ニュースダイジェストの制作業務
Thu, 28 March 2024

健康に関する悩み・疑問にプロの医療関係者が答えます!

外国暮らしを送っていると、医療や健康にまつわる懸念が、ふと頭の片隅によぎる瞬間がありませんか。そこで今回は、在英読者にとってとりわけ気になるインフルエンザ、婦人科関連、うつ症状の話題にまつわるお悩みを取り上げて、プロの医療関係者にまとめて回答していただきました。


医療に関する緊急の問い合わせ先

家族や周囲の人間からのサポートが受けにくくなる外国暮らしにおいては、各医療機関を頼りとする機会がどうしても増えてきてしまう。万が一のときに利用することができる連絡先を控えておくと、安心できるはず。

主な日系医療機関 一般医

日本クラブ
北診療所
The Hospital of St. John & St. Elizabeth,
2nd Floor, 60 Grove End Road, London NW8 9NH
最寄り駅:St. John’s Wood
TEL:020 7266 1121
南診療所
Parkside Hospital, Ground Floor, The Lodge,
53 Parkside, Wimbledon, London SW19 5NX
最寄り駅:Wimbledon
TEL:020 8971 8008
www.nipponclub.co.uk

ロンドン医療センター
234-236 Hendon Way, London NW4 3NE
最寄り駅:Hendon Central
TEL:020 8202 7272
www.iryo.com

Dr 伊藤クリニック
17 Harley Street, London W1G 9QH
最寄り駅:Regent’s Parkほか
TEL:020 7637 5560
www.dritoclinic.co.uk

予約なしで受診できる主なNHS病院

Charing Cross Walk-In Centre
Charing Cross Hospital

Fulham Palace Road, London W6 8RF
最寄り駅:Hammersmith
TEL:020 8383 0904

Parsons Green Walk-In Centre
5-7 Parsons Green, London SW6 4UL
最寄り駅:Parsons Green
TEL:020 8846 6758

Soho Walk-In Centre
1 Frith Street, London W1D 3HZ
最寄り駅:Tottenham Court Road
TEL:020 7534 6500

Whitechapel Walk-In Centre
174 Whitechapel Road, London E1 1BZ
最寄り駅:Whitechapel
TEL:020 7943 1333

その他の地域における「Walk-In Centre(予約なしで受診できる診療所)」についての情報は、下記のウェブサイトから検索できます。
www.nhs.uk/ServiceDirectories

医療ヘルプライン

NHS Direct
TEL:0845 4647
www.nhsdirect.co.uk

深夜まで開店している薬局

ZAFASH
24時間営業
233-235 Old Brompton Road, London SW5 0EA
最寄り駅:West Brompton
TEL:020 7373 2798
www.zafashpharmacy.co.uk

妊娠・中絶・性病

British Pregnancy Advisory Service
TEL:0845 730 4030
www.bpas.org

Centre for Sexual Health
Jefferiss Wing, St. Mary’s Hospital,
Praed Street, London W2 1NY
TEL:020 3312 7583/7586
www.imperial.nhs.uk/thejefferisswing

不妊治療

CRM London
Park Lorne, 111 Park Road, London NW8 7JL
最寄り駅:Marylebone
TEL:020 7616 6767
www.crmlondon.co.uk

うつ症状などに対応する
サイコセラピストの主な公認団体

United Kingdom Council for Psychotherapy (UKCP)
www.psychotherapy.org.uk

British Psychoanalytic Council (BPC)
www.psychoanalytic-council.org

British Association for Behavioural and
Cognitive Psychotherapies (BABCP)

www.babcp.com

British Association for Counselling and Psychotherapy (BACP)
www.bacp.co.uk

British Psychological Society (BPS)
www.bps.org.uk

新型インフルエンザ
2009年の前半は、新型インフルエンザに関するニュースが盛んに報道されました。これから年末に向けて気温が低下することに伴い、新型インフルエンザの感染者が増加することが予想されます。英国における対応策について聞きました。

