ドイツ・ワインインスティトゥート

3 October 2014 Nr.987
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各国のワインの広報活動は、政府系の食品振興会や貿易投資庁などが行っています。ドイツでは「ドイツ・ワインインスティトゥート(以下DWI)」がその役割を担っています。DWIは連邦食品・農業・消費者保護省の管轄下にあり、出資者にはドイツ・ワイン生産者連盟や、ドイツワイン基金などが名を連ねています。ドイツワイン基金はDWIの事業の支柱であり、活動資金はドイツワイン法に従ってぶどう畑の持ち主や使用権利所有者、ワイン生産者から徴収されています。


DWIの新しいロゴマーク

DWI本社はマインツにあり、11カ国にオフィスがあります。東京には2009年秋までドイツワイン基金駐日代表部がありましたが、現在の日本市場での活動は、マインツ本社でアジア・ロシア地域を担当するプロジェクトマネジャー、マヌエラ・リープヒェンさんが一手に引き受けています。

DWIの活動内容は市場調査からイメージキャンペーン、見本市出展、ワインの女王選考事業、イベント企画・実施まで多岐にわたり、統計資料やガイドブック「Öchsle(エクスレ)」も出版しています。

10年程前からは、ドイツにおける最重要品種である「リースリング」をキーワードに様々な活動を展開しています。例えば、2005年に開始した「Generation Riesling」というムーブメントは、若手の意欲的な生産者にスポットを当て、ドイツワインのイメージ転換を図る活動です。35歳以下の造り手なら誰でも参加できる緩やかなグループには、現在400人近い造り手が名を連ね、各地で共同試飲会やイベントを開催しています。

「Riesling Weeks」も、DWIが力を入れている活動の1つ。2007年に米国で開催した「Riesling Week」が発端となり、世界各地で様々な形で開かれるようになりました。これは、外食産業を含む各国のワイン業界の協賛を得て、消費者にドイツワインをプロモーションするイベントで、ドイツでは「Weinentdecker werden!(ワイン探検家になろう!)」というスローガンの下、大都市圏のレストランやワインショップで多彩なイベントが行われます。

「Riesling Lounge」もDWIの魅力的な活動の1つ。主にワイン産地でない地域のレストランやホテルと提携し、ドイツワインのアピールに力を入れています。最近ではハンブルクの「Freudenhaus」やロストックの「Carlo615」などにラウンジを設け、リースリングをはじめ、充実したドイツワイン・メニューを提供しています。日本では、ワイン輸入商社や酒販店などで構成される団体「リースリング・リング」の活動を支援しているほか、来る11月1~2日の「Vinexpo Nippon」に参加し、プロ向けのセミナーを開催予定。国際食品・飲料展「Foodex Japan」(次回は2015年3月3~6日開催)にも参加しています。

www.deutscheweine.de
www.generation-riesling.de

 
Weingut Julian Haart
ユリアン・ハート醸造所(モーゼル地方)

ユリアン・ハート醸造所モーゼル中部ピースポートの家族経営の醸造所。もともと料理人志望だったユリアン・ハート(28)が24歳の時に立ち上げた。ユリアンの父母は共に学校教師。10歳の頃から台所で母を手伝うようになった彼は、15歳の誕生日に両親が提案したミニバイクを断って、ミシュラン・ガイドが高く評価しているレストラン『ソノラ』(ドライス)でのディナーをプレゼントしてもらう。その後、ミシュランの3つ星シェフ、クラウス・エアフォルトらの下で料理修業をし、一流シェフになることを目指した。しかし、著名なリースリングの産地ピースポート生まれのユリアンは、料理を極めるほどにワインへの興味が湧いてくるのを抑えられず、ベルンカステル=クースの醸造学校で勉強しながら、エゴン・ミュラー醸造所、ケラー醸造所などで修業、2010年ヴィンテージで醸造家としてデビューする。現在の所有畑は4.5ヘクタール。ラインホルト・ハート醸造所、ヨハン・ハート醸造所とも親戚関係にあり、2013年からは叔父が経営していたヨハン・ハート醸造所を継ぎ、ヴィントリッヒの畑のほかにピースポートの著名畑を入手。同年に結婚し、畑もセラーもマーケティングも、すべて妻のナディーヌと二人三脚で取り組んでいる。

Weingut Julian Haart
Trevererstr. 12, 54498 Piesport
Tel. 06507-9389868
www.julian-haart.de


2013 Piesporter Riesling
2013年 ピースポーター・リースリング 14.00€

ピースポーター・リースリング叔父の畑を継いだことで、ユリアンはヴィントリッヒの畑のほかに、ピースポートのゴルトトロップフヒェン、シューベルツライ、ドームヘアの3つの畑を手に入れることになった。栽培されているリースリングの樹齢は平均45年。シューベルツライでは1905年に植えられたリースリングも実を付けている。急斜面の畑での手仕事は家族の協力に支えられている。畑仕事も収穫も、ユリアンの父母やナディーヌの父母ら、一家総出で行っている。畑面積は現状を維持し、すべてを家族で行う醸造所でありたいと語る。このピースポートのリースリングはゴルトトロップフヒェンとシューベルツライのぶどうを使用したもの。ステンレススティールタンクでの醸造。清らかでエレガント、しかも非常に精密な印象のワイン。残糖は15g/ℓで中辛口に相当。ユリアンは「モーゼル・トロッケン(モーゼルの辛口)」と表現する。2013年ヴィンテージは雨がちで、選別に手間が掛かったという。全般的にアルコール度数は低めだが、エキス量は前年、前々年を高く上回っているそうだ。ユリアンのリースリングは初ヴィンテージから評価が高く、2011年産は2種類のワインがパーカー・ポイント94点を取得している。