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Mon, 17 June 2024

英国流エレガンスと戯れる貴族の館で過ごす休日

英国各地に点在する旧貴族の館、マナー・ハウス。
これらの館は全盛期には華麗な歴史を彩ったものだが、
現在はホテルなど一般客も立ち入れる施設として改修されたものが多い。
脈々と流れる英国の歴史や伝統を垣間見に、 マナー・ハウスの扉を叩いてみませんか。
今回は、ロンドンから数時間で別世界を体験できる5件をご紹介します。
(英国編集部 筒井和美)

マナー・ハウス歴史に息づく

英国各地には、かつて王侯貴族が暮らしていた建築物が数多く点在する。マナー・ハウスとは、これらの旧貴族や領主の館のこと。場所によってはカントリー・ハウスと呼ばれていることもある。

かつては華やかな歴史を彩ったマナー・ハウスだが、貴族階級が全盛を極めた時代が終焉を告げるとともに、数多くの貴族や領主は重くのしかかる税金問題などを理由にこれらの邸宅を手放さざるを得なくなった。しかし、領主の手を離れた後も、これらの館は壊されることは稀であった。貴族が手放したマナー・ハウスは、その後、博物館やホテルなどに改修され現在まで利用されてきたのだ。

緑豊かなカントリー・サイドに、厳かにそして優雅に佇むマナー・ハウス。その内部には、かつてこの館の主が愛したであろう調度品や美しい庭園がいまだにひっそりと息づいている。単なる宿泊施設としてだけでなく、古くからの伝統を大切にする英国人気質に触れられ、英国の歴史を肌で感じられるのがマナー・ハウスの醍醐味。貴族の邸宅に招かれたゲストを気取って、いやその邸宅の主になった気分で、贅沢な至福の時を背筋を伸ばして堪能してはどうだろう。

その佇いはまるで宮殿
Cliveden クリブデン

数あるマナー・ハウスの中でも、その豪華な佇まいで王者の貫禄を示す白亜のマナー・ハウス、クリブデン。英国でも最大規模(152ヘクタール)の広大な敷地を誇るこのマナー・ハウスは、テムズ河畔の眺めの良い小高い丘に位置する。現在はナショナル・トラストの管理下にある館だが、近年までは華やかな歴史を刻んできた上流階級の社交場であり、多くの著名人を魅了してきた。

クリブデンが建設されたのは、今から340年前の1666年。第2代バッキンガム公爵が、その愛人のために建てたと言われている。その後、伯爵家や皇太子など王侯貴族が次々に主として君臨してきた。その中でもクリブデンの最後の主となったアスター家は、金に糸目をつけずに高価な絵画や家財道具を世界中から買い集め、館内に彩りを加えたことで有名。豪華な「会食の間」は、アスター家が主人となっていた時代に、ルイ15世の愛人ポンパドール夫人の猟館から移築されたものだ。

アスター家はもともとドイツ出身だが、米国で財を成し英国に渡った。同家のナンシー夫人は、その美貌と行動力で英国の上流階級に積極的に接触し、一家の最盛期には、チャーチル元首相やセオドア・ルーズベルト米元大統領などもこのクリブデンのゲストとして招かれたと言われている。

アスター家の手を離れたクリブデンは、現在、一室につき4人のスタッフがつく英国でもトップクラスの品格をもったマナー・ハウスとなっている。上流階級が集う場所というイメージが今でも強いが、庭と建物の一部は一般見学者に開放されているので気構えずに訪問してみては。

クリブデン
Cliveden
Taplow, Berkshire SL6 0JF
Tel: 01628 668 561
Fax: 01628 661 837
www.clivedenhouse.co.uk
部屋数: 38室 (すべてスイート・ルーム)
宿泊費: £225~

アクセス
車: M40をジャンクション2、あるいはM4をジャンクション7で降りる。ロンドン中心部から車で約1時間
電車: 最寄駅「Burnham」からタクシー。最寄駅までは、パディントン駅から約30分。一般公開の日程・料金については、ナショナル・トラストのサイトをご確認ください。
www.nationaltrust.org.uk
夏のおすすめイベント
サマー・クルージング
クリブデン近くを流れるテムズ川に浮かぶボート・クルーズ。夕方6時から出航する「シャンパン・クルーズ」、近郊のブレイやマーロウへ行く貸切ツアー、そしてクルーズ後にクリブデン内の「テラス・ダイニング・ルーム」でのランチを頂くものなど様々なツアーが開催されている。ゆったりとした1日を水上で楽しんでみては?
料金: £200~(ボート一隻につき) Tel: 01628 607 149

時が止まった空間に浸る
Great Fosters グレート・フォスターズ

16世紀の趣を称えた左右対称の赤レンガ造りの堂々とした建物。グレート・フォスターズは、その昔ヘンリー8世やエリザベス1世が猟館として使用していたという由緒ある屋敷だ。その証拠に、入り口にはエリザベス1世の紋章が刻まれている。本館の玄関は腰をかがめないと入れないくらい小さく作られているが、これは突然の不審者の侵入を妨げるための工夫だ。

