外食して食べ過ぎたら少し歩いて帰る」など、日常生活におけるちょっとした工夫でかなりの運動ができます。

食事は腹八分でバランス良く
食事の摂取カロリーは、ドイツ料理、和食を問わず、量が問題です。食べ過ぎに注意し、糖質・たんぱく質・脂質、さらに野菜や果物も含め、栄養バランスの取れた食事を心掛けましょう。

規則正しい食事と生活を
「1食抜いて1度に多く食べる」というのは、総摂取カロリー量が同じであっても、インスリンの分泌とその作用の観点からみてお勧めできません。夜遅い就寝直前の食事も、代謝上良くありません。

量が多過ぎたら残す
外食で、「残すのはもったいない」「料理した人に申し訳ない」と考えがちですが、明らかに量が多い場合は健康のことも考え、残すようにしたほうが良いでしょう。

仕事上、外食が避けられない場合
クライアントとの食事や飲酒などが多い人は、特に留意が必要です。ここで問題となるのは、その食事習慣が継続してしまうことなので、普段の日は過食・多飲を避け、散歩などでよく体を動かすようにしましょう。

デスクワークの合間に
長時間、同じ姿勢での作業は、運動不足だけではなく、腰痛や目の疲れの誘因となります。定期的に立ち上がって体を伸ばす、歩き回る、遠方を眺めるなどの工夫が必要です。

〈日本人間ドック学会の声明〉
国民の健康を考えて年々厳しくなってきている健康診断の基準値に対し、本年4月、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会は約150万人の健康診断のデータを基に、項目によっては現在の基準値の枠を超えていても健康な人もいることから、新たな健康診断の基準範囲を提案しました。日本のほかの医学会との議論・調整も必要なため、健康診断で用いる基準値は従来のままとなっています。

日本人間ドック学会の提案(2014年4月)

 従来の基準新基準
項目男女共通
BMI (kg/m2) 25 未満 18.5 - 27.7 16.8 - 26.1
収縮期血圧 (mmHg) 85 未満 88 - 147
拡張期血圧 (mmHg) 130 未満 51 - 94
総コレステロール(mg/dl) 140 - 199 151 - 254 145 - 280 *
LDLコレステロール (mg/dl) 60 - 119 72- 178 61 - 190 *
トリグリセリド(mg/dl) 30 - 149 39 - 198 32 - 134
* 新基準の提案では、女性のみ年齢によって3区分に分けています。