監修: ニック・ジョンソン 保健省 広報担当

新型インフルエンザについてのニュースをよく耳にします。通常のインフルエンザとの違いは何でしょうか。

新型インフルエンザは通常のインフルエンザと同じように、人間同士で感染するウイルスを持つ呼吸器疾患で、既に世界各国での感染例が報告されています。ただ通常のインフルエンザとは異なる新型のウイルスを持ち、多くの人間はこのウイルスに対して免疫を持っていないため、誰もが感染する可能性があります。

どのような症状が出たら、新型インフルエンザに感染したと疑うべきなのでしょうか。

新型インフルエンザに感染すると、人間の体には通常のインフルエンザとよく似た症状が出ます。多くの場合、感染者は38度以上の高熱を出すと共に、下記に記された2つ以上の症状を経験することが多いようです。

  • だるさを感じる
  • 頭痛がする
  • 鼻水が出る
  • のどに痛みを感じる
  • 咳が出たり、息切れしたりする
  • 食欲が減退する
  • 体の節々が痛む
  • 下痢になったり、吐き気がする

新型インフルエンザに感染した疑いが出たら、どういった対処をしたらいいですか。

通常のインフルエンザと同じく、休息を取り、必要に応じてパラセタモール(paracetamol)などの治療薬を服用し、熱を下げることに努めましよう。ただ16歳以下の方は、アスピリン(Aspirin)を含んだ解熱剤を服用することは避けてください。

また英国では抗ウイルス薬であるオセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)が、新型インフルエンザの感染者に対して広く処方されています。抗ウイルス薬は必ずしも新型インフルエンザそのものを治療するわけではありませんが、感染後48時間以内に服用すれば、以下の効果があることが分かっています。

  • 体調不調の期間を1日ほど短縮する
  • 症状を和らげる
  • 肺炎などの合併症を誘発する可能性を減らす

タミフルやリレンザの備蓄はきちんとできているのですか。
新型インフルエンザが全国的に流行した場合、すべての感染者に果たして行き渡るのでしょうか。

英国では現在、全人口の約半数に当たる3300万人以上の感染者に提供できるだけの抗ウイルス薬を備蓄しています。今後はさらに増量し、全人口の約8割をまかなえるだけの量を準備する予定です。

タミフルやリレンザはどこで手に入りますか。

一般医(GP)もしくは保健省が開設した特設サービス「National Pandemic Flu Service」を通じて処方しています。「高リスク者」の範疇に入る、肺や心臓、肝臓や神経系の病気さらには糖尿病を患っている方が新型インフルエンザに感染した場合、抗ウイルス薬を早急に服用することがとりわけ重要になります。他には免疫抑制剤を服用中の方、5歳以下のお子様や65歳以上の高齢の方、妊娠中の方、過去3年の間に喘息の治療薬を服用した方なども高リスク者に当てはまります。

タミフル、リレンザの副作用が心配です。

タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬は通常、新型インフルエンザの症状を緩和し、またその感染期間を短縮させます。症状の軽い感染者は他者へウイルスを伝染させる危険性が少ないため、新型インフルエンザの感染拡大を防ぐことにつながります。また抗ウイルス薬を服用すれば、また別の治療を必要とするような合併症を併発させる可能性も低くなるので、国内の医療機関への負担を軽減させることができます。

ただ他の医薬品と同じく、タミフルやリレンザなどの抗ウイルス薬の服用に際しては副作用が出る場合があり、実際に吐き気を催したなどの事例が小数ですが報告されています。こうした副作用は通常、だんだんと静まっていきますが、症状が長引いたり、不安を感じる場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。また吐き気に関しては、これらの抗ウイルス薬を食後すぐに服用したり、水を飲んでみたりすることで、その副作用を弱めることができるかもしれません。

