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第16回 請求書と前段階税額控除

企業が受け取る請求書には売上税が計上されるのが普通ですが、前段階税額控除(仕入れ税額控除、Vorsteuerabzug)の手続きにより、売上税の還付を受けることが可能です。その前提になるのは、請求書の内容が適正で、必要事項がそろっていることです。

1)請求書の定義

請求書とは、財貨(商品)、または役務(サービス)の提供に関する請求事項が記載された文書を指します。必ずしも「請求書(Rechnung)」と書かれている必要はありません。紙に記載したものか、受領者との事前合意があれば、データの形でも構いません。領収書、レジ発行のレシートなども原則的には請求書として認められます。契約書の一部を請求書とすることも可能です。

2)記載必須事項

請求書の記載必須事項は、次の事項です。

• 商品またはサービスを提供した企業、およびこれを受領した者の正式名称と住所。商品やサービスの受領者が常に民法上の契約相手となります。請求書の受取人と、商品・サービスの受領者が別々の場合には、両方の住所が必要です。最新の法的解釈によると、請求書発行者の住所は、その企業が経済活動を行う場所と一致していなければなりません。

• 請求書発行企業の納税者番号(Steuernummer)、または売上税ID番号(Umsatzsteuer-Identifikationsnummer)。売上税の課税上の理由により、企業が税務署から追加で納税者番号を付与されている場合はその番号。

• 請求書発行日

• 連番の請求書番号:企業が発行する請求書には、請求書が1枚だけであることを証明するため、全請求書に通し番号が与えられていますので、これを記載します。数字やアルファベットを組み合わせて使うことが認められています。

• 納品された商品の数量と内容、またはサービスの規模と内容。この記述は、なるべく詳しく正確なものでなければなりません。一般的な書き方(「事務用品」「生活用品」「工具」など)では不十分です。サービスについては、具体的にどのような業務が行われたのか、または、どのような効果を目的としたものかを明記します。「清掃業務」「文書作成業務」といった表記では認められません。税務署が請求書の内容を確認できるように、請求書に他の文書を添付し、請求書の書面にその旨を付記する場合もあります。

• 商品またはサービス提供の日時

• 請求金額と割引事項。受領者が割引(大量購買に対する割引など)を受けることで両者が事前に合意した場合には、請求書にこの合意事項を記載します。

• 適用される税率と税額、または非課税扱いである旨の記載。

3)クレジットノート(Gutschrift)

商品やサービスに対して割引を行うなどの目的で、受領者の側が請求書を発行する際には、“Gutschrift”と表記し、相手企業の納税者番号、または売上税ID番号を記載します。

4)前段階税額控除

以上の項目を記載した正規の請求書があれば、企業が支払うべき売上税は仕入れ税額として控除されます。義務付けられた記載項目が一つでも欠けていると、前段階控除は受けられませんので、請求書を受け取った段階で、必要事項がすべてそろっているかどうか精査することをお勧めします。

請求書にある売上税率が間違っている場合にも、前段階控除で問題が発生します。特に19%と7%の税率の差に注意が必要です。

5)少額請求書の注意点

ここで言う少額請求書とは、合計額が150ユーロ以下のものを指します(給油のレシートなど)。こうした請求書では、以下の事項がそろっていれば、前段階控除を受けられます。

商品・サービス提供者の名称と住所/請求書発行日/商品の数量と内容またはサービスの規模と内容。

請求額と税額は、税率と請求金額が明確であれば、ひとつの額面として表記されていても構いません。

6)内金請求書と最終請求書

商品やサービスを受け取る前に料金の一部を支払う際には、内金の請求書(Anzahlungsrechnung)が発行されることがあります。この請求書では、商品やサービスの受領後ではなく、内金支払い時点の日付を記載します。このほかの必須記載事項は、前述の内容と同じです。正規の内金請求書があり、これに対する支払いが行われたことを証明できれば、前段階控除が可能です。

内金請求書に売上税が計上され、その前段階控除が認められた場合には、最終請求書(Schlussrechnung)にその旨を明記します。最終請求書では、内金以外の残りの請求額に対して前段階控除が行われます。

まとめ

税務署は請求書の内容に、非常に高いレベルを求めています。国外企業に請求書を発行する場合などには、上記の必須項目以外にも追加の義務事項があります。個々の事例で迷われたら、どうぞお気軽に弊社にご相談下さい。

(筆者:クリスティーネ・フュッセル)

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