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フルーツ好きには天国(?)の英国
20代~30代のころ、「好きな食べ物は?」と聞かれると、「フルーツ」と答えていました。実は焼肉とかウナギとかも大好きだったのですが、でも「一生それだけを食べることになってもいい」というくらい好きだったのは果物です。
学生ビザで渡英した当初、アルバイトはせずに貯金を崩しながらのケチケチ生活を自分に課していた私は、学校に行くときのランチを自分で作っていくことがほとんどでした。そのとき、サンドイッチやおにぎりに必ずといっていいほど添えていたのがバナナやリンゴ。もちろん果物好きということもありましたが、もう一つには、英国では果物が手頃な値段で買えるという理由もありました。特にリンゴやバナナは1袋に6~7個入っていて1ポンド足らずという安さ。リンゴは種類も多く、毎日のようにこれらの果物にお世話になっていました。
とはいえそれは20年以上前のことなので、毎日お弁当に果物を持っていっていたことはすっかり忘れていたのですが、今年になって、日本からYMS(ユース・モビリティー・スキーム)で英国に来て暮らしている方たち数人に会う機会があり、この思い出が蘇ってきました。
というのも、若き在英日本人の方たちに英国暮らしの良いところを質問すると、人が親切とか、美術館が無料といったことに加えて、誰もが口をそろえて「果物が安い」と答えてくれたからです。物価高の英国生活において、唯一といっていいほど贅沢できるのが果物とのこと。
それを聞いて、あらためてスーパーの果物売り場やファーマーズ・マーケットに行ったときの、この国の果物の種類の豊富さを思い出すのと同時に、以前、連載コラム「英国の口福を探して」で英国の食べ物を紹介していたときには、果物を使ったお菓子をたくさんご紹介したという記憶がよみがえってきました。
さすがにもうシーズンが終わってしまいましたが、夏の間、スーパーやマーケットには、ストロベリー、ラズベリー、ブラックベリーといったベリー類がまさに棚からあふれんばかりに並んでいました。そして、物価高の英国においてもいまだに1パック2ポンド程度でイチゴやブドウを買うことができます。また、ロンドンであっても、時折、街角に立つストリート・マーケットに出ている八百屋さんのストールでは、洗面器のようなボウルに、リンゴやミカンなどの果物が山盛り1ポンドで売られているところもときどき見かけます。夏のベリー類や秋のリンゴなど、英国産の旬の果物が出回るのは一時期だけで、多くは海外から輸入された果物という面もありますが、英国はフルーツ好きにとっては天国といえるかもしれません。