フランケンシュタイン城と伝説

3 August 2012 Nr. 930 文・写真 ユゴ さや香

夏だから怪談というわけではありませんが、今回はフランクフルト近郊ミュールタールにある「フランケンシュタイン城(Burg Frankenstein)」をご紹介します。

山の上に立つこの城は、13世紀以降フォン・フランケンシュタインと名乗る貴族が所有していたことから、フランケンシュタイン城と呼ばれています。フランケンシュタインといえば、英国人作家メアリー・シェリーの小説が有名です。

著者自身がこの城について直接言及しているわけではないものの、小説と城の伝承には不思議な関係があります。1673年にこの城で生まれたヨハン=コンラート・ディッペルは、宮廷錬金術師として研究に取り組みました。同時に解剖実験も盛んに行っていたため、「死体から魂を取り出して別の体に入れている」という悪い噂が立ち、死体から怪物を作り出したという話がまことしやかにささやかれるようになりました。後にグリム兄弟がこの伝承を記録しています。

メアリーの小説とディッペルには共通点が多く、彼がフランケンシュタインのモデルになったのではないかと言われるほどです。また、1814年にメアリーがライン川を訪れた際、この城の近くに立ち寄っていること、グリム童話の翻訳者であるメアリー・ジェーン・クレモントがメアリー・シェリーの継母であることなどから、フランケンシュタイン城の話を彼女が伝え聞いた可能性は高いとされています。

フランケンシュタイン城
森を抜け、山を登り切った所に城の入り口が見えます

フランケンシュタインと言うと、メアリーの小説ばかりが取り上げられますが、さらに古くは、勇敢な騎士であったゲオルク・フォン・フランケンシュタインが、村人たちを悩ますドラゴンを退治したとの言い伝えもあります。

そんな多くの伝説が残る城ですが、私が訪れた時は中世のイベントが行われ、大勢の人々で賑わっていました。城内では特殊な石を使ったアミュレット作りや、昔の衣装を着ての記念撮影など、当時の生活や文化を体験できました。また、中世愛好会のメンバーが当時のスタイルでキャンプを張り、実際の武器や防具のデモンストレーションを披露。塔からは町を一望でき、フランクフルトの街並みも遠くに見渡せました。

恐ろしいイメージの名前とは裏腹に、森に囲まれた城は心地良い場所でした。毎年ハロウィンには夜遅くまでパーティーが開かれるそうです。夜の城は昼間とはまた違った印象を与えてくれることでしょう。9月9日までは夏のイベント、10月19日から11月4日まではハロウィン祭りが開かれます。

www.burg-frankenstein.de

フランケンシュタイン城
中世の衣装を着た人たちが、城のガイドツアーをしてくれます

ユゴ さや香
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。