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Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 蔵 健太

第7回 健康の秘訣と公演後の楽しみ

18 November 2010 vol.1276

日本の友人とファンの方からいただいた入浴剤バレエ団日本の友人とファンの方からいただいた入浴剤

この職業に就いてから、「体調管理で気をつけていることはありますか」と聞かれることが多い。ロイヤル・バレエ団はロンドンだけで年間140回以上の公演があり、夏には平均20回の公演を行う海外ツアーも毎年実施されるので、大勢のダンサーが怪我などの故障で悩んでいる。ちょっとした自慢だが、自分はここ何年か大きな怪我をした記憶が無く、団内でも丈夫なダンサーだと思っている。


とはいえ、10代の頃は決して体が丈夫だったわけではない。留学してから入団するまでの5年間で、体の各所の肉離れ、捻挫、足の指の疲労骨折、お尻の関節の亀裂骨折、オスグッド・シュラッター病膝の辺りに痛みや骨の隆起がみられる病気が悪化したことによる膝の骨の摘出手術、腰の椎間板ヘルニアなど、数え始めたら切りがないくらいの怪我を経験してきた。怪我が多いということはダンサーとして恥ずべきことで、バレエ以外のエクササイズを取り入れることにした。

ジムに通い筋力アップを心掛け、ピラティス、ジャイロトニックなど、今でも週に2回はバレエ以外のトレーニングをする日を設けている。特にピラティスを気に入っていて、筋肉の各箇所を個別に強化できるのが、自分にとって効果的だと感じている。

普段の食事も、洋食から和食を中心としたメニューに切り替えた。自分が日本人だからかもしれないが、和食が体に合っていると感じるし、病気もしなくなってきたとも思う。


ただエクササイズ、食事療法などももちろん体を強くするために効果的なのだが、鍛えるばかりでは体は疲れてくるし、体力にも限界がある。毎日踊り続けるには、その日の肉体疲労を次の日までにどれだけ回復させるかが大事なのだ。

そこで現在、疲労回復のために取り入れているのが、毎晩の「半身浴」。「何だ、そんなことか」という人もいるかもしれないが、これが本当に効果的で、夜の公演後自宅に戻り、30〜40分湯船に浸かり汗をかくだけで、筋肉疲労がほとんど取れる。こんなものは他には考えられない。

マッサージなども効果的だが、公演後に空いているクリニックなどオペラ・ハウスの近くにはなく、あったとしても公演後に行く元気も時間もない。

今はもうこの半身浴が病み付きになってしまっていて、大袈裟な言い方かもしれないが、お風呂の蛇口を捻るのが公演後の楽しみになっている。

我が家のバスルームには、いつも日本から届く入浴剤がたくさん置いてあり、毎日どの香りにするか選び、音楽を掛け、本や雑誌を読んだり、DVD を観たりと、湯船でちゃぷちゃぷしながら、自分だけの世界を楽しんでいる。風呂上がりには軽く柔軟をし、次の日までぐっすり眠る。


実は今年の夏休みはずっと日本でバレエ活動をしてきたのだが、そこでも毎日、仕事の後はスーパー銭湯に通っていた。薬湯、泡風呂、水風呂、岩盤浴、サウナ、サービスで韓国垢擦り、マッサージもあり、食事まで出来るなど、天国のような場所だった。

韓国、中国などアジア各地で銭湯のような施設に行ったこともあるが、こんなに至れり尽せりなのは日本だけだ。銭湯に行く度、自分は日本人に生まれて本当に良かったと感じる。日本滞在中は殺人的なスケジュールで働いていたのだが、怪我をせずに済んだのは、銭湯のお陰だといっても大袈裟ではない。

自宅の半身浴も大好きだが、近い将来、ロンドンにもスーパー銭湯ができればいいな、と今日も切実に祈っている(笑)。

 

蔵 健太
1978年8月2日生まれ。北海道旭川出身。95年にローザンヌ国際コンクールに出場し、スカラーシップ賞を受賞。ロイヤル・バレエ学校で2年間学んだ後、97年にロイヤル・バレエ団に入団する。現在、ソリスト。http://kentakura.exblog.jp
今後のスケジュール
「Alice's Adventures in Wonderland」3月15日~4月13日(フロッグ役)
(予定は突如変更になる場合があります)
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