29 April 2011 Nr. 865
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1982年 大阪府生まれ
2007年 同志社大学経済学部 卒業。渡独
2008年 クラフトワーク、NEU!の元メンバー、クラウス・ディンガー率いる "la! Düsseldorf / japandorf" プロジェクトの一員だったオノウチ氏と2人でバンド「Fil」を結成
2010年〜 フランク・バウアーと共にプロジェクト「Ai」を始動
幼少の頃からピアノやギターなど様々な楽器に触れ、大学時代にはインドの民族楽器シタールにも親しんだ。大学の先輩に勧められて聞いた「クラウト・ロック」に衝撃を受けたことをきっかけに、2006年に1年間のベルリン滞在。07年よりデュッセルドルフを拠点に本格的に音楽活動を開始した。

1960年代末、大規模な反体制デモが横行したこの時代に、音楽界でも既存の価値観からの脱出と自由を求める運動が起こっていた。「クラウト・ロック(Krautrock)」もその1つ。このカウンターカルチャー的な音楽のあり方に魅了された大塩駿介さんは、クラウト・ロックの聖地とも言えるデュッセルドルフで、その精神を感じながら音楽活動をしている。

「生命の根源的なエネルギーを感じさせるドラムのリズムと、ドイツ的な論理性やテクノロジーがミックスしたような音楽」と、その魅力を表現する。太古の昔から伝わる音と最先端の技術。一見、相反する2つの要素が矛盾なく共存する懐の深い音楽。

ドイツでの活動における最初のパートナーは、クラウト・ロック界の重鎮クラウス・ディンガーと共に活動した経験を持つオノウチさん。録音技術や機材の知識に長けたエンジニアだ。縁あって彼と知り合った大塩さんは、1年の予定で滞在中だったベルリンからギターを抱えてオノウチさんが暮らすデュッセルドルフへ。3日3晩、泊り込みでセッションを挑み、その熱意を買われてドイツでの活動の足掛かりを得た。2人のバンド「Fil」の活動は、大塩さんいわく「まさに修行」。8時間ぶっ続けで音を生み出しながら、すべてを記録する。その中から、きらめくフレーズを拾い集め、曲を作っていくのだ。寝食を忘れて音楽に没頭する日々だった。

「完全に対等な立場で音楽を作っていける」この作曲法を試みる中で、「求めていた音楽の姿がそこにある」と確信している。その日の気分や会話のすべてを音楽に詰め込み、自然や日常を模倣する。現在のパートナーはドイツ人。コミュニケーションに難しさを感じる反面、新しい音楽の展開もあり、楽しさは尽きない。また、クラウト・ロックの根底にある「反抗心」に共感するからこそ、夢中になれるのかもしれない。「社会のあり方は1つじゃない。価値観は多様だし、いろんな存在を受容する社会を体現する音楽をやっていきたい」と言う、彼の修行の日々は続く。

(編集部:高橋萌)


たくさんの機材が溢れるスタジオ



足で機材を操作しながら演奏する



どんな音を作り出すか、2人で調整中

Information

日独交流150周年記念イベント
Somewhere in Between

2部構成でデュッセルドルフの夜を楽しめるイベント。前半は、大塩さんとバウアーさんの日独デュオ「Ai」が紡ぎだす音楽に合わせて、日本人ダンサーたちが舞うパフォーマンス。後半は、ベルリン在住の日本人DJ、Daisuke PAKのライブ公演が披露される。

5月28日(土)22:00
入場料:8ユーロ(割引6ユーロ)
ZAKK
Fichtenstr.40, 40233 Düsseldorf
www.zakk.de

● 大塩さんのHP
http://shunsuke-oshio.com
● プロジェクト「Ai」のmyspace
www.myspace.com/1004939224