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Do. 01. Okt. 2020

初の地域ロックダウン第2波への不安

パンデミックの第1波を乗り越えて、日常生活を取り戻しつつあるドイツ社会に、冷水を浴びせるような出来事が起きた。

クラスターが発生したNRW州にあるテニエス社の食肉加工場クラスターが発生したNRW州にあるテニエス社の食肉加工場

ギュータースローなどで再び接触制限令

ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州政府は、6月23日に同州北東部のギュータースローなどで新型コロナウイルス感染者数が増加したため、二つの郡に接触・外出制限令を施行した。メルケル政権が5月にロックダウンを緩和して以来、特定の地域に限定した接触・外出制限令が発布されたのは初めてだ。

ギュータースロー郡では2週間、ヴァ―レンドルフ郡では1週間にわたり、屋内でのイベントやスポーツ、バーや映画館の営業が禁止されたほか、家族を除いて2人以上の市民が集うことも禁じられた。約64万人の市民が影響を受けた。

集団感染(クラスター)の発生は、他州でも「ウイルスが持ち込まれるのではないか」という不安を引き起こしている。例えばシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州政府は、「ギュータースローとヴァ―レンドルフ郡の市民がバカンスなどのために入境した場合、2週間の隔離を命じる」と発表。またメクレンブルク=フォアポンメルン州のある島のホテル経営者は、ギュータースローからやって来た観光客の滞在を拒否して追い返した。これは他州の市民への偏見と差別である。

ロックダウンを躊躇した州首相

クラスターが見つかったのは、ギュータースローにあるテニエス社の食肉加工場。約7000人が働く同工場で、6月24日の時点で1553人がウイルスに感染した。NRW州政府は連邦軍の支援も受けて、従業員と家族全員にPCR検査を行っている。政府は作業場での労働条件などについて、厳しく調査する方針だ。さらに、加工場と関連のない住民75人からも陽性反応が出ており、市内感染の可能性も浮上している。

ギュータースローの保健所が食肉加工場で最初の感染者を確認したのは、6月17日。同郡はこの日に学校や託児所を閉鎖した。NRW州のラシェット首相(キリスト教民主同盟・CDU)は当初、「食肉加工場を除けば、感染者の数はそれほど多くない」として、この郡でのロックダウンを躊躇した。

しかし5月にメルケル政権は、「直近1週間の新規感染者の数が人口10万人あたり50人を超えた場合には、地域的なロックダウンを再開する」という方針を打ち出していた。ロベルト・コッホ研究所(RKI)によると、6月23日の時点でギュータースローの直近1週間の新規感染者数は10万人あたり約270人、ヴァーレンドルフでは66人。連邦政府が取り決めた「非常ブレーキ」の基準を超えたため、ラシェット首相も地域的なロックダウンに踏み切らざるを得なかった。野党の社会民主党(SPD)や緑の党は、「ラシェット氏のコロナ対策は出足が鈍い」と批判していた。

ラシェット首相は16人の州首相の中で、最もロックダウンに批判的な政治家の1人だった。4月14日には「ロックダウンは、経済に大きな損害を与える。封鎖措置を段階的に緩和していくべきだ」と述べ、連邦政府に迅速に出口戦略を示すよう強く求めていた。

他州でもクラスター発生

クラスターはほかの地域でも発生している。ニーダーザクセン州のゲッティンゲンの高層住宅では100人を超える住民がウイルスに感染し、約700人が隔離された。同州のヴィルデスハウゼンの食肉加工場、ベルリンのノイケルン地区やフリードリヒスハイン地区の集合住宅でも、集団感染が起きている。

政府は、感染速度を推定する目安として、実効再生産数(R)という数値を使う。Rが1ということは、1人の感染者が1人に感染させることを意味する。ウイルスが猛威を振るっていた3月10日頃にはドイツのRは3.3だった。その後ロックダウンによって、3月下旬から約3カ月にわたってRは1前後で推移。先月は一時Rが0.7まで下がり、シュパーン保健大臣は「ウイルスを制御できるようになった」と発言していた。だがギュータースローなどのクラスターのために、6月22日にはRが2.88まで急上昇した。これは、ドイツ社会に対する警戒信号である。

「第2波に備えて警戒態勢の強化を」

ベルリン・シャリテー病院のドロステン教授は「われわれが知らない間に、ウイルスが拡大している可能性がある。ウイルスがクラスターの発生地域から別の地域へ広がらないようにすることが重要だ」と述べた。さらに教授は「1カ月後の状況について、私は楽観的になれない。今警戒態勢を強めないと、2カ月後にウイルスが広範囲に拡大するかもしれない」と語り、秋から冬にかけて第2波が到来する可能性を示唆した。

RKIのヴィーラ―所長も「今後も局地的なクラスターが発生するだろう。警戒を怠らずに、最低距離やマスク着用などの規則を守らなくてはならない。これが今後数カ月にわたって続く、新しい日常となる。第2波を防げるかどうかは、1人1人の行動にかかっている」と述べ、過度に楽観的にならないよう戒めた。

6月に入ってオフィスでの仕事を再開したり、バカンス旅行を計画する市民が増えた。コンサートが部分的に再開されるなど、街は活気を取り戻しつつある。だがワクチンが開発されない限り、人類が油断すると何度でもウイルスが襲いかかってくる可能性があることを、頭の片隅に置いて行動する必要がある。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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