難民移民を取り巻く状況、ペギーダの現在をレポート

6 Juli 2018 Nr.1077 文・写真 勝又 友子

ドレスデンを中心に活動している反イスラム運動ペギーダ(PEGIDA、西洋のイスラム化に反対する欧州愛国主義者)は、ドイツの受け入れ難民数が大幅に増える直前の2014年暮れに始まりました。それ以降、ドレスデンでは毎週の集会(通称月曜日の散歩)が続いています。さまざまな政局や状況の変化を経て一旦は集会参加者が減りましたが、最近また増えてきました。一住民の目から見たその近況をお伝えします。

町中を行くペギーダのデモ
町中を行くペギーダのデモ

夕方、町の中心部を通るトラムで迂回を伝える車内放送が入ると、月曜日だということに気づかされます。午後6時半、アルトマルクト広場からのデモで始まった5月末の集会での参加者は1000人前後(筆者の目視)で、普段着の人々がプラカードや旗などを持ち整然と歩いていました。若者の参加は少なく、50~60代の参加者が目立ちました。周りにはそろいの黄色いT シャツを着たペギーダのスタッフ、さらにその外側には警官が周りに注意を向けながら歩きます。プラカードの文句は、「イスラム教徒は出ていけ」「難民お断り」といった難民や特定のグループに所属する人々を非難するものやメルケル政権批判のものが多く目立ちます。また、ドイツの国旗やヴィルメール・フラッグと呼ばれる1944年のヒトラー暗殺及びクーデター計画を象徴する旗が、端々に掲げられていました。「統一を」「メルケルは退陣を」のシュプレヒコールが一部から聞こえてきましたが、全体的には静かなデモでした。その後、広場で1時間近くスピーチが行われ、集会は21時に終わりました。この日はベルリンや近郊の都市からも演説者や参加者があったようですが、大部分はドレスデンの住民の参加だったようです。集会後はすぐにデモや演説の様子がインターネット上で見られるようになり、ソーシャルネットワークを駆使した情報拡散や意見交換を行うなど、運動開始時から引き続き活発な情報発信も行っていました。

アルトマルクト広場に集まり演説を聞く人々
アルトマルクト広場に集まり演説を聞く人々

筆者の周りで見れば「ペギーダはナンセンスだ」と思うドイツ人は多く、住民の考え方の境界がはっきりと見られます。「ドレスデンで集会が行われることを住民として恥に思う」と発言する人も少なくありません。ペギーダ結成から3年半が経ち、この町は難民移民に対する国の方針への、強い意見の発信地として見られるようになりました。今後の政局によっては、ペギーダを始めとする難民移民を取り巻く議論はどの方向へも動く可能性があり、一外国人住民として目を離せない局面です。

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。