Yutaka
Tue, 19 October 2021

英国の
愛しきギャップを
求めて

英国に暮らして18年。いまだに日々のあらゆる場面で「へー」とか「ほー」とか「えー」とか言い続けている気がします。住んでみて初めて英国の文化と人々が、かくも奥深いものと知りました。この連載では、英国での日常におけるびっくりやドッキリ、愛すべき英国人たちの姿をご紹介したいと思います。


マクギネス真美マクギネス真美
英国在住のライフコーチ/編集者/ライター。日本での雑誌編集を経て2003年渡英。英国の食、文化、人物、生活などについて多媒体に寄稿。英国人の義母に習い英国料理の研究もしている。
mamimcguinness.com
過去のコラム:英国の口福を探して

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パーティー好き

パーティー好き

英国に住み出して数カ月のある夜、大声を出しながら地下鉄のエスカレーターを降りてくるグループに目が釘付けになりました。というのも、ヨーダにダース・ベーダーなど、「スター・ウォーズ」のキャラクターが勢ぞろいしているのです。地下鉄の車両に乗り込む一団を見送ったあと、一緒にいた英国人の友達に「あれは何?」と聞くと「スタッグ・ナイトだよ」と教えてくれました。

スタッグ・ナイト(スタッグ・ドゥとも呼ばれる)は、結婚直前の男性が、友人たちと連れ立って独身最後の大騒ぎをするパーティーのこと。私が見たときのように、テーマを決めて仮装をしたり、全員が同じ服装をして出掛けるというのが決まり。仲間とスポーツやキャンプをするという場合もありますが、とにかく羽目を外してお酒をたくさん飲むというのが定番です。

スタッグとは元々あらゆる生き物の「オス」をさす言葉で、そのため男性だけが参加を許される独身最後のパーティーをこう呼ぶそうです(ちなみに女性版は「ヘン・ナイト」といいます)。

その後、何度もスタッグ・ドゥの集団をパブや街中で見かけました。そのたびに驚くのは、英国の人々の度を超えたはしゃぎぶりです。大声で騒ぎ、足元もおぼつかないほどに酔っ払う姿は、普段の様子とはあまりにも違います。


英国人の気質を表す言葉に「stiff upper lip」というのがあるのをご存知でしょうか。直訳すれば「固くこわばった上唇」というこの言葉は、冷静で我慢強い英国人の様子をよく言いあてています。ただし、スタッグ・ナイトでの英国人の振る舞いは正反対で、それが不思議でした。そのことを何人かの英国人男性に尋ねたところ、普段「stiff upper lip」だからこそ、ここぞというとき、つまり「今日は騒いで楽しむ」と決めたときには、思い切り弾けることこそが英国流なのだという意見で一致していました。

それを聞いて思い出したのがBBCで放映された「ザ・テラー」というテレビ・ドラマ。これは北極海探検へ向かった英国海軍の二つの軍艦エレバス号とテラー号が1847年に流氷に阻まれ身動きが取れなくなり、最後には探検隊が全滅したという史実が元になっています。ドラマはもちろん創作ですが、第6話では、船をあきらめ、陸路で人里を目指すという決断がされ、その前に隊員たちの気晴らしのためにパーティーを開くことになりました。流氷に閉ざされた極寒のなかで、海軍という規律の厳しい集団生活をしていた隊員たち。それまで押し殺していた感情を曝け出すかのように仮装姿で騒ぐシーンがスタッグ・ナイトの英国人に重なり、ヴィクトリア時代(あるいはそれ以前?)から続くパーティー好きの英国人の本領を見た気がしました。

 
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