GPの診察アポを取ることには普段から苦労しています。
新型インフルエンザの症状が出た場合のことですが、早急にアポを取ることなど不可能なのではないでしょうか。

新型インフルエンザの流行に際しては、NHS機関などに問い合わせが殺到することが想定されています。そこで保健省では電話でも症状などを確認したり、またウェブサイトから自己申告を通じて抗ウイルス薬を手に入れることができる体制を構築しました。詳細については、特設のウェブサイト(www.pandemicflu.direct.gov.uk)を参照ください。

新型インフルエンザの予防接種を受けることはできますか。

新型インフルエンザはこれまでにない新型ウイルスを保有しているため、ワクチンの開発にはそれなりの時間がかかります。このことを主な理由として、予防接種に関しても一定の手続きを必要としています。英国では、10月21日より医療関係者や先述の高リスク者を優先してのワクチン接種の実施を開始したところです。また健康な児童は、新型インフルエンザに感染しても、大多数は完全に回復することが判明しているため、ワクチンの接種はお勧めしていません。また生後6カ月半に満たない乳幼児は、ワクチンに対して十分な免疫機能を働かせることができないので、接種は行っていません。

現在、英国内での感染者はどのくらいいるのですか。

保健省では、毎週にわたり、ウェブサイトなどを通じて新型インフルエンザの感染者数を報告しています。11月1日までの1週間で、新たに8万4000人が感染したことが分かっています。

新型インフルエンザの予防策はありますか。

各自がティッシュを効果的に使うことで、新型インフルエンザの感染拡大を防ぐことができます。まずくしゃみや咳をする際に、口や鼻をティッシュで覆うようにしましょう。そして使ったティッシュをゴミ箱にきちんと捨てることが大事です。その後に石鹸と温水で手を洗えば、感染の拡大を防ぐことができます。

英国では日本ほどマスクを着用している人を見かけないのですが、大丈夫なのでしょうか。

確かに、他国における新型インフルエンザに関するニュース報道では、国民に対してマスクが配布されている映像を見ることがあります。しかしマスクの着用が、新型インフルエンザの感染を防ぐ効果的な方法であることを示す科学的なデータはまだ出されていません。それよりも、先に示したティッシュを使った予防策の方が、ずっと効果的です。

でも日本人からすれば、やはりマスクを着用しないと少々不安なのですが……。

マスクを外そうとした際にマスクの外部の表面に手が触れたり、またマスクの交換を怠り不衛生な状態のままにしておいたがために効果が薄れ、マスクを着用した状態でも新型インフルエンザに感染する可能性が少なからずあります。またマスクを着用しただけで安心してしまい、人々がその他の予防策を講じなくなってしまうことも懸念の一つです。

保健省としては、マスクの着用よりも、手を清潔に保ち、またインフルエンザの症状が出た際には自宅に留まること、咳やくしゃみをする際は口をティッシュで覆うことに気を付けることを重要視しています。マスク着用よりもずっと簡単で、かつ効果的です。

年末に、日本に帰省することを予定しています。もし私が新型インフルエンザに感染した場合、出国や帰国に際して、空港で止められてしまう可能性はありますか。

新型インフルエンザ感染の疑いがある人を飛行機に搭乗させるかどうかについては、各航空会社の判断に任せています。ただ新型インフルエンザに感染した疑いがあるのなら、旅行を控えるべきでしょう。

新型インフルエンザに関する海外渡航の注意点などについては、外務省(British Foreign & Commonwealth Office、FCO)のホームページ(www.fco.gov.uk/en)に掲載されている留意事項を確認してください。さらには適切な旅行保険や医薬保険に加入していることを改めて確認するのも重要です。

女性の体にまつわる悩みについて
日本では家族や年上の先輩といった身近な人に気軽に尋ねることができたのに、外国生活を始めた途端、簡単な情報を得ることさえ難しくなるのが、女性の体に関する悩み。避妊や妊娠、性病、婦人科検診などについて、まとめてお答えいただきます。

監修: 小川大輔先生 www.potential-works.com
NHS助産師、日本家族計画協会員、統合医療セラピスト

避妊についてお尋ねします。英国ではピルの使用が一般的なのですか。

16〜49歳までの英国人女性のうち、25%は避妊法としてピルを使用し、次いで22%がコンドームを使用しているようです。
またドイツでは女性全体の58.6%、フランスでは35.6%、オーストラリアでは24%がピルを利用しているという調査結果が出ています。

