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人々の暮らしを結ぶ、アウグスト橋

エルベ川に架かるアウグスト橋は、ドレスデンの顔とも言うべきバロック建築群の景色に欠かせません。町の東西を流れるエルベ川は、北に新市街、南に旧市街を隔てており、両岸を結ぶこの橋は中世の頃から交通の要所でもあります。この歴史ある石橋の改修工事が、2017年の春から始まりました。

エルベ川を挟んで、新市街(写真左)と旧市街(同右)を結ぶアウグスト橋
エルベ川を挟んで、新市街(写真左)と旧市街(同右)を結ぶアウグスト橋

アウグスト橋が歴史に登場するのは13世紀からで、19世紀半ばまで新旧市街を結ぶ町で唯一の橋でした。大きく拡張されたのは1731年、名前の由来となっているアウグスト二世(通称アウグスト強王)の統治時代です。町が栄え交通量の拡大に伴い、より強固な橋を整える必要がでてきました。中世の頃よりドレスデンは政治や交易で重要な通過点であったため、訪問客や商人がエルベ川を越えて行きました。王侯貴族の馬車から旅人までこの橋を渡り、華やかなバロックの都を仰ぎ見たことでしょう。その後1910年に鉄筋コンクリートで強化改修されますが、第二次世界大戦末期、町へ迫るソ連赤軍から退却するため、ナチスドイツ軍の手によりほかの橋同様にアウグスト橋も爆破されました。戦乱で一時分断された両岸が再び結ばれたのは、1949年のことでした。

橋の歴史と並んで、たびたび起こるエルベ川の氾濫も語り継がれています。氾濫で橋が壊されるたび修復が繰り返されてきました。近年では橋の崩壊はないものの、2002年の洪水で町は大きな被害に遭いました。その出来事を忘れないために、2006年美術作家トビアス・シュテンゲル氏による「大波」と題された金属の立体作品が橋の欄干部に設置されました。江戸時代の浮世絵師・葛飾北斎の作品「神奈川沖浪裏」にインスピレーションを得た作品です。現在は工事のため取り外され、別の場所に保管されています。

工事は2年の予定ですが、実際のところもう少しかかりそうな様子です。工事前のアウグスト橋には路面電車が3路線走り、車も通っていました。今は歩行者と自転車のみ通行可能ですが、川を挟んだ地域にはそれぞれ特色があり、橋を通っての行き来はますます盛んになっています。

工事の間も橋を渡る人が絶えない
工事の間も橋を渡る人が絶えない

地図で見ると街の真ん中に糸のように細く引かれた一本の線の上を、朝夕は通勤通学で自転車や車や路面電車が忙しく行き交います。昼は観光客が景色を楽しみながら歩き、夜はコンサートや食事の余韻を味わいながら、人々が渡って行きます。アウグスト橋の存在は、人々の暮らしと共にあるのだと、改めて感じました。

18世紀のアウグスト橋を見られるパノラマ展
Panorama Dresden im Barock:
www.asisi.de/panorama/dresden-im-barock

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。
 
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