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ドイツビールの風雲児たち

今、ドイツではビールの新しい潮流が生まれています。国内の醸造家たちがドイツビールの枠を超え、他国発祥のビールを造り始めたのです。現在、米国や日本をはじめ、多くの国でクラフトビール(小規模醸造所で職人らの手によって造られる個性的なビール。地ビールとも言う)が流行しています。一方、ドイツではピルスナーやヴァイツェンなど「ビール純粋令」に則り、伝統的な手法で造られるビールが主流。ところが、4、5年程前からドイツのビール界に新風が吹いているのです。

ホップや麦芽の種類や量、製法を変えるだけで味がぐっと変わるのもビールの魅力
ホップや麦芽の種類や量、製法を変えるだけで味がぐっと変わるのもビールの魅力

その代表格が、ビールの町ミュンヘンで2011年11月に旗揚げされたクルーリパブリック(Crew Republic)。米国を訪れ、ドイツにはない多様な味に惚れ込んでしまった2人のドイツ人男性と、ドイツのビール醸造学校で学び、ブラウマイスターの資格を取った米国人男性がタッグを組んで開発したビールです。Cで始まる単語が稀有なドイツにおいて、あえてCを頭に置き、Republic(共和国)と名付けたことからも、彼らのパイオニア精神が伝わります。個性の強い米国産ホップを効かせたビールは、米国の味をただ真似るのではなく、ドイツビールの特徴でもある麦芽の芳醇なコクを感じさせる味わい。今までになかったビールのスタイルを確立し、ミュンヘンっ子の心をつかみました。このクルーリパブリック、ドイツ国外でも好評で、すでに10カ国以上に輸出しており、醸造所の拡大計画も進んでいます。

大手の醸造所にも新しい風が吹いています。世界最古のビール醸造所、ヴァイエンシュテファン醸造所は米国のサミュエルアダムス醸造所と協同で、シャンパンと同じ製法で造ったビール「Infinium」を米国に輸出。ヴァイツェンビールが専門の老舗、シュナイダー醸造所も英国スタイルのポーターを造っています。また、オクトーバーフェストの公式醸造所であるパウラーナー醸造所は、ミュンヘン市内にコンセプトの全く異なる小規模醸造所ブラワライ・イム・アイスヴェルク(Brauerei im Eiswerk)を立ち上げ、マンダリンオレンジの香りを込めたヴァイツェンボックやダークストロングエールを造っています。

小規模醸造所の中には、スパイスなどの副原料を使用しているところもありますが、多くはビール純粋令で定められた原料を守りつつ、ホップの種類や投入のタイミング、酵母の種類や温度管理などを工夫し、これまでドイツにはなかった味わいを生み出しています。さらに、ビールに生のホップを漬け込んだり、ウイスキーやシェリーの古樽で熟成させたりと、自由でユニークな発想で造られたビールも。それでも、ドイツビールの特徴であるドリンカビリティー(飽きずに何杯でも飲めてしまうこと)は押さえながら、豊かな味に仕上がっています。ドイツ以外の国が発祥のビールであっても、ドイツらしさが感じられるのは、この国の醸造の基礎がしっかりとしているからこそなのです。

最終更新 Mittwoch, 26 November 2014 16:25  
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