20 April 2012 Nr. 915
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平井 伸一さん
1977年 香川県生まれ
2000年 北里大学医療工学科卒業
平井 絵美さん
1980年 神奈川県生まれ
2000年 女子美術大学デザイン学科卒業
2008年4月 アートユニット「usaginingen」設立
2010年2月 「渡独。ベルリンを拠点に活動開始
2012年1月 デザインユニット「31design」設立
usaginingenは、平井さん夫婦が結婚と同時期に立ち上げたユ ニット。2人の作品はこれまでに、ニューヨークの国際広告賞 “One Show”で銀賞、アジア太平洋広告祭で銅賞に輝くなど、 高い評価を獲得。現在はヤマハやベネッセコーポレーションな ど大手企業をクライアントに抱える。

大きな脚立のような木製の立体。その下方には大きなドラム、上方には3層の透明アクリル板、天辺にはカメラが下向きに設置され、立体の横の椅子に付いているペダルを踏 むとドラムが回転する。そしてドラムやアクリル板の上で工作をすると、壁に絵が映し出される……。ベルリンで活動するアートユニット「usaginingen」が編み出した、音楽ライブなどで使用するオリジナル映像マシーン「TA-CO」だ。

一風変わった名称を持つユニットのメンバーは、東京の広告制作会社でデザイナー/アートディレクターを務めていた平井絵美さんと、元々放射線技師だった伸一さん夫妻。 会社を辞めて独立した絵美さんの仕事を伸一さんが手伝うようになったことを機に、夫婦二人三脚の活動が始まった。

日本では大手企業の広告制作をいくつも手掛けるなど、順風満帆だった2人が渡独を選んだのは、「自分たちに足りない部分を補いたい」との想いから。色彩豊かでユーモラスな東欧デザインを好む2人にとって、「機能性」「合理性」などの言葉で表されるプロダクトデザインが主流のドイツは縁遠い存在だった。そこにあえて身を投じることで、自分たちのデザインをより豊かにしたいと考えたのだ。

意気揚々とベルリンへ渡ったものの、異国の地で自分たちのデザインの良さを企業に売り込むのは、困難を極めた。 日本からの仕事も徐々に減る中、「ここで自分たちに何ができるのか」と考えて閃いたのが、パフォーマンスをしながらリアルタイムで映像を作り出すマシーンだった。当地で出会った個性豊かで刺激的なアーティストやミュージシャンたちと一緒に何かをしたい、との発想から生まれた作品だ。

ドイツで、自分たちの活動の原点が「人を楽しませるもの作り」であると気付いたusaginingen。TA-COの人気も上々で、今年から商業デザイン専門のデザインユニット 「31design」も開始した。そして現在、TA-COと共演できる楽器も構想中。エンジンが掛かった2人のユニークなアイデアが、どんどん形になっていく。(編集部:林 康子)


ベルリン在住のミュージシャン、
SPENCER(大谷友介)のミュージックビデオ「Fun Fun Fun」



TA-COを使ったパフォーマンス。
今年2月、ベルリンTheater Kapelle で行われたコーンサートにて



ヤマハ音楽教室のキャラクター&リーフレットデザイン

Information


靴作家JUCO.の展示会用ポスター

自分たちのデザインに自信と誇りがあるからこそ、受ける仕事の内容にもこだわりを持つ usaginingen。それゆえ、企業広告のデザイン製作と「自分たちが作りたいもの」とのバラ ンスが常に一致するとは限らない。そこで2人は、自らが主体となってグラフィックや映像、音楽、パフォーマンスなどのアート活動を行う「usaginingen」とは別に、新たにプロの写真家やスタイリストも加えて企業ロゴやミュージックビデオ、CDジャケットなど商業デザインを手掛ける広告プロダクション「31design」を立ち上げた。

usaginingen
www.usaginingen.com
2人の作品のほか、TA-COを使ってパフォーマンスを行うイベントの情報も随時更新。

31design
www.31design.biz