日本ではピルがそれほど使われていないのはなぜでしょうか。

ピルの日本での服用率は、現在3%という調査結果が出ています。英国を始めとして、欧州各国ではピルを無料で処方してもらえますが、日本では購入に月1500〜3000円程度の出費を必要とすることが理由の一つとして挙げられると思います。

また日本で低用量ピルの承認がされたのは今から10年前で、それまでは高用量、中用量のピルしか扱われていませんでした。中用量以上のピルは血栓症や重い頭痛、吐き気などの副作用が問題になり、敬遠されていましたが、現在では服用者は増加傾向にあります。さらに2006年に「低用量経口避妊薬の使用に関するガイドライン」が改定され、服用前に煩雑で高額な検査が課されていたそれまでの内容から、問診を重視し、血圧測定を必須とする世界基準に準拠するガイドラインへの変更により手続きが簡素化されたこともあって、ピルは日本でも気軽に手に入るようになってきました。

ピルって、精子や卵子を殺してしまうのですか。

ピルには精子や卵子を殺す効果はありません。一般的に使用されている女性用ピルは、服用によって、妊娠中と同様の内分泌状態を人工的に持続させることで排卵を停止させます。

ピルを飲むとニキビがなくなると聞きました。迷信ですよね?

個人差がありますが、ピルの服飲によって男性ホルモンが抑制されるため、ニキビが軽減されて肌の調子が良くなり、多毛が改善する場合があります。また子宮の収縮が抑えられるために月経痛が和らいだり、月経血量の減少や月経不順の悩みが解消されるなどの効果が見られることもあるようです。卵巣ガンや子宮内膜ガン、貧血、骨盤内感染症、乳房の良性腫瘍にも予防効果があるとされています。

でも当然、副作用もあるんですよね。

ピルの飲み始めは特に、吐き気やムカつき、頭痛、乳房の痛みなどが起こることがあります。人によっては血圧上昇、数日間小量の不正出血なども見られます。また血栓症、脳梗塞、心筋梗塞、乳がん、子宮頸がんのリスクが、ピルを飲まない人に比べて少なからず増えることが報告されています。また喫煙者や糖尿病を患っている方は、ピルを飲むのに適していません。

実際にはどうやって服用するのですか。

低容量ピルであれば、月経の初日から服用します。初めて使用する際には、ピルを飲みながらも約7日間はコンドームなど他の避妊法の併用を心掛けてください。

ピルはどこで手に入りますか。

国民医療制度(NHS)管轄のヘルス・クリニックにて無料で処方してもらえます。ピルの処方だけなら、問診で終わります。

妊娠したかもしれません。

お近くの「Boots」などの薬局に行けば、「ホーム・プレグナンシー・テスト」を、7〜12ポンドほどで購入できます。一般医(GP)に登録していれば、GPにて無料で検査できます。また登録されていない方は、NHS管轄のファミリー・プランニングを行うクリニックで無料検査が受けられます。

英国で妊娠した際、特に何か食事について気を付けなければいけないことはありますか。

英国では生の魚を扱うことに慣れていない業者も中にはあるため、妊娠中は魚専門店以外の場所で販売されている寿司や刺身、生魚を口にすることは避けた方が良いでしょう。日本では、妊婦が寿司や刺身を食べてはいけないという指導があまりなされていませんが、それは食中毒の一種であるリステリア症の発症がほとんど見られないからです。

また卵に関しては、サルモネラ菌による食中毒が後を絶たない状況です。できるだけ、品質保証をするライオン・マークが印刷された卵を使い、十分加熱してから食べるように心掛けてください。

さらにリステリア菌感染の恐れから、ブルー・チーズ、未処理のミルク、メチル水銀の保有が高いとされているメバチ・マグロを1週間に80グラム以上食べることは控えましょう。過度のビタミンAの摂取によって中毒症状を起こす恐れのある、レバー・パテも避けた方が無難です。

