猛暑の中を駆け抜ける、アイアンマンレース

2 August 2019 Nr.1103 文・写真 ユゴ さや香

トライアスロンといえば、2000年のシドニーオリンピックから正式種目として採用され、2020年の東京オリンピックでも開催が予定されています。しかしスポーツになじみのない方は名前を聞いたことはあっても、競技内容を知らないことがほとんではないでしょうか。オリンピックでは、水泳1.5キロ、自転車40キロと長距離走10キロの3種目を1人で連続して行い、その着順を競います。それぞれに身体能力や技術が問われる3種目を続けて行うなんて、聞いただけでも大変な競技です。

毎年フランクフルトで開催されるトライアスロン「アイアンマンレース」は、オリンピックよりもさらに長い距離で競うトライアスロンの大会です。今回私も調べて知ったのですが、水泳は約2倍の3.8キロ、自転車は4倍以上の180キロ、長距離走に至ってはフルマラソンと同じ42.195キロ。それぞれ単独で行っても大変そうな種目を1人で、しかも3種目連続して行うのですから、文字通り「鉄人レース」と呼ぶにふさわしい過酷さです。そんなアイアンマンレースは現在世界40カ所以上で開催され、それぞれの大会から勝ち抜いた上位完走者が、毎年10月にハワイ島で開催されるアイアンマン世界選手権への出場権を得ることができます。フランクフルトの大会は欧州チャンピオンシップと位置付けられ、欧州の主要大会として毎年多くのアスリートが参加。街中を駆け巡る自転車と長距離の沿道には声援を送る観客で埋め尽くされます。

ーマー広場は例年以上の熱気沿道にも観客が溢れ、レーマー広場は例年以上の熱気に包まれました

大会当日の6月30日は最高気温36度という暑さで、ただでさえ過酷なレースに厳しい気候条件が重なって、例年以上に熾烈(しれつ)を極める大会となりました。レースの模様はフェイスブックのライブ機能を使って動画配信され、早朝の水泳競技をリアルタイムで視聴したり、実況を聞きながらレースを楽しむことができました。それぞれの競技に魅力がありますが、競技と競技の間のトランジットがトライアスロンならでは。水から上がった選手が自転車やヘルメットを装着しながらサイクリングへと向かったり、自転車を置きランニングシューズに履き替えるタイミングもポイントです。こうして3種目をやり抜き、最後は旧市街のレーマー広場へと向かいます。ゴール地点には特設会場が設置され、司会者の解説とともに戦況を見守ります。

ゴール地点のたくさんの観客ゴール地点にはたくさんの観客が詰めかけ、過酷なレースの完走者達を迎えます

今年はドイツ出身ヤン・フロデノの優勝を皮切りに、1~4位までをドイツ人が占め、会場はさらに盛り上がりました。「Anything is possible」をモットーに、フランクフルトの初夏の風物詩として、これからも鉄人たちが旧市街を駆け抜けることでしょう。

欧州アイアンマンレース:eu.ironman.com

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。