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第4回 駐在員の納税と社会保険規定

国際企業が社員を海外に赴任させてグローバルな見識を高めようとする傾向は、今日ますます強まっています。ただ、職業上の理由で海外に滞在する際には、様々な法制上の変更に対応することが必要となります。特に駐在員の納税に関しては、雇用者、被用者の双方に後納義務が課せられる事態を回避するため、予め社会保険と税務上の側面に十分留意しなければなりません。

そこで今回は、赴任国での労働法、税法、また社会保険規定上の留意点についてまとめました。

1. 労働法上の留意点

海外駐在とは、期間を限定した社員派遣のことを指します。1~3年程度のものが多く、社員を海外の関連会社に赴任させるケースと、海外から国内の関連会社に迎え入れるケースの両方があります。海外駐在は雇用者の辞令によるものに限定され、事前に期間を限定しなければなりません。通常、この際に雇用契約書の変更が必要となります。海外での赴任期間、給与、海外駐在で発生する追加費用をカバーするための諸手当、元の職場に戻るための条件などを規定します。労働法上何か不明点があれば、予め法律家にアドバイスを仰ぐことをお勧めします。

2. 税法上の留意点

法人ではない個人(「自然人」)がドイツ国内で住民登録をした場合、または常駐する場合、ドイツでは無制限の納税義務が発生します。職業、年齢、国籍は関係ありません。この際、いわゆる「全世界所得課税原則(Welteinkommenprinzip)」が適用されます。無制限納税義務者は、ドイツ国内だけでなく、母国などドイツ以外の国で得た所得全体に対してドイツで課税されることになります。

駐在員の場合、居住国と就業国が異なるため、その両方の国で課税されるということになりがちです。二重課税とは原則的に、同一の納税義務者が同一の課税対象に対して、同一期間内に2カ国以上で類似の性格を持つ税金(所得税など)を納めることをいいます。これは、納税者にとっては2重、3重の負担となるのです。

これを避けるため、ドイツは多くの国と租税条約を締結し、駐在員は原則として就業国でのみ納税することを規定しています。

【 実例 】
日本の本社があなたを3年の予定でドイツの子会社に赴任させました。日本には住民票を残したままの状態ですが、あなたが実際に仕事をするのはドイツ国内だけです。この場合、日本(居住国)とドイツ(就業国)の両方で課税されることになりますが、日本とドイツは租税条約を結んでいるので、実際にはこれを回避することができます。

例外は短期滞在者免除、いわゆる「183日ルール」です。就業国(ドイツ)での滞在日数が年間183日未満の場合には、居住国(日本)だけで納税するケースもあります。

3. 社会保険上の留意点

社会保険については、まずドイツと当該国の間で協定が結ばれているかどうかを確認することが重要です。例えば、ドイツと日本の間では社会保険協定が締結されています。日独どちらかの国民が職業上の理由で一定期間にわたり相手国に滞在する場合、母国で社会保険料納付を継続していれば、当面は滞在国での年金保険料と失業保険料の納付が免除されます。ただし、健康保険、介護保険、労災保険(Unfallversicherung)は例外となります。

ドイツから日本に赴任する駐在員は、特別規定にも留意する必要があります。滞在期間の最初の60カ月は、社会保険に関してドイツの法規が適用されるためです。61カ月目からは日本の法規が適用されますが、場合によっては例外を認められ、ドイツの法規が継続して適用されるケースもあります。

まとめ

ビジネスのグローバル化に伴い、社員の海外駐在も一層重要性を増しています。それだけに、雇用契約書の内容、所得税や社会保険の扱いなどについて問題が発生することも少なくありません。また、駐在員の滞在許可や労働許可、児童手当の受給などについても不明点が発生しがちです。このような分野についても、どうぞお気軽に弊社にご相談ください。

(著:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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