計画通りに準備してスムーズに引越し
帰国の手引き
日本帰国後の教育について
さまざまな帰国生受け入れ校が存在
中高生の編入・大学入試準備
中高の編入学試験
お子さん連れで駐在されている方は、帰国後にお子さんが帰国生として、どのように日本の教育に順応できるか気になるところでしょう。ここでは大学受験も視野に入ってくる、中高生に焦点を当ててみたいと思います。
公立中学に入学を希望する場合、義務教育ですので受け入れ先を探すのは難しはありません。中には日本語環境に不慣れな帰国生の受け入れ体制が整っている学校もあります。公立高校の場合は、帰国生の多い都道府県に受け入れ指定校がいくつか存在し、帰国生入試を実施しています。なお、私立中学・高校ともに、入学試験を受けるか編入試験を受けるかで注意点が若干違います。
帰国子女、海外学校卒業学生などさまざまな呼び名がありますが、ここでは帰国生で統一しています
● 入学試験を受ける場合
帰国枠入試といって、帰国生向きに通常より科目数の少ない入試を実施する学校が多く存在します。ただ、「帰国生」の基準は国で定められているわけではなく学校ごとに規定が異なるため、希望入学先の規約をよく確認しましょう。例えば、ある学校では「海外滞在2年以上、帰国してからの日本滞在期間が1年以内」を帰国生と定め、別の学校ではその年数が異なるなどです。また、海外滞在中に全日制の日本人学校に通っていた場合は、帰国生とは見なさないとする学校もありますので注意が必要です。
● 編入試験を受ける場合
帰国生向けの編入試験を実施する学校もありますが、基本的に欠員があったときにのみ編入生を受け入れるため、希望する学校が常に生徒を募集しているとは限りません。また、帰国生枠での編入学を考慮する上では、中学1年生と高校1年生で帰国するのは避けた方がいいと言われる向きもあります。これは、帰国して2年を過ぎると次の高校、大学入試の帰国生枠に当てはまらなくなるほか、募集自体が少ない1年生での編入が難しい可能性があるためです。
帰国生受け入れ校の種類
一口に帰国生受け入れ校といってもさまざまな種類があります。お子さんのニーズに合わせ、適切な学校を選びましょう。
- •「国際化」を理念に揚げ、留学生や帰国生の受け入れに積極的。入学後のサポートなど受け入れ体制が充実した学校
- • 普通校だが帰国生枠を設け、何らかの受け入れ体制を持つ学校
- • 帰国生向けの入試基準枠はあるものの、特別な受け入れ体制はない学校
将来の大学入試に備えて
・現在のセンター試験は2019年度をもって廃止され、2020年度から新しい入試方法である「大学入学共通テスト」が実施されています。知識を詰め込む暗記重視の試験から、思考力や判断力、そして表現力を問う試験になっており、英語についてはリーディング、ヒアリングの能力がこれまで以上に必要となっています。また、アメリカ英語、イギリス英語の発音に加え英語が母語でない人の発音も使われるようになりました。英国にいる間に、英語で考え話す能力を身に付けておくのは入試にも非常に有利といえるでしょう。
英国の現地校で過ごし、高等教育は日本で受ける予定の場合、英国滞在中に補習校や塾などを利用するのがいいかもしれません。小学校低学年は補習校でベースをしっかり、高学年以降は受験対策も合わせて、日本の学校で戸惑わなくて済むような学力を身に付けておくことが必要。補習校、塾、それぞれのメリットを生かして、お子さんにあった勉強法を見つけるのが大事です。
その内容は多岐に渡る
日本の学校の帰国生入試
やはり事前の情報収集が鍵
英国を始めとする海外で一定期間を過ごした後に本帰国をした学生たちは、日本では「帰国生」「帰国子女」「外国学校卒業学生」といったさまざまな呼称で呼ばれています。近年では、彼らを対象としたいわゆる帰国生入試を実施する学校が増加。この帰国生入試は、上手く活用さえすれば、日本とは異なる教育制度の下で勉強したという受験上のハンデを最小限に留めることができる点に加えて、外国語を操る能力という長所を最大限生かすことができる制度です。ただ帰国生と一言で言っても、その内実はさまざま。外国での滞在期間の違いに加えて、海外で時間を過ごしたのが幼少期か最近のことなのか、通学したのは現地校か日本人学校なのか、それともインターナショナル・スクールかで状況はそれぞれ大きく異なります。だからこそ、事前の情報収集が鍵となるのです。ここではあくまでも各校における帰国生入試の違いを垣間見るために、日本の大学の中から2校を例に挙げてその概要を紹介します。
● 東京大学(文系)の場合
募集人員
各科につき若干名
主な出願資格
