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第11回 有限会社(GmbH)の設立

ドイツで事業を行う形として、最も浸透している法人形態は有限会社(厳密には有限責任会社=Gesellschaft mit beschränkter Haftung、以下GmbHと表記)です。有限会社では、自然人に対する責任が制限されるだけでなく、日本企業が親会社として比較的容易に現地法人を設立・運営できる点でメリットがあります。そこで今回は、ドイツでの有限会社の設立過程と、海外に本社を置く企業が有限会社を設立する際の留意事項をまとめました。

1. はじめに

GmbHは資本会社であり、独自の法人格を持つ法人です。つまり、会社が独自の権利と義務を有するため、訴訟を起こしたり起こされたりすることも可能です。GmbHは、1人または複数の自然人または法人によって設立することができます。資本会社であるため、GmbHの責任範囲は会社の財産に限られます。設立の条件は、最低資本金2万5000ユーロを出資者が払い込むことです。

GmbHは、独自の法人格として権利と義務を行使できるように、「出資者」(Gesellschafter) および「取締役」(Geschäftsführer)という2つの当事者グループによって構成されています。

① 出資者

GmbHを構成する当事者グループの1つは、出資者全員で構成する「社員総会」(Gesellschafterversammlung) です。その役割は、事業報告書の内容を確認し、利益配当を承認することです。また、取締役の任命と監督も、社員総会の管轄となります。

外国人であっても、ドイツでGmbHの出資者となることができます。この場合、出資者はまず、ドイツの公証人の認証を受けることが必要です。海外企業が出資者となる場合には、本国(日本など)の公証人が認証した商業登記簿謄本によって、会社の存在を証明しなければなりません。これをドイツ語に翻訳し、アポスティーユ(外務省の証明)を受けます。

ドイツでのGmbH設立の際に、現地の税理士や弁護士が業務を代行する場合には、海外企業(例えば日本企業)の代表者が委任状を用意し、公証人がこれを認証し、上記と同様にアポスティーユを受けます。

② 取締役

取締役は、GmbHの2つ目の当事者グループです。取締役は会社の事業全体に責任を持ち、経理会計が正式に行われているかどうかを精査し、事業報告書を作成しなければなりません。

取締役も出資者と同様、欧州連合(EU) 市民でなくても就任することが可能です。取締役就任予定者が居住地をドイツに移す場合には、滞在許可と労働許可が必要になります。一般的には、許可取得において大きな問題は発生しません。

一方、取締役が海外(日本など)に居住したままの場合は、定期的に現地法人に出張し、事業についての判断を現地で下すよう、留意する必要があります。これを怠ると、現地法人の所在地を取締役の居住地に移すよう当局から要求される場合があります。取締役が日本で給与を受け取るとしても、ドイツ法人の取締役として活動する限りにおいて、ドイツで納税義務が発生します。

2. 有限会社設立

有限会社の設立には、公正証書が必要になります。まず、ドイツの公証人 (Notar) が会社定款 (Gesellschaftsvertrag) を作成し、それに出資者(設立発起人)が署名したものを認証します。その後、資本金の口座への着金を公証人が確認できれば、商業登記簿への登記を行います。登記が完了した時点で、初めて有限会社が誕生します。

会社定款には、以下の重要事項がすべて記載されています。

① 商号

商号は会社の正式名称です。これには、出資者名や事業内容を反映させたり、全く別の発想で自由に決めることも可能です。商号の末尾には必ず 「GmbH」 を付記します。

② 所在地

会社所在地は、ドイツ国内のいずれかの自治体を指します。登記簿には、必ず連絡のつく、所在地の完全な住所が記載されている必要があります。

③ 事業目的

事業目的は、第三者が読んで企業活動が具体的に理解できるように記載します。

④ 資本金

創業資本金は、上記で述べた通り、2万5000ユーロ以上でなければなりません。資本金は現金でも、現物出資の形でも構いませんが、現物出資の場合には、その価額を証明するための文書が必要になります。

⑤ 資本金に対する出資比率

定款にはさらに、資本金がどのように分割されているか、また、出資者それぞれがどの部分を持分とするかについての合意事項を盛り込みます。登記申請時には、全出資者が自分の持分のうち、最低4分の1を払い込んでいる必要があります。登記申請、つまりGmbHの設立には、資本金全額のうち少なくとも半分が、すでに払い込まれていることが条件となります。

3. まとめ

基本的に、日本に親会社がある企業のドイツ市場進出の際には、GmbH設立が最も簡便な形態といえるでしょう。さらに、有限会社は個人事業者にも責任範囲の軽減という点でメリットがあるため、個人事業者を対象とした有限責任事業者会社(Unternehmergesellschaft=UG)という形態も、GmbHに準ずるものとして導入されています。弊社ではUG設立についてもご相談に応じます。お気軽にご連絡ください。

(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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