自分が性病かどうかは、どうやったら分かるのでしょうか。

日本語で性感染症、英国では「Sexually Transmitted Infections(STI)」と呼ばれるものの中には、典型的な症状の特徴があるものと、他の病気や体調の不調と区別しにくいものがあります。特に女性の場合、症状が出ないことがありますが、感染していた場合、放っておくと不妊症や子宮外妊娠の原因にもなります。あくまでも目安として、以下の症状が表れるようでしたら受診をお勧めします。

  • 1)おりものに異臭があったり、黄緑色だったり、膿みが出たり、強いかゆみがある
  • 2)ペニスから膿みが出てくる
  • 3)排尿時に痛みを感じる、ヒリヒリする
  • 4)股や陰毛の辺りがかゆい。赤い発疹や水ぶくれがある。米粒のような疣がある
  • 5)セックスをしている間、後に出血や痛みがある
  • 6)下腹部や内腿、リンパ腺、睾丸に痛みがある

人工授精などの不妊治療を試してみたいと思います。

不妊治療は非常に大きなストレスを伴いますので、精神的にも金銭的にもサポートが必要となります。医師や看護師と一緒に不妊原因が何なのか検討し、精密検査(男性側も含む)、性感染症の履歴など、本格的な治療を始める前にご自分の体の状態をまず知って、それからどの治療が最適か、専門家のアドバイスを仰いでみるということが大切です。

NHS機関でも不妊治療を受けられるのでしょうか。

不妊に関するお問い合わせやアドバイスをNHSにて無料ですぐに受けることができますが、治療から体外受精までNHSで受けようとすると、既に多くの人が順番を待っているため、長い期間待たなければならないことが予想されます。半年から1、2年待つこともあるようです。また喫煙者は無料で受けるための順番待ちリストから外される場合があります。

プライベート診療の場合は、すぐに治療を開始することが可能です。費用は病院によってまちまちですので、掛かりつけのGPから紹介された病院で確認を取ってみてください。

プライベート診療の場合、料金はどのくらいですか。
日本に帰国して不妊治療を受けた方が、安いのでしょうか。

不妊治療の種類によって差がありますが、初診・卵管造影検査・精子検査までは500ポンド程度(約7万5000円)、人工授精までが1500ポンド程度、体外受精まで含めると総額3000〜6000ポンドの費用を考えておいたほうが良いかもしれません。

日本では不妊治療に保険が全額適用されることはないのですが、体外受精1回の費用は20〜30万円程度で、日本に住んでいれば自治体からの補助金制度などを活用することで、治療費のうち10万円程度が戻ってくることもあります。

英国には色々な婦人科検診があると聞いていますが、どのようなものがありますか。

英国では「Smear Test」と呼ばれる子宮頸がん検診を25歳から無料で受けることができて、3年ごとに行われることになっています。GPに登録していると検診を勧める手紙が届き、検査を受けることができます。検査では子宮入口の子宮頸部を綿棒のような専用器具でこすり、粘膜細胞を採取。痛みも出血もなく、一瞬で終了します。

乳がん検診は50歳以上の方を対象に行っていますが、胸のしこりや違和感などがあれば、GPに相談することで、乳房のX線撮影やより精密な検査を受けることができるでしょう。

婦人科の病気は、何も症状がなく自分でも気付かないうちに進行していることがありえますので、定期的に検診を受けることをお勧めします。GP登録していない方は、NHSのジェニト・ウリナリー・メディシン・クリニック(Genito-urinary Medicine Clinic、GUM Clinic)、ファミリー・プラニング・クリニック(Family Planning Clinic)などと呼ばれる機関での受診が可能です。

うつ
外国暮らしを始めると、落ち込みやすくなったり、家に閉じ篭りがちになったりと、いわゆるうつ症状に陥る人が少なくありません。ここでは、英国での生活を続けながら試すことができる、うつの対処法についてお聞きします。

