【ブリュッセル 1月1日 時事】欧州連合(EU)欧州委員会のフォンデアライエン委員長体制発足から1日で1カ月が経過した。最優先に掲げる気候変動対策で早々に新政策「欧州グリーンディール」を発表。英国のEU離脱問題では、今月末の離脱が確実となり、今後の貿易交渉に焦点が移るなど重要課題で大きな進展があった。ただ、いずれもこれからが難局で、この1年が正念場となる。
「緊急性は高まった。大幅に軌道を修正できる時間は少ない」。フォンデアライエン氏は先月27日掲載の仏紙レゼコーのインタビューで気候対策への決意を強調した。
グリーンディールでは、温室効果ガス排出量を2050年に「実質ゼロ」にする目標を法制化。30年までにまず5割以上(1990年比)削減する具体策を今夏にまとめる。環境保護と経済成長を両立させ、世界経済の主導権を握るもくろみだ。
ただ、ポーランドが50年目標への合意を拒むなど急速な脱炭素化には化石燃料依存度の高い東欧を中心に慎重論が残る。欧州委は打撃を受ける地域、産業への支援や技術革新に巨費を投じる計画だが、財源確保や配分の調整も難航必至だ。
一方、英国との自由貿易協定(FTA)交渉では、EU離脱から12月末までの「移行期間」の短さが障害となる。7月1日より前に決めれば最長2年の延長が可能だが、ジョンソン英首相は延長を求めない方針。期間内に交渉妥結に至らず経済、社会の混乱を招く懸念が広がっている。
ジョンソン氏はEUに決着を急がせ譲歩を引き出す狙いだが、フォンデアライエン氏は交渉不調なら「英国への影響の方が大きい」とけん制。移行期間延長の検討も迫るが、厳しい交渉となるのは不可避の情勢だ。
貿易をめぐっては、米国との摩擦解消も依然見通せず、新体制には多くの難題が待ち構えている。
15 Mär 2024 1214号
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