16 April 2010 Nr. 812
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1976年 京都府生まれ
2001年 多摩美術大学 絵画科油画専攻 卒業
2003年 多摩美術大学大学院 美術研究科絵画専攻 修了
2003年10月~
2009年2月
ミュンヘン国立芸術アカデミーにてジェリー・ツェニウク教授に師事。首席で卒業
2009年5月~
2010年4月
奨学金を受け、レムゴ市にて制作活動を行う
多摩美術大学、ミュンヘン芸術アカデミー時代を通して多数のグループ展に参加。昨年、アカデミーの最終学年時には、「ドイツ国内美大生(国内の美術大学やアカデミーから各2名が選ばれる)」として、ボンの連邦美術展示館で作品を展示した。

キャンバスの中に見えるのは、様々な色と幾何学的なフォーム——アーティスト、高柳麻美子さんの作品だ。一見、抽象画のような印象を与える絵画だが、高柳さんいわく、それは風景画とのこと。一般的に想像しうる「風景画」の概念を打ち破るような彼女の発言に、度肝を抜かれた。

自由な発想と手法で自己を表現する若手アーティストたちが続々とベルリンに集まり、現代アートに新たな風が吹いていた2000年代初頭。日本で美大に通いながらも、自身のアートの方向性が定まらず、悩みあぐねていた高柳さんは、そんなベルリンの風潮に憧れ、ドイツを目指した。ポートフォリオを持って各地の美術アカデミーをめぐった末、行き着いたのはミュンヘン。そこで指導を仰ぎたいと申し出た教授が発した、「日本で学んだことをすべて忘れ、一から吸収する勇気があるなら私のところへ来なさい」という挑戦的な一言が、彼女のアーティスト魂に火を付けた。

気持ちをリセットして新たに開始した制作活動。「色」をテーマとする教授に師事したこと、そして渡独してから日本では意識しなかった自然に目を向けるようになったことが、その後の作品スタイルを決定付けていった。

実際に見た自然風景の中から、自分が興味を持ち、必要と感じる要素だけを抽出し、キャンバス上で色や形にしていく。そこには風景に対する自身の感情も反映させる。そのため、納得のいく色が出るまでひたすら絵との対話を重ねるという。

先頃、高柳さんはレムゴでの1年間の制作活動の集大成である個展を終え、ドイツ滞在に一区切りを付けた。今後は日本、ドイツに限らず、様々な場所で展覧会を開きたいと語る。もちろん、絵で食べていくのは容易いことではない。作品を世に認めてもらうためには、苦手なプレゼンテーション技術も磨かなければならない。それでも、「自分が感じた風景を絵にすることによって、『私はここにいます』というメッセージをより多くの人に届けたい」という想いが、彼女に筆を握らせているのだ。

(編集部:林 康子)


アカデミー在学中に開いた個展「WINTER&WINTER」
では、壁に直接絵を描いた



国内美大生に選ばれて参加したボンの展覧会


レムゴの終了個展のオープニングの様子

Information

レムゴの個展にて

ミュンヘン国立芸術アカデミーを卒業後、アトリエと住居、制作費が支給される奨学金を得て1年間レムゴに滞在し、製作活動を行った高柳さん。その間に40点ほどの作品を仕上げ、そのうち33点を今年3月14日~4月11日にかけてレムゴ市立ギャラリーで披露した。6月にいったん日本に帰国して製作を続け、来年再びドイツで個展を開く予定。

高柳さんのHP
www.mamikotakayanagi.com

ミュンヘンで高柳さんが師事したツェニウク教授のクラスのHP
www.klassezeniuk.de