監修: 日保田裕子先生 www.japanuktherapy.com
英国心理療法協会公認サイコセラピスト(心理療法士)

渡英以来、ずっとうつ気味です。私は精神的な病気にかかってしまったのでしょうか。

日本で暮らしていますと、異文化と接する機会が比較的少ないので、渡英してからその適応に戸惑ってしまうというのは十分に起こりうることです。必ずしも「病気」であるとは限りません。思ったよりも自分の英語が通じない上に、現地在住の方々と習慣やコミュニケーションの仕方に大きな違いがあれば、ストレスは溜まるでしょう。その結果、精神のバランスを崩していくというケースは珍しいことではありません。

本来の自分を取り戻すには、どのような方法がありますか。

うつ気味になったときに、「自分が情けないために落ち込んでしまったんだ」と結論付けてしまう人がいますが、これでは悪循環になってしまいます。まず、自分を責めないことが大事です。また実際のところ、「友人がいない」「英語が話せない」「人種差別が存在する」といった状況をすぐに変えるのは、なかなか難しいと思います。そういうときは、まずは自分の見方や行動を変えることで、日頃接する相手との関係に変化が見え、相手も変わってくることがあります。

また異なる環境でこそ新たに発見した自分の一面に目を向けるのも、有意義な経験となるかもしれません。そして今の辛い体験を、今後どう生かしていけるのかと考えていくのが建設的です。

過去にどうやって困難を乗り越えてきたかを思い出すのも良いでしょう。「そういえば、近所の人に挨拶しただけで、気持ちが楽になったな」といった些細なことでもいいので、現在の状況にも適用できるのではないかと考えてみるといいと思います。

精神科医とサイコセラピストの治療法の違いは何ですか。

うつなどの症状に対して薬を処方できるのは、医師だけです。そのため、薬を使って治したいのかどうかという点に大きな違いがあります。一方、多くのサイコセラピストやカウンセラーは、その状態が必ずしも「病気」であるとは限らない、というスタンスで事例を見ていきます。

うつは、世間で思われているように、気の持ちようを原因としたり、自分が弱いからなるというものではありません。また自分の状態について何か気付かせてくれる好機になることもあります。サイコセラピーでは、相談者の話を聞きながら、どういった環境の中で問題が生じたのかをお聞きして、症状の解消や緩和だけではなく、根本的な問題を改善し、どうやってこれからの自分を変えていく要素として利用できるのかを一緒に探っていきます。

実際のカウンセリングは、どのように始まりますか。

例えば私が扱うサイコセラピーやカウンセリングですと、初回の面接で、相談者にどんなお話をしたいかまず尋ねます。その際に、最近どんな出来事があったのか、またその方の家族関係などについてもお聞きしながら、心理的なパターンや悩みの原因などを探っていきます。さらにセッションを通して、どう変わりたいかということも聞きます。その要望に応じて、今後、何回のセッションを持ちましょうと決めたり、決めないでとりあえず進めましょうという形で始めたりします。問題の内容や今後の目標にもよりますが、「何だか気分がもやもやして」といった軽い状態であれば、1回50分のセッションを4、5回行えば良くなることもあります。

サイコセラピーの料金はいかほどなのでしょうか。

NHSは無料です。プライベート診療の場合、セラピストの経験や資格、地域などによって料金が異なってきますが、1セッション(50分または60分)で50〜70ポンドぐらいが平均ではないかと思います。

NHSの場合、申し込みを行ってから実際にセッションに入るまでに長い期間待たされたり、セッションの回数に制限が設けられていることが多いと思います。また最近、NHSでは、サイコロジカル・セラピー(Psychological Therapies)と呼ばれるうつの治療が進められています。ここでの治療は、特定の技法に限定されたものとなっています。さらに、NHSには日本人のセラピストが少ないかもしれません。

