Hanacell

Nr. 47 ドイツと日本の違いを自覚する

さて、前回までにお話しした経緯を経て、私の娘は日本の“中学1年生”に当たる歳の頃、まるで発作のように「日本に帰りたい病」に罹ってしまい、この時期には何度も日本とドイツを行き来しました。

それ以前も夏休みなどを利用して、私たちは頻繁に日本へ一時帰国していました。日本の生活習慣にも触れさせたかったので、できるだけ長く滞在するようにしていましたが、どうやらその目論見は外れていたようです。

今考えると、当時の娘は自分が置かれている状況を自覚できるほど成長しておらず、国をまたいで大移動をしているというよりは、ドイツという場所から飛行機に乗って、日本という場所で降り立つだけ、といった感覚だったのでしょう。距離的な隔たりをそれほど感じることなく、2国間を自由に行ったり来たりできるものと考えていたのかもしれません。異なる2つの文化を同時に吸収するという恵まれた環境にいることなど、気付いてもいないようでした。

その頃、娘はドイツ人のクラスメイトを1人連れて、日本へ帰国したことがありました。2人だけで東京の街をあちこち歩き回っているうちに、日本とドイツの文化の違いを、娘なりに自分の目ではっきりと比較することができたようです。そのドイツの少女が、日本文化に強い興味を持っていたことも一因だったかもしれません。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

自分の足で日本の街を歩いて分かったこと。それは、「日本には面白いものがたくさんある」ということでした。「ドイツでは、友達と木に登るくらいしかすることがない! でも、日本にはカラオケもあるし、ボーリング場は車の送迎がなくても行けるし、洋服の色がカラフルでかわいい!」。子どもらしい視点と言えばそうですが、ドイツの田舎暮らしが長くなっている私にとっても、否定できない見解でした。こうした度重なる一時帰国が、娘の心境に少なからず変化を与えていったようです。

ドイツで子育て&教育相談所
イラスト: © Maki Shimizu

ところで、子ども目線で見る日本とドイツの相違点というのがなかなか面白いので、ここで少しご紹介します。
・日本の大人はドイツの子ども用サイズの自転車に乗っている。
・電車の券売機が壊れていない。
・水道水がミネラルウオーターのように美味しい。
・レストランのメニューに写真が付いている。
・電車の中で、大人がニンテンドーDSでゲームをしている。
・男の子同士が手をつないで歩いている。

通学路で、小学校3年生くらいの男の子2人が手をつないで下校している姿を見たときには、目が飛び出んばかりの驚きようでした。ドイツでは、男の子同士が手をつなぐことはないからです。

一方で、「ドイツのほうが良い!」と言うこともありました。例えば、高速道路が無料、公園の遊具が豊富、カーニバルがある(仮装できるという意味で)……などが良い点として挙げられていました。

相違の内容についてはともかく、2つの異文化を体験していることにようやく気付いてくれたことに安堵はしたものの、それが我が子のアイデンティティーの危機につながっていくとは、思ってもいませんでした。

次回は、この娘が最終的に日本の学校に通うことを決断する過程について、詳しくお話ししたいと思います。

最終更新 Donnerstag, 24 April 2014 10:22  
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