シュトゥットガルトに住み始めた頃、海が恋しくなることがよくありました。そのたびに、「ここには海がなくても、山があるじゃないか!」と自分に言い聞かせていたものです。そんな私の気持ちを聞いたドイツ人は、「1時間半くらい車で走れば、ボーデン湖があるよ」というのですが、いやいや、ボーデン湖はあくまでも「湖」。確かに大きな湖ですが、私が求めている「海」とは程遠い……なんて思っていました。
グナーデン湖岸で遊ぶ子どもたち
ところがドイツに長年住んでいると、湖の魅力が分かってくるから不思議です。今回はボーデン湖の一部でありシュトゥットガルトからも行きやすいグナーデン湖へ行ってきましたので、その魅力をお伝えします。
朝のグナーデン湖の水はとても透明度が高く、小から中サイズの魚が泳いでいるのが潜らずとも見えました。浅瀬の湖岸だったので、子どもたちがカモの一家と一緒に泳いだりして楽しんでいる姿が見られます。大人は沖まで泳いだり、カヌーやスタンドアップパドルを楽しんだりしていました。
ライヒェナウ島を背に泳ぐカモ一家
私自身すっかりキャンプづいていて、テントを張ってキャンプをするのは今年で3回目。それぞれのキャンプ場によって年齢層が若干異なりますが、今回訪れたCamping am Seeでは、ファミリーだけでなく若者も多い印象でした。ライブなどのイベントが開催される日もあったり、スタッフが気さくでレストランもお洒落で、若者に人気なのもうなずけます。またこのキャンプ場の湖水浴場は、キャンプ宿泊者でなくても利用できるようで、週末は多くの人でにぎわっていました。私たちは毎日湖で泳ぎ、遊び、食べ、ヘガウ火山を望み……空が真っ暗になって帰る頃には、心も身体も満たされているのです。
キャンプ場内にお洒落にカスタムされたヴェスパ
アレンスバッハ側にあるこのキャンプ場から湖岸より向こう側に見えるのは、対岸ではなく、文化遺産にもなっているライヒェナウ島(Reichenau)。2000年にユネスコの世界遺産に登録されたこの島は、人工で造られた道で本土とつながっているため車でも気軽に立ち寄れます。島にあるライヒェナウ修道院内には聖母マリアと聖マルコに捧げられた聖堂や、聖ゲオルクと聖ペトロ、聖パウロに献堂された教会が二つあります。またライヒェナウには、10世紀から残っている「キリストの奇跡」という有名な壁画。修道院の代官所は2階建ての石造りの建物で、2階より上の階は14世紀に半木造建築からなっており、これは南ドイツにおける半木造建築で古い物の一つであるそうです。そんな盛りだくさんなグナーデン湖は、ボーデン湖のほんの一角。本当にボーデン湖は大きいなと感じる旅でした。
Camping am See:http://campingamsee.com
大阪生まれ、東京育ち。在シュトゥットガルト13年。Merz Akademie大学視覚コミュニケーション科卒。語学力を武器に、日本企業のリロケーションをサポートしながら、メディアデザイナーとしても幅広く活躍している。趣味はギターと読書。