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世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第11回

日本発・世界初を目指してゼロから道を切り開く
ベネクス・ヨーロッパ 社長

片野 秀樹 氏片野 秀樹 氏
Katano Hideki

プロフィール


2005年、株式会社ベネクスの立ち上げメンバーとして参加。2015年、ドイツで日本支社の子会社であるVENEX Europe GmbH を設立する。現在はベネクス・ヨーロッパの社長を務める傍ら、東海大学大学院医学研究科研究員としても活動している。
www.venex.de

2018年2月に開催された平昌オリンピックで金メダルに輝いた日本のフィギュアスケーター、羽生結弦選手や、強豪カナダを破り、銀メダルを獲得したドイツの男子アイスホッケーチームなど、日独それぞれの国を代表するアスリートたちもこぞって愛用している「リカバリーウェア」。

リラックス効果を促進し、より良い休息をサポートしてくれる休養時専用のウェアとして、革新的なアイテムを生み出した株式会社ベネクスが、日本のベンチャー企業から世界へと羽ばたき、成長し続ける秘密を紐解く。

ゼロから切り開くチカラ

「日本発・世界初」となる企業を目指し、2005年に事業をスタートしたベネクスでは、「運動をする際に着てはいけないスポーツウェア」を開発した。このリカバリーウェアは、副交感神経に作用し、疲労回復をサポートする「PHT」と呼ばれるミネラルを練りこんだ糸から造られる「V-Tex」という生地を使用して製法されたもの。現在ではパジャマやTシャツ、ネックウォーマーなど、さまざまなスタイルで展開されている。

スポーツをする際に着用するトレーニング用のウェアは一般的に認知されているが、既存市場に存在しない運動後のリカバリーウェアに対して、顧客からの理解を得るまでに困難なことも多かったという。

「皆さんはスポーツウェアと聞くと、トレーニングウェアを思い浮かべるかと思いますが、私たちが開発したリカバリーウェアはその逆の発想で、身体をリカバーするためのスポーツウェアになります。リラックスしたい時や身体を休ませたい際に着用し、効果を高めるためのウェアになりますので、『運動時に着用してはいけないスポーツウェア』と呼んでいます。身体を動かすことと同じくらい質の良い休養を取ることは大切なこと。ですが、一般的にはその重要性が認識されていないように感じました」と、片野さんは話す。

戦略を練るチカラ

ゼロから市場を開拓し、顧客を増やすため片野さんを含めた立ち上げメンバーが考えたのが、ある戦略だった。

「当時、3人で始めたスタートアップ企業には、莫大な広告費や宣伝費をかけられるような予算はありませんでした。そこで、スポーツの分野でトップにいる方、つまり日本を代表するアスリートの方たちにわれわれの商品を説明し、使っていただくことからスタートしました」

リカバリーウェアを実際に使用したアスリートたちから口コミで広がり、大手デパートでの取り扱いが決定したり、ムック本を出版したりと、徐々に一般消費者へと認知度が自然に広がっていった。

このように地道な活動を行い市場を開拓する中、2013年に転機が訪れる。毎年ミュンヘンで行われている大規模なスポーツ用品の見本市「ISPO」で、日本企業で初となる金賞を受賞したのだ。それがきっかけとなり、設立当初から掲げてきた「日本発・世界初」という目標を実現させるための海外一号店としてドイツに拠点を構えることになる。

本社のある神奈川県とバーデン=ビュルテンベルク州が友好提携を結んでいる縁からマンハイムにオフィスを設立し、現在は片野さんを含めた6人のスタッフが、ベネクス・ヨーロッパで働いている。

ドイツでも日本と同様、トップアスリートたちに使用してもらい徐々に一般消費者へと拡大していった。「ドイツの方々にご紹介する際、最初は納得をしていただくのに大変でしたが、一度気に入っていただくと長く愛用してくださる方がとても多く、情の深さを感じます」と、片野さん。

日本人とドイツ人の素材の好みの違いにも合わせて、ドイツでは天然素材で造られたリカバリーウェアを展開している。現地での声や肌で体感したものを取り入れ、改良されたベネクス・ヨーロッパの商品は、良いものにはお金をかけるドイツ人のスタイルともマッチしているのだろう。

リスクを負ってでも挑戦するチカラ

 片野 秀樹さん
ベネクス・ヨーロッパがサポートする
ドイツのアイスホッケー選手たちとの1枚

リカバリーウェアというまだ一般市場に根付いていないマーケットをゼロから切り開く難しさやリスクがある中で、日本とドイツのスタッフが同じ目標に向かって一丸となる。会社で掲げたミッションに一歩一歩近づいていくことが、大きな糧になっていると、片野さんは語る。

「いち早く海外に目を向けた薩摩藩の人事評価には5段階あったそうです。『1番目は何かに挑戦し、成功した者、2番目が何かに挑戦し、失敗した者、3番目が自ら挑戦はしなかったが、挑戦した人の手助けをした者、4番目が何もしなかった者、5番目が何もせずに批判だけしている者』。今よりもはるかに外の世界に飛び出すことが困難を極めた400年も前から、リスクを恐れず挑戦していた人々がいるということは、いまを生きる私たちに海外へ一歩踏み出す勇気を与えてくれると思います」

今年の11月から8カ月間、マンハイムの技術博物館で期間限定の展示会に出展することも決定しており、常に新たなことにチャレンジし続けるベネクス。彼らの姿勢から学べることはたくさんあるのではないだろうか。

 
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