「作曲家地区」博物館、ハンブルクゆかりの作曲家たち

作曲家のブラームスがハンブルク出身であることは広く知られており、彼の生家の近くには、1971年からブラームス博物館がありました。実はハンブルクには、ブラームスだけでなく、ほかにもゆかりのある作曲家が何人もいるのです。そこで、まず2011年にブラームス博物館と同じ通りに、テレマン博物館が開館し、2015年には、「Komponisten Quartier(作曲家地区)」として、テレマン博物館に併設して、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(大バッハの次男)とヨハン・アドルフ・ハッセの博物館がオープンしました。

会場となった教会の牧師と滝元さんご夫妻
作曲家地区博物館のある通り。昔ながらの建物が再建されていて、散歩するだけでも美しい

ゲオルク・フィリップ・テレマンは大バッハと同じ時代の作曲家で、1721年から46年もの間、ハンブルク市の音楽ディレクター、オペラハウスの責任者、また5つの中央教会の音楽監督を歴任し、大活躍しました。3600もの作品を残し、ハンブルクを愛して「アルスター序曲」を作曲しています。当時は最も成功した音楽家として世界に名を馳せていたそうです。同博物館では、それぞれの作曲家のエピソードを音声と映像で紹介しているほか、彼らの作品をヘッドフォンで聴くことができます。全部を聴くと8時間かかるとか。

C.P.E. バッハは、テレマンの後を継いで中央教会の音楽監督を20年間務めました。当時は「大バッハの作品はもう古い。今はエマヌエル・バッハの時代だ」といわれるくらい成功をおさめ、その遺体はミヒャエリス教会の地下に葬られています。彼が最も愛した楽器はクラヴィコードで、同博物館では、当時と同じ仕様のクラヴィコードを誰でも弾いてみる事ができます。私も弾いてみましたが、チェンバロよりも柔らかい音色でした。

会場となった教会の牧師と滝元さんご夫妻
誰でも演奏可能なクラヴィコード

ハッセはあまり知られていない音楽家ですが、1699年、ハンブルクのベルゲドルフ生まれ。そのキャリアはハンブルクのオペラハウスのテノール歌手として始まっています。その後、ドレスデン、ベネチアなどに活動拠点を移し、オペラの作曲家として名を馳せました。彼の作品は近年になって、その価値が見直されてきたそうです。グラスハーモニカとソプラノのソロカンタータの録音を聴きましたが、素敵な作品でした。同博物館にはバロック劇場の模型もあり、舞台美術をどのように動かしたのかを見ることができます。当時は電気がなかったので、動力はなんと人力。華やかな舞台の陰で、多くの人が汗を流していたのですね。

今年の夏には、メンデルスゾーンとマーラーの博物館もオープンするそうなので、楽しみです。


井野さん井野 葉由美(いの はゆみ)
ハンブルグ日本語福音キリスト教会牧師。イエス・キリスト命。ほかに好きなものはオペラ、ダンス、少女漫画。ギャップが激しいかしら?