・基本的には日本の学校教育12年に相当する課程の最終学校を修了した者。基本的には外国の学校に最終学年を含めて3年以上在学した者。
翌年7月に英国の学校を卒業することを予定している者は今年は出願できない。
・日本の学校に籍を置いたままで交換留学を行った者は本枠では出願できない。
・海外で日本人学校に通学した者は本枠では出願できない。
主な入学試験内容
成績表などを基にした第一次選考を行った上で下記の試験を行う。
① 小論文……2問構成。第1問は日本語、第2問は外国語で解答する。
② 学力試験……英語、ドイツ語、フランス語、中国語の中から一つの外国語を選んで試験を行う。
内容は一般入試と同じ*。
③ 面接……日本語での個人面接を実施。
* 理系はさらに数学や理科科目の試験が課されます。
● 国際基督教大学(ICU、教養学部アーツ・サイエンス学科)の場合
募集人員
各科につき若干名
主な出願資格
・外国の教育制度で中・高等学校を通じて2年以上継続して教育を受けた者。
・国内外を問わず、当該国の学校教育における通常の12年の課程を修了または修了見込みの者。ただし、通常の課程を飛び級あるいは繰り上げ卒業(見込み)により、12年未満で修了するもしくは修了が見込まれる者の出願は認める。
主な入学試験内容
① 英語……IELTS、TOEFLまたはTOEICの公式スコアを事前に提出。
② 小論文……日本語による記述式。
③ 面接……グループ面接方式にて実施。
* 共に2016年度4月の入学志望者向けに発表された内容です。また本稿で取り上げた情報はあくまでも概要です。詳細については各大学までお問い合わせください。
帰国子女枠を用意する学校も
帰国後の子どもの進路
家族一緒になって進路を検討
家族を伴い来英、数年間の駐在期間を経て日本に帰国となった際に、考えなければならない課題としてまず頭に浮かぶのが子どもの進路でしょう。とりわけ子どもが就学中または受験期にあり、日本の学校に転校・編入または受験する場合には、両親が子どもと一緒になって情報収集する必要があります。
日英間にある「学年のずれ」
英国と日本では義務教育の開始・終了時期が若干異なり、また日本では毎年4月に新年度が始まるのに対して英国では9月に新年度を迎えることから、日本から英国の現地校に入学した場合、「学年がずれる」という現象が起こり得ます。通常は日本に帰国した際にこのずれが自動的に解消されますが、例えば海外における中学校の卒業を入学条件として定める日本の高校を受験しようとする際には混乱が発生する場合もあります。
こうした学校への受験資格を満たすために、帰国前に英国の現地校から英国にある日本人学校に編入したり、子どもと配偶者のみ先行して日本に帰国したりといった対応を取っている家族もいるようです。また逆に学生寮を保有する学校に入学するなどして、子どものみ英国に留まるという選択肢もあります。
帰国生入試の活用を視野に
中長期的に英国で生活を送った子どもが私立高校や大学などの高等教育機関を受験する際には、「帰国生入試」と呼ばれる帰国子女向けの入学試験を活用することができます。留学生枠または帰国子女枠の有無や同枠での受験資格、そして帰国生入試の内容については各学校により異なるので、事前に調査する必要があるでしょう。
一般的には、日本国内の学生が受験する入試よりも帰国生入試の方が試験科目が少ない傾向にあります。また英語の試験においては英作文や要約問題が比較的多いことに加えて、日本語での小論文試験が課されるなど、記述式の回答を求めることが多いというのも特徴の一つです。
日本の会社に就職した場合
英政府が移民制限を強めるにつれて、英国の労働許可を取得するのが年々難しくなってきていることから、近年では英国の高等教育機関を卒業後、英国に留まらず、日本での就職口を探す留学生が増加傾向にあります。ただし、就学期間中から一斉にかつ本格的に開始される日本独特の就職活動状況は、留学生にとっては不利に感じられることが多いようです。一方で、近年では留学生を対象とした秋入社枠を用意する日本企業も増えてきました。また英国を始めとする海外で開催される就職フォーラムなどの場を利用して、英国で学生と就職面接を行う日本企業もあります。
各種英語試験の受験
英国で学習を積んだ留学生が日本に帰国した際に大きな武器となるのは、何と言っても英語力。多くの留学生が、その英語力がピークに達している間にという思いから、日本帰国直後または英国滞在中に、英検、IELTS、TOEICなどの各種試験を受験しています。逆に、SPI総合検査など、日本独特の就職試験への対策に英国滞在中から取り組む学生もいるようです。