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第6回 個人の制限納税義務

ドイツ国外に居住しながら、ドイツ国内で収入を得るケースがあります。ドイツ現地法人の社長として給与の支払いを受けている人、ドイツ国内で不動産を所有し、それを賃貸している人などがこれに当たります。今回は、このような事例に対し、ドイツの税法がどのように適用されるかについてまとめてみます。

1. 一般規定

ドイツ国内に住所を有さず、恒常的に滞在もしていない個人(法的には「自然人」)は多くの場合、ドイツ国内で得た収入の所得税について、「制限納税義務」を課せられます。個人の制限納税義務は、ドイツ国内で得た収入またはドイツに関わる収入だけに発生します。例えば、日本に居住する個人がドイツ国内で以下の収入を得ている場合が、これに該当します。

  • ドイツ企業の被用者として得た給与。例えば日系企業現地法人の社長の場合
  • ドイツ国内にある不動産の賃貸収入
  • キャピタルゲインによる収入。例えばドイツ国内にある企業の配当金など

制限納税義務は、ドイツ国内で発生した収入のみに適用され、国外で得た収入は対象外となります。ドイツ国内で得られた収入について、源泉課税(源泉徴収)という形で自動的に納税されない場合には、毎年自分で納税申告(確定申告)を行う必要があります。

2. 所得税申告

制限納税義務者では、基本的に源泉課税により、納税手続きが完了します。この場合、個別の納税申告(源泉税の還付を受ける目的での確定申告など)を行うことはできません。源泉課税の対象となるのは非自営業者(被用者)の収入に課される賃金税と、ドイツ国内で発生したキャピタルゲインに課される資本収益税です。

源泉課税が行われなかった場合は、個人で納税申告を行う義務が発生します。個人事業主、自由業者、不動産を賃貸・リースしている制限納税義務者などがこれに該当し、このような人はドイツ国内での営業所得を申告しなければなりません。営業経費や広告宣伝費など、上記収入に関わる必要経費は所得額から控除できます。

3. 制限納税義務の特別規定

被用者として所得のある制限納税義務者については、いくつかの特別規定が設けられています。このグループでは特別支出、その年に例外的に発生した支出、年少者扶養控除 、高齢者控除、その他の個人的または家庭の事情による金銭的負担に関する規定は、基本的に適用されません。所得税はドイツ国内で一般的に有効とされている税率によって算出されますが、基礎控除は認められません。

賃金税の納付に関しては、制限納税義務者は税務署に申請書を提出すれば、個別の状況に合わせた、賃金税課税に必要な証明書を取得できます (申請書の名称は「Antrag auf Erteilung einer Bescheinigung für den Lohnsteuerabzug für beschränkt einkommensteuerpflichtige Arbeitnehmer」)。これを申請すれば、標準控除額を超える広告宣伝費や特別出費など、個々の事情を考慮した控除が可能になります。

この証明書は当年の12月末までに勤務先の所在地管轄の税務署に申請し、発行後には雇用者に提出しなければなりません。通常、納税者は所得税の納税申告の際に必要経費の控除を認めてもらい、賃金税の減免を受けますが、被用者の場合、源泉課税が原則であるため、こうした形での減免は不可能です。しかし、雇用者に上記の申請書を提出していれば、賃金税の源泉課税前に必要経費が控除対象として認められる可能性が生じます。

まとめ

制限納税義務者の税法上の扱いに関しては、個々の事例に則して対応する必要があります。特に、被用者が上記の賃金税証明書を申請する場合がそれに当たります。必要以上の税負担を回避するには、コンサルティングが重要な役割を果たします。

今回は、所得税法50条aに定められている特別控除については触れていません。この条項は、監査役の給与、プロスポーツ選手、芸術家、ジャーナリストといった職種の収入に対する課税、ライセンスやその他の権利・ノウハウの譲渡などについての課税を定めるものです。このほか、制限納税義務者を税法上の無制限納税義務者として扱うという対処法もあります。一定の条件下でそれが可能になり、源泉課税の場合でも確定申告を行うことで基礎控除やその他の一括控除の優遇措置を受けることができます。こうした分野のコンサルティングについても、どうぞ弊社のサービスをご利用ください。

(著:税理士 クリスティーネ・フュッセル)

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