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Sat, 12 October 2024

英国ニュース解説

最終更新日:2012年9月26日

サッカー選手は社会の手本となるべき?
悪童バロテッリ選手の悪行は許されるか

「サッカーのルールさえよく分からない」という人でも、英国に住んでいれば、この選手の顔は見覚えがあるかもしれない。試合での危険行為や私生活における騒動などで、最近、新聞やテレビで盛んに取り上げられているマリオ・バロテッリ(Mario Balotelli)選手だ。同選手の悪行と世間からの評判をまとめた。

バロテッリ選手が犯した悪行の数々

Mario Balotelli

イタリアの強豪クラブ、インテルに所属していたときに、テレビ番組に出演し、ライバル・チームであるACミランのユニフォームを着ました。

イタリアのミラノの広場で乗用車の中からおもちゃのピストルを連射して、警察に注意されました。

現在はイングランド北部マンチェスターに拠点を置くクラブに所属しているにも関わらず、「マンチェスターという街が嫌い」と発言してファンの怒りを買いました。

イングランド代表のウェイン・ルーニー選手と過去に関係を持ったことのある女性をレストランで目にした際に、その女性の前で「ルーニー、ルーニー」と歌いました。


練習中に、チームメートであるボアテング選手から受けたタックルに激怒して、つかみあいのけんかをしました。

下部組織の選手に向けてダーツを投げつけました。


米国の強豪クラブ、ロサンゼルス・ギャラクシーと親善試合を行った際に、決定的なチャンスでふざけた後ろ向きのシュートを披露して、観客から大ブーイングを浴びました。

最大のライバルである強豪マンチェスター・ユナイテッドとの試合の前夜に自宅の浴室で花火遊びをしてボヤを起こしてしまい、消防隊の厄介になりました。

イタリア代表に招集された際に、朝までディスコで遊び明かした挙句に飛行機に乗り遅れ、合宿の集合時間に遅刻しました。

ウクライナのクラブであるディナモ・キエフとの試合中に対戦相手の選手へカンフー・キックを見舞って退場になりました。

地元マンチェスターでレッカー移動された数は数十回に達します。


悪童バロテッリに英国中から非難が集中

世界中が注目するイングランドのサッカーにおいて、プレミア・リーグの強豪クラブ、マンチェスター・シティー所属のマリオ・バロテッリ選手が話題を集めている。同リーグで22試合出場して13ゴールを決めるなどの活躍を見せていることに加えて、その非常識な行動に各方面から非難が寄せられているためだ。

その非常識ぶりは、確かに際立っている。試合中の危険行為で警告や退場処分を受けたり、練習中にチームメートと乱闘したりなどまだ序の口。私生活においても、交通違反に始まり、ボヤ騒ぎ、果ては女性刑務所を無断で訪問して尋問を受けたりといった行為の数々によって、世間からの悪評を買い続けている。

サッカー選手は社会の手本となるべきか

バロテッリ選手のこうした悪行に非難が向けられた際に合わせてよく聞かれるのが、「社会的影響力を持つサッカー選手たちは、社会人として子供たちの良き手本となるような行動を日頃から心掛けるべき」とする意見だ。これは、「サッカー選手たちは社会的影響力を持つにも関わらず、子供たちの手本となっていない」とする見方の裏返しでもある。 

実際にサッカーの試合においては、故意による危険なプレーや乱闘騒ぎといった非紳士的と見なされる振る舞いは決して珍しくない。また私生活においても、自身の不倫問題でイングランド代表の主将の座を剥奪されたことのあるジョン・テリー選手を筆頭に、イングランドのプレミア・リーグに所属するサッカー選手たちは、車のスピード違反から人種差別発言や暴力事件、売春問題などで頻繁に騒ぎを起こしている。

サッカー選手は本質的に不作法?

一方で、「サッカー選手に社会人の手本となることを求めようとする方がおかしい」との意見もある。「フィナンシャル・タイムズ」紙のサイモン・クーパー記者は、ポール・ガスコインやエリック・カントナといった往年の名選手たちも非常識ぶりを発揮していたとの実例を挙げた上で、サッカー選手にいわゆる「お行儀の良さ」を求めるようになった最近の傾向こそ例外的であると主張。そうした傾向は1990年以降にイングランドのサッカーが巨大ビジネス化したことと関係しているとし、かつて自由奔放に振る舞っていた米国の先端技術ビジネスの起業家たちが徹夜で勤務するようになり、富裕層が開催する子供の誕生日会にロック歌手たちが律儀に出席するようになったのと似た現象であると述べている。つまり、サッカーが巨大ビジネスとして成長したことで、選手たちはサラリーマン化することを求められ始めた、とする見解である。  

その意味において、バロテッリ選手は、他選手たちと比べて程度の差はあれど決して特異な存在ではなく、むしろサッカー選手としては本質的な不作法ぶりを発揮しているだけ、と解釈することもできるのかもしれない。また数十年前であれば、世間が彼の行動をもう少し寛容に受け止めていた可能性もある。ともかく、バロテッリ選手は今後も荒くれ者としての自分を貫き通すのか、もしくは時代の流れに従い、やがてサラリーマン化を遂げるのか。数年後の彼がどんな選手になっているか、楽しみである。

Gazza

イングランド北部タイン・アンド・ウィア出身のサッカー選手、ポール・ガスコイン氏の愛称「ガッザ」。主に1980年代後半から90年代にかけて活躍した。類稀なドリブルやパスの能力で、国内リーグやイングランド代表選手として国際大会などで活躍し、「イングランド史上最高のサッカー選手」と呼ばれた。一方で、アルコール中毒、薬物中毒、暴行事件、飲酒運転、妻への暴力、税金の未納、自殺未遂など数々の騒動を起こしている。イングランドにおいて、「サッカーは上手いが、常識に著しく欠けている」と見なされる代表的な名選手の一人。
 

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