新市街マルクト・ハレの蚤の市 チェステーブルと蜂蜜売り場も

ドレスデン旧市街からアウグスト橋を渡って新市街に入ると、アウグスト強王の黄金の騎馬像が目に飛び込んできます。そこからアルベルト広場に向かって伸びるハウプト通りの中ほど、三王教会と向かい合う場所にショッピングモール「マルクト・ハレ」があります。大きな鋳鉄製の扉をあけて中に入ると、屋根まで吹き抜けの広々とした空間が印象的です。幅30×長さ86 ×天井高17メートル(約3階分)の巨大な空間にはパン屋、八百屋、肉屋やスーパーマーケットが入っており、住民にとっては日々の買い物に欠かせない場所です。

マルクトハレ
マルクトハレの外観

1886年に当時のアルフレッド・シュトゥーベル市長がフランクフルトやベルリンのようなマルクト・ハレをドレスデンにも作りたいと語ったことが構想の発端でした。かつての兵舎を取り壊した跡地に1899年に最初のマルクト・ハレが建てられ、1158平方メートルの広さに229もの販売スタンドがひしめきあっていたとのこと。1945年2月のドレスデン大空襲で東側半分が破壊されましたが、消費組合が引き継いで整備し1967年に再開。現在1階の半分の面積を占めるスーパーのコンズム(Konsum)社に所有が移った後には大規模な改修が行われ、2000年11月に全面的にリニューアルし今に至ります。

10年ほど前は地下にも多くの店があり、にぎわいをみせていましたが、マルクト・ハレの方針の変換を理由に地下の店がほぼ撤退し、ここ数年は閑散とした寂しさがありました。しかし、11月から3月までの冬季限定で毎週土曜日に地下で蚤の市が開催されるようになり、特に土曜日の活気が戻ってきました。1区画25ユーロで誰でも出店できるため、広い地下は一面骨董品ともガラクタともつかない物で溢れかえっています。マイセン食器の掘り出し物、懐かしい80年代の音響機器、東独時代のおもちゃなどなど、お目当てを狙う人はもちろん、何かいいものはないかと探す人の鋭い視線が飛び交います。

スーパーの入口前に蜂蜜を出店している麦わら帽子の男性が目につきました。その横にはきれいな色石を使用したチェステーブルが置いてあり「あなたの番です」とスタートを促す札が下がっています。この方はドレスデンから北に70キロにあるゼドリッツ(Sedlitz) 在住の養蜂家のウィルフリード・カリンカ氏です。東独時代は測量関係の技術者として働き、ドイツ統一後はソーセージを焼くなど職を転々とし、現在は「主夫です」という彼は、蜂蜜&チェスのコンビであちらこちらに出店しています。サクランボと林檎の花の蜂蜜を買ってみました。彼とお客さんのチェスの熱戦を思い出しながら味わってみようと思います。

マルクト・ハレ:markthalle-dresden.de
養蜂家カリンカ氏:www.Imkerei-Kalinka.de

カリンカ氏の蜂蜜売り場
「あなたの番です」という札とチェステーブルも並ぶ、カリンカ氏の蜂蜜売り場

福田陽子さん福田陽子
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
http://yoyodiary.blog.shinobi.jp/