ビオワインの世界 7 その他の組織

印刷

これまで、ビオラント、ナトゥアラント、エコヴィンの3つのビオ生産者団体を紹介してきました。今回は、その他のビオ生産者団体を簡単にご紹介します。醸造所会員は非常に少ないですが、ワイン以外の飲料や食品を選ぶ際に、参考になさってください。

Gäa e.V.(ゲア)は、旧東独地域においてビオ農法を実践、推進するために設立された団体です。名称の由来はギリシャ神話に登場する女神ガイア(Gaia)。もともと東西分裂時代の1980年代に興った組織で、1989年のベルリンの壁崩壊直前、ドレスデンを本拠地に団体としての活動を開始しました。東西ドイツ統一後、1990年代初頭には州ごとに運営されていた組織の間で調整が行われて1つの団体として統合され、1995年にはゲア独自のビオ基準が認可されました。会員数は約480、会員農地は約5万ヘクタール、会員の9割が旧東独地域の生産者です。醸造所会員は現在のところいません。
www.gaea.de

Biokreis e.V.(ビオクライス)は、バイエルン州パッサウに拠点を置くビオ団体。1979年に、食に関心の高い消費者グループの運動として発生したものです。彼らは、生産者や加工業者に、積極的にビオに関わってもらいたいとの考えから同団体を設立し、健康食の普及に努め、料理教室やビオ農法に関するセミナーを開講しています。現在も会員の約2割が消費者で構成され、近隣の会員同士でネットワーク作りを試みています。会員数は約1300、会員農地は3万5000ヘクタール。醸造所会員は3社です。
www.biokreis.de

1991年設立のBiopark(ビオパーク)は、メクレンブルク=フォアポンメルン州のギュストロウを本拠地とするビオ団体。旧東独地域の生産者が圧倒的に多い団体ですが、ドイツ全域に会員がいます。会員数は約700ですが、会員農地が14万ヘクタールと広大。その多くが牧草地で、一部は自然保護地域に指定されています。酪農家、畜産農家、家禽農家が中心です。スーパーマーケット・チェーン、エデカと提携し、ビオの食肉を提供しているほか、食品大手ネスレと提携して離乳食の素材を提供しています。醸造所会員はいません。
http://biopark.de

ECOLAND(エコラント)は、バーデン=ヴュルテンベルク州ヴォルパーツハウゼンに事務局を置くビオ団体。BESH(シュヴェービッシュ・ハル農産物生産共同組合)の子会社です。1997年に設立され、ドイツ、ルーマニア、セルビア、インドなどに約1300の会員がいます。重要な産業は、ビオのハーブとスパイスの生産販売。エコラント・ハーブ&スパイスという会社を立ち上げ、こしょうやカルダモン、バニラなどのスパイスをインドの提携農家で、パプリカとにんにくをハンガリーの提携農家で生産しています。このほか、畜産、穀物、てん菜、大豆農家を網羅しています。醸造所会員はいません。
www.ecoland-verband.de

 
Weingut Hoflössnitz
ホーフレスニッツ醸造所(ザクセン地方)

ホーフレスニッツ醸造所

ザクセン地方ラーデボイルにある創業1401年の醸造所。第2次世界大戦後は旧東独で「国民醸造所」として運営され、東西ドイツ統一後の1992年にラーデボイル市に所有権が戻された。1998年、醸造所の大々的な修復工事のために市を中心とした財団が立ち上げられ、醸造所は事業形態に、そしてホーフレスニッツ・文化景観保護財団は文化遺産保護を目的に、同財団に参画している。醸造所の敷地内には歴史的建造物が多く、ザクセン・ワイン博物館やワインショップも整っているほか、元パン屋の店舗がペンションに、元ワインセラーはワインレストランに改装され、観光スポットとしても楽しめる醸造所に生まれ変わっている。1998年からビオを実践。旧東独初のビオワイン醸造所でもある。ビオ団体「ゲア」に所属していたが、団体内唯一の醸造所だったため、他醸造所との情報交換ができずに退会。現在では時間の許す限り、ワイン生産者会員の多いほかのビオ団体の勉強会などに参加している。

Weingut Hoflössnitz
Knohllweg 37, 01445 Radebeul
Tel. 0351-8398333
www.hofloessnitz.de


2012 Solaris Spätlese
2012年 ソラリス・シュペートレーゼ 14.90€

ワインホーフレスニッツ醸造所では2009~10年に掛けて、ミュラー=トゥルガウの畑が霜で壊滅的な打撃を受けたため、寒さに強靭なリースリングとPiWi種(ピーヴィ種:カビ菌に耐性のある交配品種)への植え替えが進んでいる。ミュラー=トゥルガウはカビが付きやすいため、ビオ醸造所として栽培し続けるのは困難が多いこともその理由だという。1998年からPiWi種への植え替えを始めており、現在では総栽培面積の半分をPiWi種が占めている。PiWi種は品種や畑、年によって農薬散布量を50~90%減らすことが可能だという。このソラリスもPiWi種の1つ。ラーデボイルのヨハニスベルクという畑で栽培されている。この畑は火山岩に分類される閃長岩(サイアナイト)を主体とする土壌。ソラリス・シュペートレーゼは柑橘系果実、かりんの香りが優しく、味わいもパイナップルやメロンを想起させる。