建物内部には、17世紀のタペストリーなどが飾られた「タペストリー・ルーム」、絵画や陶器などを飾った「ギャラリー」などがあり、当時の貴族の生活を偲ばせてくれる。また、ヘンリー8世の妻であったアン・ブリンの名を冠した部屋にはアンの紋章が施されているほか、建物のあちこちにチューダー家の紋章のバラなど王家にまつわるシンボルがたくさん残されており、王家とこの屋敷の繋がりの強さを示しているようだ。

グレート・フォスターズのもう一つの魅力は、1920年代に造られた庭園。英国の庭園にしては珍しく徹底して人の手が加えられた整形庭園は、アッと息を呑むような美しさを誇る。その庭園の奥にある天然の池では鯉が泳ぎ、岸辺には白鳥が戯れる。そして、池に架けられた橋の向こうには、四季の花が咲き誇るバラ園が広がる。庭園が造られてから約百年の月日が流れるが、これらはほとんど昔のままの姿を保っているという。

1930年にホテルとしてオープンしてからは、チャップリン、ビビアン・リー、オーソン・ウェルズなど数々の著名人を迎え入れてきた。昔の面影をそのまま残した、時が止まったような空間でタイムスリップ気分を味わってみてはどうだろう。

グレート・フォスターズ
Great Fosters
Stroude Road, Egham, Surrey TW20 9UR
Tel: 01784 433 822
Fax: 01784 437 383(予約)
www.greatfosters.co.uk
部屋数: 54室
宿泊費: £90~

アクセス
車: M25をジャンクション13で降り、A30を「Egham」方向に進む。ロンドン中心部から車で約1時間
電車: 最寄駅「Egham」からタクシー。最寄駅までは、ウォータールー駅から約45分。

数々の名画の舞台となった
Oakley Court オークリー・コート

1859年にリチャード・ホール・セイ卿によって、テムズ河畔に建てられた宮殿。フランスから嫁いできた愛する妻のホームシックを癒すために、古典的なフランスの宮殿様式を取り入 れて建てられたというロマンチックな歴史がある。

第二次大戦中には、ナチス・ドイツに対するフランスのレジスタンス運動の拠点がこの屋敷に置かれ、シャルル・ド・ゴール将軍もここに滞在したと言われている。60~70年代になると、「ドラキュラ」「ロッキー・ホラー・ショー」など100本以上の映画のロケ地として使用されるようになった。なんだか見覚えがあると思ったら、自分の映画コレクションを確かめて見ても良いかもしれない。

約5億円の総工費をかけ、カントリー・ホテルとして一般に開放されるようになったのは、1985年のこと。オープン直後から、英国随一のホテルとして評判を呼び、特に美しい庭園を眺めながらのアフターヌーン・ティーには定評がある。ゴルフ・コース、スパなどの施設も整い、近くにはレゴ・ランドもあるので、家族全員が満足いく1日を送れるに違いない。

オークリー・コート
Oakley Court
Windsor Road, Water Oakley, Windsor, Berkshire SL4 5UF
Tel: 01753 609 988
Fax: 01628 637 011
www.oakleycourt.co.uk
部屋数: 114室
宿泊費: £118~

アクセス
車: M40をジャンクション4で降りて、A404を 「Maidenhead」方向に進む。M4のジャンクション8/9のラウンド・アバウトについたらA308「ウ ィンザー」のサインに従って進む。あるいは、M25をジャンクション15で降り、M4を西に進ん だあとジャンクション13で降りる。ロンドン中心部から車で約1時間。

本物のエレガンスに触れる
Tylney Hall ティレニー・ホール

自然豊かなハンプシャーに佇む、ビクトリア朝の優雅なカントリー・ハウス。ある記録によると1561年からこの場所に屋敷が立っていたそうだが、この屋敷の主であったティレニー家に 残された書物には、1700年まで屋敷の記述は出てこない。ティレニー家に代々受け継がれた屋敷は、第5代モーニントン伯爵によって一旦取り壊されることになったが、1898年にライオネス・フィリップス氏が館を購入し、現在の「ティレニー・ホール」が建設された。16世紀の様式を取り入れるなど、当時の基準から考えてもかなり保守的なデザインだったと言う。

第一次大戦時には病院として使用され、その後何人かの持ち主の手を経た後、後にロザーウィック卿となるメイジャー・カイザーの手に渡る。第二次大戦中はカイザーの経営する船会社の本社、そして戦後(1948~84年)には学校として使用された後、1985年に晴れてホテルとしてオープンした。

建物内部のほとんどの壁には、オーク材のパネルが取り付けられ重厚な雰囲気を醸し出している。また、グレート・ホールと呼ばれる広間にある豪華な装飾の天井は、イタリアのフィレンツェにある宮殿から移築したもの。敷地内には、イタリアン・ガーデン、ウォーター・ガーデン、ローズ・ガーデンなどの魅力溢れる庭園があり、散策する場所には事欠かない。都会の喧騒から離れ、静かでゆったりとした時間を過ごしたい。

