第309回 英国の鉄道の発展と会計士
19世紀の英国では産業革命の進展と共に新しい会社が次々に誕生しました。すると不幸にも事業に失敗し、破産する会社も出てきます。1831年の破産法廷法で、官選管財人には実務家としての会計士が選ばれ、また44年の会社法で、粉飾決算や不正の取締まりが強化されていきました。会計の専門家という職業が注目を集める一方、他人の不幸で飯を食っていると陰口も叩かれました。そして当時は巨大な鉄道会社が複数生まれた時代です。
現在のロンドン破産裁判所
シティのギルドホール近くにあった、破産裁判所の管財人の助手をしていたウィリアム・デロイト氏が1849年、グレート・ウエスタン鉄道会社の会計監査人に任命されました。鉄道会社は初期投資に莫大な資金を必要としますが、その資金は運賃収入によって長期間かけて回収されるため、会社の損益を正確に帳簿に反映することが困難でした。そこで減価償却や未収収益、未払い費用など新しい会計概念を採り入れ、その解決を図りました。
デロイト社ロンドンとデロイト氏
また、デロイト氏の会計事務所の近く、グレシャム・ストリート5番地で1849年に会計事務所を開いたのがサミュエル・プライス氏。さらにプライス氏は65年に大学を出たばかりのエドウィン・ウォーターハウス氏とパートナーを組み、プライス・ウォーターハウス事務所を近くのキング・ストリート20番地に開設。そこで当時最大だったロンドン&ノース・ウエスタン鉄道の会計監査を担当して成功を収め、名声を得ました。
プライス氏(左)とウォーターハウス氏(右)の拠点だったキング・ストリート20番地
現代の会計会社ビッグ4と呼ばれるDeloitte、PwC、KMPG、EYはいずれも19世紀にロンドンの鉄道会社の会計監査を担当したことから発祥しています。さらに19世紀後半に米国の鉄道会社の会計監査役を担って、グローバルな会社に発展しました。米国でも産業の発展が鉄道網の拡大と連動し、鉄道会社や大企業の株式に投資したのが英国の富裕層だったため、投資家を呼び込むには英国式の財務諸表の開示が求められたのです。
会計会社ビッグ4は英国鉄道会社の発展と深い関係にある
余談ですが、前述のエドウィン・ウォーターハウス氏が大学を出たばかりで会計事務所のパートナーになる、つまり高い出資金を払うとはよほど裕福な人なのか調べてみますと、同氏はリヴァプールの裕福な綿花商人の息子でした。兄のアルフレッドは著名な建築家になり、ケンジントンの自然史博物館やホルボーンのプルデンシャル保険ビルを建てました。また弟のセオドアは有名弁護士になり、国際弁護士事務所フィールドフィッシャーの創始者メンバー。皆、能力も名声もお金もあった人たちでした。
アルフレッドが設計したプルデンシャル保険(上)と自然史博物館(下)
寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。



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