信頼の置けるサイコセラピストやカウンセラーを見つけるためのアドバイスをいただけますか。

英国には主に5つの公認団体があります。これらの団体から、「registered」「accredited」「chartered」といった公認のタイトルを受けているというのが一つの目安になると思います(会員と公認は異なります)。上記いずれかの団体から公認を受けているかどうかは、各団体のウェブサイトにある「find a therapist」などの項目で検索できるようになっています。

市販薬で、うつの治療薬となり、かつ副作用が出ず、気軽に試すことができるものはありますか。

軽・中度のうつ症状に対して、「セント・ジョーンズ・ワート(St John’s Wort、セイヨウオトギリソウ)というハーブ薬の効果が認められた事例が多くあるようです。ただ他の処方薬との飲み合わせについてなど留意事項がありますので、服用される前に、医師や薬剤師、ハーバリストに相談することをお勧めします。

自分の力で、症状改善のためにできることはありますか。

もし自分の意志で行動する力があるのだとすれば、旅行して気分転換するのが良いと思います。家に閉じ篭っているよりも、少し動いてみるだけで、元気が出ることもあります。

またエネルギーの循環を良くするため、可能ならば、散歩程度でも良いので軽い運動をするのが効果的です。同じ理由でマッサージを受けるのも良いと思います。

遠出したり、運動する気にはどうしてもなれないのですが……

うつになっているときは、暗い世界に生きているような気分になってくると思うので、花を買ったり、お風呂に入浴剤を入れてみて、家の中に色や匂いをつけてみることで、自分の空間をもっと賑やかにすると良いでしょう。また「花に水をやる」など、ごく簡単にできることで小さな達成感を覚える体験を持つことも、何もしない罪悪感から開放される意味で、状態の改善に繋がるかもしれません。

さらにうつ気味のときは、終わりのない毎日を生きているかのような感覚を覚える傾向があります。そうした場合は、「3時〜4時はテレビを観る」といった簡単なことでいいので、生活プランを作りましょう。毎日は果てしないものではなく、区切りをつけられるものだということが実感できるはずです。テレビなどを観て、とにかく大声で笑ってみることも効果的だと思います。

うつ状態にある友人にはどう接すればいいのでしょうか。

もしその友人と直接話す機会があれば、「あれをした方が良い」などと言うと、自分が何もしていないと責められていると受け止められる恐れがあるので、そうした助言は避けた方が良いと思います。

それよりも、相手を受け入れる用意があることを示すことが大切です。友人が言うことなら何でも同意しなければならない、という意味ではありません。例えば友人が、いかに自分が辛いかと述べているときに、たとえ自分としてはそれが大したことだとは思わなくても、「あなたが辛く思っているのはよく分かる」と言って共感を示すことにより、安心感を与えることができると思います。また冗談を言ったり、楽しみの場を与えることができれば良いですね。

その友人が「誰とも話したくない」と言ったきり、家に閉じ篭ってしまい、どう接すればいいのか迷っています。

相手が引いた境界線を越えていいかどうか迷うときは、できるだけその境界線を踏み越えないようにしながらも、それでも助けを必要とすれば、協力するというメッセージを与えるのが良いのではないでしょうか。その手段として、カードやEメールが便利です。「放っておいて欲しければそのままにしておくけど、でも必要ならば支えになるよ」といった意味を含んだメッセージを知らせるのも一つの方法だと思います。

うつ気味の友人の話に、もう散々というほど耳を傾けてきたのですが、状況は全く改善しません。その友人を傷付けず、かつ独り立ちを促すには、 どういう風に伝えたらいいでしょうか。

相手に拒絶感を覚えさせないように断る、というのは確かに難しいと思います。友人を助けたいという気持ちはある。でもこちらにも自分の生活があるから、助けにも限りがあるということを伝えるのは、悪いことではありません。例えば深夜に電話がかかってきた際など「今は夜遅いから駄目だけど、明日の夕方であれば30分くらい話せるよ」など他の選択肢を与えてみてはどうでしょうか。自分の生活を守ることを伝えることにより、友人の自立心を養うことに繋がると思います。

 

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*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

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