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第17回 ドイツの社会保険について

ドイツで就業する場合、そのポジションに社会保険加入義務が課せられていれば、就業者は自動的にドイツの社会保険機構の構成員となり、社会保険料を納付することになります。今回は、ドイツの社会保険システムと、その特別規定や例外についてご説明します。ドイツ国内で長期的に被用者の立場にある方、一時的に駐在員としてドイツに派遣されている方の双方に該当する情報です

1)社会保険の種類とシステム

ドイツの社会保険は4つの柱で構成されています。健康保険、介護保険、失業保険、そして老齢年金保険です。保険料の支払い手続きを簡素化するため、雇用者は各被用者が加入する健康保険会社に4種類の保険料全額をまとめて納め、健康保険会社がこれをそれぞれの保険機関に納めています。

社会保険料は通常、雇用者と被用者が半分ずつ負担するものです。保険料は収入に応じて算出されますが、算出の際に基準となる収入には上限額が設定されており、これを超える所得部分には保険料が課せられません。保険料の中では健康保険と老齢年金保険の占める割合が高いため、今回はこの2つの保険を中心にご説明します。

2)健康保険

健康保険の保険料率は、2015年から全国一律、税込給与の14.6% に設定されています。このほか、保険会社によっては少額の追加保険料が設定されていますが、これについては雇用者と被用者が折半するのではなく、被用者単独で負担します。2016年度の追加保険料率は各社平均で 1.0%となっています。保険料算出の際の上限収入は現在、税込月額4237.50 ユーロです。これ以上の所得部分については被保険義務が免除されます。

このほか、給与が一定額を超えると、公的健康保険(gesetzliche Krankenversicherung)ではなく、プライベート健康保険(private Kranken-versicherung)に加入する資格が与えられます。条件は、現在の税込月額給与および翌年の見込み月額給与が最低 4687.50ユーロであることです。被用者がプライベート保険に加入する場合にも、雇用者は保険料の半額を負担するのが原則ですが、この被用者が法的健康保険の加入者であると想定した場合の保険料の半額が、雇用者の負担額上限となります。

プライベート保険のメリットは、罹患リスクに沿った保険料率です。一般的には、若く健康な被用者であれば、公的健康保険よりも少ない額の保険料で、公的保険より充実した医療サービスを受けることができます。ただ、年齢に比例して保険料が上がる点には留意しなければなりません。高齢になってから 保険料が高いことを理由に公的健康保険に再加入することは困難で、55歳時点での再加入はほぼ不可能とされています。被用者がプライベート健康保険を選択する際には、将来的に現在よりも少なくなると予想される老齢年金給付金の中から、高額化していく健康保険料を支払い続けることになると理解しておく必要があります。

日本人駐在員の場合、通常は赴任期間が決まっているため、プライベート健康保険の選択はメリットがあると言えるでしょう。一般的には、プライベート保険の保険料が高額化する年齢に達する前にドイツに滞在するケースが多いため、比較的低額の保険料でプライベート保険の医療サービスを享受できます。ただし、公的保険と違い、プライベート保険では家族が一括加入できない点に注意が必要です。家族1人1人が保険料を納めることになりますので、保険料総額を公的保険と十分に比較検討することをお勧めします。

3)老齢年金保険

ドイツの老齢年金保険料率は18.7%で、雇用者と被用者が折半します。老齢年金保険にも保険料算出のための所得上限があり、これは現在、西ドイツ地域で税込月額6200ユーロ(旧11州)、東ドイツ地域で同5400ユーロ(新5州)となっています。

駐在期間が当初予定で60カ月(5年間)以内に限定されている日本人駐在員は、老齢年金保険の保険料納付義務が免除されます。これは、日本とドイツが社会保険協定を締結しているためです。免除申請は赴任前に日本で行いますが、この際に日本の老齢年金保険の加入を継続し、最小額の保険料を納め続けることが条件となります。

ただし、赴任期間が延長されるなどの理由で、ドイツでの通算就業期間が5年を超えると、この免除規定は適用されなくなり、ドイツの老齢年金保険に加入する義務が発生します。

4)ミニジョブと社会保険

月額450ユーロ以下のミニジョブには、社会保険上の特別規定があります。ミニジョブを営む被用者は、原則的に賃金税と社会保険料の納付義務を免除されるのです。一方、雇用者は給与支給額の30%に当たる金額の社会保険料を一括納付します。内訳は、健康保険13%、老齢年金保険15%、賃金税2%となります。

まとめ

社会保険に関する規定は広範にわたるため、本稿ではごく一部を紹介しました。ドイツと日本の社会保険システムは、雇用者と被用者が保険料を折半する点をはじめ、類似点が多々あります。その一方で、日系企業駐在員の場合には、健康保険の選択や老齢年金保険の規定について、個々に精査が必要になるケースが少なくありません。こうした際にも、どうぞ弊社のサービスをご利用下さい。

(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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