ドイツ食と健康 カロリー数にご注意!

質問: 単身赴任のため、ほぼ毎日外食のドイツ生活です。仕事が忙しくて、なかなかスポーツもできません。着任以来5kg近く体重が増えましたが、やはりドイツでの食生活が原因でしょうか?

Point

ドイツでは、1日のエネルギー摂取量の目安が多い

● ドイツ人男性のエネルギー摂取量、約2900Kcal
30歳代の日本人男性の1日の平均エネルギー摂取量は約2100Kcal(平成25年度、厚生労働省「国民健康・栄養調査」より、以下※)です。対するドイツ人男性には、1日平均約2900Kcalの摂取が推奨されています(ドイツ栄養協会、DGE)。しかも、約3割のドイツ人男性がこの推奨値をオーバーしていると考えられており、WHO欧州地域事務局の資料によると、ドイツ人男性の平均エネルギー摂取量は、1日約3480Kcalと報告されています。

● ドイツ人女性は1日平均2300Kcal
30歳代の日本人女性の1日の平均エネルギー摂取量は約1700Kcal※。DGEの推奨値は2300Kcalです。男女ともに、日本とドイツの間には少なくとも昼食1食分に相当する600〜800Kcalの差があるようです。

肥満頻度の日独比較

● ドイツ人男性の6割が肥満
肥満の尺度の1つに「Body Mass Index(BMI)」があります。日本ではBMIが25以上を「肥満」と定義していますが、ドイツではBMIが25以上は「過体重」、BMIが30以上を「肥満」としています。日本の基準で比較すると、30歳代の日本人男性の肥満の割合は約25%※、同年代のドイツの男性は62%(DEGS1 2008-2011年の報告)です。ドイツでは日本の2倍以上となっています。

ボディ・マス・インデックスの計算と意味

● やせ過ぎ傾向にある日本人女性
30歳代の日本人女性の肥満頻度は13%と少なく、ドイツ人女性は3倍の38%です。一方、日本ではBMIが18.5未満の「やせ過ぎ」状態にある女性が増え、健康上の課題になっています。国内の30歳代の女性の約18%がやせ過ぎ※で、肥満より多いのが現状です。その傾向は、ドイツ在住の同年代の女性でも同様です(日本メディカルセンター調べ)。

30歳代の日本人とドイツ人の肥満度

ドイツ食はどうしてカロリーが高い?

● 脂肪とタンパク質の比率が高い
欧州各国の食事は、日本食と比べて脂質(Fett)とタンパク質(Eiweiß)の比率が高いのが特徴です。同じ重量でも、脂肪は炭水化物(Kohlenhydrat)の9倍、タンパク質は4倍のカロリーがあります。日本食の場合、摂取エネルギーのうち脂質が占める割合は平均20%弱。一方、ドイツ食は約35%で、最も高いギリシャ料理は45%です(2007年、WHO欧州地域事務局報告)。

● さらに料理の量も多い!
ドイツでも、食事の量や素材、調理法などに注意を払う人が増えてきていますが、それでも多くのレストランの1人前の料理の量は、日本に比べて多い傾向にあります。例えば、健康のためにと注文したサラダが洗面器1杯分くらいあったり、ビュッフェスタイルのレストランでは、往年の鯨飲馬食家の筆者でさえ絶句するほど、たくさんの量を食べている人を見掛けることがあります。

外食料理のカロリー数

● ドイツのレストランで
人気のザワークラウト付きのアイスバインは1食1400Kcal、ジャーマンポテト付きの豚肉のシュニッツェルは約550Kcal、ホイル焼きのじゃがいもを添えた牛フィレ肉のステーキが602kcal、サラダ付きのサーモンのグリルが630Kcalといった具合です。当然、これに前菜やデザート、ドリンクのカロリーも加算されます。

● ドイツのファストフードやデザートも高カロリー
大きなピザ(30cm)が平均1000Kcal、スパゲティ・ボロネーゼは730Kcal。ドイツで人気のカレー・ヴルストは単体で510Kcal、さらにフライドポテト付きで計820Kcalにもなります。トルコ料理のドネルケバブは1個約644Kcalです。夏によく食べるアイスクリームは1玉140Kcalで、ティラミスは1皿570Kcal、チョコレートムースは560Kcal、代表的なドイツのデザート、バニラアイスクリーム添えのローテ・グリュツェは270Kcalです。

● 外食で1000Kcalオーバーも
米国内科学会雑誌の論文(2013年「JAMA」誌)によると、カロリー表示のないレストランで1人分の食事をした場合、イタリア料理が平均1755Kcal、インド料理は平均1465Kcal、中華料理は平均1474Kcalと多く、最も少なかったのは日本料理の平均1027Kcalと報告されています。

ドイツのレストランのメニュー:カロリー量の目安

● 栄養素の組成バランスに注意!
健康な身体を作るためには、3大栄養素(炭水化物・タンパク質・脂質)の組成バランスも大切です。日本では、適正な栄養素の配分について、糖質60%、タンパク質15〜20%、脂質20〜25%と考えられています(渡辺毅著『生活習慣病と食生活』より)。驚くことに、ドイツ人に人気のカレー・ヴルストはカロリー組成の80.2%が脂質と極端です。一方、ドネルケバブは炭水化物54%、タンパク質26%、脂質20%となっており、日本の栄養素配分に近い割合となっています。

外食時の工夫とスポーツの勧め

● 多いと思ったら残す、残飯の勧め
 ビジネス・シーンでの会食や、ドイツ人宅に招待されたとき、料理を残すことは申し訳ない気がします。しかし、量が多いと感じた際に、料理の一部を残すことは決して失礼には当たりません。太り気味の人は、常に腹八分目を心掛けましょう。

● ドイツでは51%の人が定期的に運動
体を動かしてエネルギーを消費することも大切です。また、下肢運動により大腿部の筋肉量が増すと、糖・脂質代謝に好影響をもたらします。ドイツ人の51%が何らかのスポーツを定期的に行っている(ロベルト・コッホ研究所のDEGS 2012年の報告)のに対し、駐在員として働き盛りの30歳代の日本人では、定期的なスポーツを心掛けている人は、男女とも約13%に過ぎません※。