(デュッセルドルフ 6月30日)ドブリント交通相(キリスト教社会同盟=CSU)は、2016年から導入が決まっていた一般車通行税の導入をいったん延期することを発表した。同案をめぐる欧州司法裁判所(EuGH)の判決を待つ形になる。6月19日付のヴェルト紙が伝えた。
一般車通行税は、普通車でアウトバーンおよび連邦道路を走行する場合に義務付けられる通行税で、車検を受けた自動車の所有者は年間通行券を購入することになる。しかしこの料金は、ドイツ国内であれば自動車税から自動的に同額を差し引かれる形となり、結果的に自動車の所有者に負担は掛からないが、ドイツ国外の一般車には適用されないため、国際連合(EU)委員会は「外国人差別の疑いがある」としてEuGHに訴えていた。
ドブリント交通相はこの事態に対し、「EUからの通知には非常に怒りを感じている」と表明。「この件に関してはすでに長い間討議を重ねており、EUの対応には理解に苦しむ」と述べている。また、ショイヤーCSU事務局長もヴェルト紙のインタビューに答え、「一般車通行税導入はドイツの交通事情における当然の権利。これが国内で自動車税と相殺されることはドイツの判断であって、EUが干渉するべき案件ではない」と語っている。EuGHの裁判は平均2年掛かり、これが早まることはほとんどないとみられる。従って、一般車通行税導入をめぐる問題は、2017年の連邦総選挙に改めて持ち越される見通しだ。EU委員会は、ドイツ側の一般車通行税導入の延期という決定に対し、歓迎の意を表明。「これによって、より建設的な対話の可能性が生まれることを願う」とコメントしている。
一般車通行税は、大連立政権内でCSUの主導によって導入された案件だが、これと同様に、CSUが主導した政策に在宅育児手当てがあり、これをめぐっては連邦憲法裁判所での違憲訴訟に発展している。また、再生可能エネルギー法を受けて、国内に送電線を設置し、他州からバイエルン州にエネルギー供給を行う案に関してもバイエルン州のCSU政権がこれを拒絶しており、国政レベルでのCSUに関連する問題が目立っている。
2 Mai 2025 1241号
終戦80周年記念特集
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