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ジャパンダイジェスト
Mo. 13. Jul. 2020

欧州でのコロナ拡大と忍び寄る不況の影

中国に端を発した新型コロナウイルスの拡大が止まらない。ドイツ、フランスなど欧州各国でも感染者が急増したため、学校、劇場、飲食店などが閉鎖されるなど市民生活に多大な影響が出始めている。

11日、ケルン・ボン空港の電子掲示板に英独で表示された「手を洗おう!」の注意喚起11日、ケルン・ボン空港の電子掲示板に英独で表示された「手を洗おう!」の注意喚起

WHOがパンデミック宣言

11日に世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの拡大をパンデミック(病原体が複数の大陸に広がる、世界規模の流行)と初めて認定した。

ロベルト・コッホ研究所(RKI)は、10日に発表した通達の中で、「中国の臨床統計によると感染者の80%の症状が軽度か中程度、14%が重症、6%が生命に危険がある状態となった」と述べている。大半の感染者が軽症もしくは中程度の症状で終わるとはいえ、RKIは「50~60歳以上の市民や、糖尿病、がん、心臓病などの持病がある人のリスクは高い」としているため、このウイルスを軽視することは禁物だ。

イタリア政府、全土を「封鎖」

ジョンズ・ホプキンス大学によると、16日の時点で欧州での感染者数は4万人を超えている。イタリアの感染者数は約2万5000人で、中国の次に感染者が多い国となり、死者が約1800人に達した。全世界の感染者数は約17万人、死者数は6500人を超えた。

イタリア政府は、市民の行動制限措置を10日に全土に拡大。不要不急の外出を禁止し、スーパー、薬局、ガソリンスタンドを除く商店の閉鎖を命じた。普段観光客でにぎわうローマやヴェネツィアが、ゴーストタウンと化した。感染症のために国全体が「封鎖地域」に指定されたのは、第二次世界大戦後の欧州で初。さらに、多くの国々が国境を閉鎖している。

市民生活にさまざまな影響

RKIによると、15日の時点でドイツの感染者数は4838人。国内での死者数は12人、エジプトで観光中に死亡したドイツ人が1人だ。感染者数が最も多いのがノルトライン=ヴェストファーレン州(1407人)で、大半がオランダ国境に近いハインスベルク郡で確認されている。またバイエルン州(886人)、バーデン=ヴュルテンベルク州(827人)でも感染者数が増えつつある。

シュパーン連邦保健相は8日、ウイルスの拡大に歯止めをかけるために、参加者数が1000人を超える催しの中止を勧告。バイエルン州政府などは100人を超えるイベントも絶対に必要でない限り中止するよう求めている。ライプツィヒの書籍見本市が中止されたほか、4月に予定されていたハノーファー・メッセは7月に延期。また13日にはサッカーのブンデスリーガの試合などが中止された。コンサートやオペラ、演劇も次々にキャンセルされている。

学校教育にも大きな影響が出ている。大半の州は、16日から復活祭の休暇が始まる4月6日まで、一斉休校に踏み切った。多くの企業も社員の感染の危険を減らすために、在宅勤務(テレワーク)を命じている。ベルリン市当局などは映画館、喫茶店、クラブ、プールなども閉鎖させた。

世界中で株価が一時急落

コロナウイルスは世界経済にも影を落とし始めた。9日には「コロナ禍が不況につながる」という懸念に、原油価格の下落が加わったために世界の主要な株式市場で株価が急落。12日にはニューヨークのダウ株式指数が11%も下落し、過去33年間で最大の下げ幅を記録した。同日ドイツの株式指数市場DAXでも終値が約11%下がった。経済学者の間では「2008年のリーマンショックの状況に似ており、ドイツは景気後退(リセッション)に陥る可能性が強い」という意見が出ている。

ドイツ国内では見本市などの中止により、一部の企業の資金繰りが厳しくなる可能性がある。バカンスや出張などのキャンセルが運輸・旅行業界に与える影響も大きい。このためメルケル政権は、13日に国営金融機関KfWを通じて無制限の融資を実施することで、企業倒産を防ぐ方針を発表。さらに短時間労働制度の条件を緩和したり、納税の延期、苦境に陥った企業の部分的な国有化などの措置も行う方針だ。2008年の金融危機に匹敵する大規模な支援措置である。

メルケル「60~70%が感染する可能性」

メルケル首相は11日に「中長期的にドイツ市民の60~70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある。しかし、それがどれくらいの期間に起こるかは分からない」と発言した。これはベルリン・シャリテー病院のクリスティアン・ドロステン教授など感染症の専門家がすでに公表していた予測だ。この発言からドイツでは危機感が強まった。

大規模な感染が、1年間に起きるのと2年間に起きるのとでは、医療機関への負荷に大きな違いが出る。ワクチン開発にはまだ相当の時間がかかるとみられている。したがってドイツ政府は、イタリアのように感染者が短期間に急増して、医療機関が適切に対応できなくなる事態を防ぐために、市民間の接触を減らし感染拡大のスピードを遅らせようとしているのだ。メルケル首相は「これまでに例のない事態だ。市民全員が責任感をもって行動してほしい」と訴えている。過度な不安やパニックに陥ることなく、正しい情報を入手し、ウイルスの拡大を防ぐ努力をすることが重要だ。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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