Hanacell

フランクフルトから世界に誇る日本の漆工芸

フランクフルト近郊の自宅で、漆(うるし)工芸に携わっているフッター・ステファニーさん。彼女はドイツ人の父と日本人の母を持ち、ドイツの大学で日本語学を専攻したほか、日本に留学するなど日独両方の文化に精通しています。大学卒業後の3年間は州立木材彫刻学校に通い、木造彫刻の学位を取得。もともと日本の工芸に興味があり、日本の陶器を買い集めるうちに漆塗りをやりたいと思うようになったそうです。その後、日本で漆塗りを習える学校を見つけると4年間かけて漆を学び、5年ほど前からドイツで本格的に漆工芸に従事しています。

全工程を一人で手作業するフッターさん全工程を一人で手作業するフッターさん

私自身、漆は器として見たことはあるものの、詳しい制作工程については全く知識がありませんでした。フッターさんによると、まずは土台となる木材などを乾燥させて漆を吸い込ませ、数日間温度と湿度を管理しながら乾燥させるのだとか。そして表面を紙やすりで磨き、砥とのこ粉と米糊を混ぜて作った「ハチ錆漆(さびぬり)」を塗って研ぎ、漆を塗り重ねていきます。ものによっては下地塗りを6回も繰り返すのだとか。

さらに中塗りを3回、上塗りを3回し、仕上げの工程へ。漆を塗ってから砥粉を蒔いて付着させたり、漆で布を貼り、乾燥させたものを研いだり補強したりします。何度も漆を塗って乾燥させ、磨き、最後に艶出しの漆を塗って拭き取る作業を重ね、やっと完成です。

近くの公園で拾った銀杏の葉を使った作品近くの公園で拾った銀杏の葉を使った作品

全ての工程を一人で、しかも手作業で行うのは、日本でも珍しいことだそう。それだけに質が高く、すばらしい漆作品に仕上がっています。こうした作品はウェブサイトからも購入でき、箸や簪かんざし、皿などは希望に合わせて受注生産しています。名入れも可能なので、特別なプレゼントとしても人気です。

フッターさんは、工芸品だけではなく、芸術作品の制作も積極的に行っています。「漆の技術を使って絵を描きたい」という思いがあったという彼女の作品は、西洋の油絵にも似た作風。日本とドイツの両方の文化を受け継ぐフッターさんだからこその、新しい漆作品だと感じられました。

最近では、自然を利用した漆工芸に力を入れているそうで、近所の公園で拾った銀杏の葉を使った作品や、小枝を使った箸置き、貝殻で作った簪などを制作。漆を通して自然を捉えたこれらの作品は、自然本来の美しさをより際立たせています。

簪(かんざし)などの小物や器は希望に応じて受注生産も行う簪(かんざし)などの小物や器は希望に応じて受注生産も行う

ドイツでは、工芸と芸術とは明確に区別されています。しかし、漆には工芸と芸術両方の側面があるため、ドイツでは理解されにくいそう。漆という日本の伝統技術を使い、工芸を通して芸術を生み出すフッターさん。日本の素晴らしい伝統工芸としての漆を、より多くの人に伝えていってくれることでしょう。

フッターさんの公式ホームページ:https://urushi-stefos.com/

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。 Twittter : @nikonikokujila

 
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