ブリッタ・シュテフェン

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ブリッタ・シュテフェン Britta Steffen
1983年11月16日ブランデンブルク州シュヴェート生まれ。ベルリン在住。競泳選手。ベルリン専科大学の環境工学科学生。
©Gregorio Borgia/AP/Press Association Images

長い間、「才能に恵まれていても勝てない選手」と言われてきた。2004年のアテネオリンピックで予選落ちしたときは、絶望から引退さえしている。しかし05年8月に再起して以来、06年のブダペスト欧州選手権で世界記録、08年の北京オリンピックでは五輪記録を更新。今年8月のローマ世界選手権でも50メートル自由形で23秒73、100メートル自由形で52秒07の世界新をマークし、輝かしい復活ストーリーに注目が集まっている。

物心ついたときから泳いでいたが、7歳のとき水泳教室で1度溺れかけた。その恐怖体験がトラウマになっていることを、引退中に始めた心理学者フリーデリケ・ヤノフスケさんとのメンタルトレーニングで知った。飛び込み台に立つと心臓が飛び出しそうなほど緊張して普通に呼吸ができないこと、成績への不安で震えていることも話した。

「肉体と精神が共に働く高度な領域では、言語を操る左脳の機能を抑制しないとネガティブな独り言が始まってストレスホルモンが作られてしまう」とヤノフスケさん。つまり、水泳選手が無心で泳ぐためには左脳を調整しなければならず、そのためには半睡半覚状態を作る必要があった。こうして北京ではヤノフスケさんの助けを借り、しかしローマでは自分でその状態を作って気持ちを安定させ、ゴールまで一気に泳ぎきった。

そしてもう1人、復帰を助けたのは水泳仲間のボーイフレンド、オリバー・ヴェンツェルさんだ。「彼がいなかったら今の私はありません」。結婚も眼中にあるとか。