22 April 2011 Nr. 864
その日本語、伝わっていますか?その日本語、伝わっていますか?
池上 彰(著)

講談社
ISBN:978-4-06-281416-4

「その日本語、伝わっていますか?」というタイトルに、ドキリ。正しく、分か りやすい表現を追及することが編集者の日々の仕事だけれど、日本語表現というものは、なかなかに手ごわい。読者の皆様から寄せられるお問い合わせの中には、表現の仕方次第ではご質問をいただくまでもなかっただろうと思うものもある。そんな夜は1人、反省にふけることになるのだが。

年がら年中、言葉に敏感な職業と言えば、ニュースキャスターもその1つ。本書の著者は、元NHK、現在はフリーの人気キャスターである池上彰さん。複雑な国際情勢や歴史の話も、「池上さんが解説すると分かりやすい」と好評だ。

本書では、池上さんの言葉を支える「相手にとどく日本語力」の一部を紹介。自身の放送現場での実体験を交えながら、日本語の特徴や面白さを説明する。「固執」なら、「こしゅう」から「こしつ」へ、間違った読み方が定着した漢字や、本来の意味とは正反対の意味で使われている言葉が多数あり、日本語が時代とともにダイナミックに変化している言葉だと分かる。正しい日本語とは何か? そのことにばかり気をとられていては、「生きている言葉」に取り残されてしまいそうだ。

当時、『週間こどもニュース』でお父さん役を務めていた池上さんは、それから私の先生になった。番組自体は昨年、惜しまれつつ終了したが、その理由は「(視聴者が)子どもより高齢者の方が圧倒的に多かった」から。専門用語やカタカナ用語、アルファベット文字が並ぶ報道を苦にするのは、子どもばかりじゃないという証拠だろう。ニュースダイジェストも「伝わる表現」を信条に。(高)


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