ティレニー・ホール
Tylney Hall
Rotherwick, Hook, Hampshire RG27 9AZ
Tel: 01256 764 881
Fax: 01256 768 141
www.tylneyhall.co.uk
部屋数: 120室
宿泊費: £140~

アクセス
車: M25をジャンクション2あるいは 12で降り、M3に乗りジャンクション5で降りる。ロンドン中心部から車で約1.5時間
電車: 最寄駅「Basingstoke」駅からタクシー(要事前予約)。最寄駅までは、ウォータールー駅から約1時間20分。

一夜の王侯貴族に
Amberley Castle アンバリー・カッスル

中世の頑丈な城壁が張り巡らされた、思わず圧倒されてしまうような外観を誇るアンバリー・カッスルの歴史は、1103年まで遡る。その年ノルマン人の司教、ラルフ・ルッファがこの城の元となる小屋を建てたのだ。以後増改築が繰り返され、16~17世紀になるとエリザベス1世がここに別邸を構えた。しかし、清教徒革命が起こった1643年、一時的な共和制を敷いたクロムウェルによりこの城の一部は取り壊されてしまう。19世紀になってから破壊された部分に修復が加えられてはいるが、いまだに当時を忍ばせるような廃墟となった部分も残っている。

その歴史の重みや剛健な建築から、どことなく取っ付きにくそうな印象を抱くかもしれない。しかしこの外壁の中に一歩踏み入れれば、アットホームな暖かい雰囲気が満ち溢れている。それもそのはず、この城は家族によってこじんまりと運営されているのだ。オーナーのカミングズ夫妻は、大きな白い犬を連れて敷地内を散歩し、滞在者に気軽に声をかける。そのもてなしぶりは、この石造りの城が放つ冷たいイメージを気持ちよく崩してくれる。

館内には、武器や鎧などが飾られ古城の趣が漂う。歴史に名を残した数々の人物と同じ場所に立ち、この城がたどった運命に思いを馳せてみては。

アンバリー・カッスル
Amberley Castle
Amberley, near Arundel, West Sussex BN18 9LT
Tel: 01798 831 992
Fax: 01798 831 998
www.amberleycastle.co.uk
部屋数: 13室
宿泊費: £155~

アクセス
車: B2139をAmberley Village方向に進む。城の入り口にある旗が目印。ロンドン中心部から車で約2時間
電車: 最寄駅「Amberley」駅からタクシー。最寄駅までは、ビクトリア駅から約1時間20分。
マナー・ハウスの掟

優雅な装いで気分を盛り上げるべし

旧貴族の館と聞くと、正装していかなくてはと思われる方も多いかもしれない。しかし、現在はスマート・カジュアルで大丈夫なマナー・ハウスがほとんどだ。特に昼間は、ウォーキング・ツアーなどを開催している所もあり、ジーンズにスニーカー姿の観光客がうろついていたりする。

ただし、日没後やレストランではジャケット・ネクタイ着用を求められることが多いので、予約時にはドレス・コードについて確認することをお忘れなく。本音を言えば、たとえカジュアルでOKだとしても、せっかくの非日常体験を演出するために少しは着飾りたいところ。思い切りドレス・アップして、ブラック・タイのイベントに参加するのも良い思い出になるに違いない。

美食を堪能するための準備を怠るべからず

美味しい食事を楽しむために忘れてはならないこと、それはレストランの予約。朝食は宿泊料金に含まれていることが多いけれど、ディナーは別というのが一般的。
人気のあるレストランを持つマナー・ハウスでは、込み合う週末などには予約なしではレストランに入れないこともあるので、 確認をお忘れなく。
貴族を気取るための基礎知識

貴族制度は、現在のフランス、ドイツ、イタリア北部などを統治していたカロリング朝のシャルルマーニュ大 帝によって導入された制度を元とする。広大な領地を支配していた同大帝は、領地を数十の州に分割し、州に地方官と司教を配置した。時とともにこれらの要職が世襲化されていき、貴族と呼ばれる階級が生まれたのだ。この制度が英国に持ち込まれたのは、フランスのノルマンディー公ウィリアム(征服王ウィリアム1世)が、1066年に英国を征服した時。その後、「Earl」など英独自の呼び方を加えたり、王族を対象とした公爵が生まれたりと細かな階級分けがなされるようになった(表参照)。

爵名位男性女性敬称(呼び方) / 女性
公爵 Duke Duchess Your Grace / Your Grace
侯爵 Marquis Marchioness Lord・領地名 or My Lord / Madam
伯爵 Earl Countess Lord・領地名 or My Lord / Madam
子爵 Viscount Viscountess Lord・苗字 or My Lord / Madam
男爵 Baron Baroness Lord・苗字 or My Lord / Madam
准男爵 Baronet Sir・苗字
士爵 Knight Dame Sir・苗字 / Lady・苗字
 

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