ドイツ発ニュース

（デュッセルドルフ 6月3日）6月2日に身柄を拘束されたシリア出身の男3人が計画されていたとされる、デュッセルドルフ旧市街を狙ったテロ。未遂に終わったこの事件の背景を、6つの疑問に答えるかたちでまとめた。

容疑者は誰？
ドイツ国内で身柄を拘束された3人の男は、ハムザ・C（27歳）、マホード・B（25歳）、アブド・アラフマン・A・K（31歳）。3人はいずれもシリア人で、ノルトライン＝ヴェストファーレン州（NRW）、ブランデンブルク州、バーデン・ヴュルテンベルク州と、それぞれ別の場所で身柄を拘束された。4人目の容疑者サレー・A（25歳）は、フランスで2月から拘留されている。ドイツ連邦警察庁は、フランスに身柄の引渡しを要請しているという。

どのようなテロ計画だったか？
2014年シリアで、イスラム国（IS）の指導者層が戦闘員であるサレー・Aとハムザ・Cにデュッセルドルフを標的にしたテロ事件を起すよう指示。これまでのドイツ連邦検察庁の発表によると、この指令を受けた二人は、デュッセルドルフの旧市街、ハインリッヒ・ハイネ・アレー付近で爆弾を仕掛けたベストを着用し、自爆テロを起す計画を立てていたとう。その後、より大きな被害を与えるために、爆発物への点火のほか、同時に銃の乱射を行うなど計画は規模を拡大。しかし、具体的な準備までは至っていなかった模様。

2015年、二人はトルコ、ギリシャを経由して、ドイツに入国した。その道中で、今回の捜査で身柄を拘束されたほかの二人、マホード・B、アブド・アラフマン・A・Kを勧誘したとみられる。

アブド・アラフマン・A・Kは、2013年以降シリアでテロリスト用の爆発装置付きベルトや手榴弾の製造に携わっていたという。そして、2014年からドイツに居住していた。

2016年2月1日、サレー・Aがパリで取り調べを受け、フランス当局にドイツでのテロ計画について供述。
2016年6月2日、ハムザ・C、マホード・B、アブド・アラフマン・A・Kが、ドイツで身柄を拘束された。

なぜ、デュッセルドルフは狙われたのか？
これまでの取調べでは、まだ明らかになっていない。しかし、デュッセルドルフ警察は数カ月前から同テロ計画について把握しており、捜査をすすめていた。サレー・Aがパリで身柄をとらえられたことも、テロ計画発覚の大きな要因だった。

フランスで開催されるユーロ2016との関係は？
ドイツ連邦検察庁は、関連性なしとしている。しかし、サッカーの欧州選手権（ユーロ2016）の開幕直前というこのタイミングで、ISによるテロ計画を無力化したことは、ISに対するけん制になったのではないかとする見方もある。

NRW州内の警備体制はより強化される？
NRW州内務大臣ラルフ・イェーガー（SPD）は、人の集まる場所やイベントなどについて、強化することを表明。ユーロ2016の期間中、また8月のNRW州の日は特に厳重な警備体制を計画。しかし、今回のテロ未遂事件を受けてイェーガー内務大臣も「血の凍るようなテロ計画にショックを受けている」「ドイツ、そしてNRW州が、国際的なテロの標的になりうることは周知のことではあるが、より一層の警戒態勢で望む必要がある」と述べた。

デュッセルドルフ市内では、ユーロ2016期間中、視聴者前にパブリック・ビューイング会場を設置する予定だが、ここには50人規模で警護にあたるほか、会場を柵で囲み、入場者の手荷物検査を徹底。4000人の観衆を迎える用意があり、さらに、緊急時の避難経路も複数用意されていて、「数十秒で非難完了できる」と、主催者および当局は話している。

政治家の動きは？
CDUの安全保障専門家であるグレゴール・ゴルラントは、早急にNRW州内のすべての難民に対して、セキュリティーチェックを行うべきであると、州議会で提案。ゴルタントは、「イェーガー内務大臣は、バルカンルートでテロリストがドイツに入国することはないと主張していましたが、それは見込み違いでした。私たちは、難民の身元、人物像などについて今日まで把握できているとはいえない状況です。NRW州の安全当局は、すぐに州内のすべての難民の身元確認をすべきです」と発言。

デュッセルドルフ市のトーマス･ガイゼル市長は、「まずは落ち着いて行動しましょう」「市は、市民の安全確保のために、安全当局と連携し、できることはすべて行います」と、冷静な姿勢を示した。

参考：http://www.rp-online.de