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Fri, 21 March 2025

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

ブリジット・ジョーンズ 永遠の恋する女性 - 初の映画化から24年新たなファンも獲得して、第4作目が公開中

ブリジット・ジョーンズ。さて、誰でしょう?英国に住む私たちの中で「全く知らない、聞いたことがない」人はかなり珍しいかもしれません。もともとは1995年、「インディペンデント」紙に掲載されたコラム「ブリジット・ジョーンズの日記」(Diary of Bridget Jones)が始まりです。コラムニストのヘレン・フィールディングが架空の人物「ブリジット」になりきって書きました。ロンドンに住むシングルの30代の女性が恋や仕事に悩みながら生きていく様子を日記の形でつづるコラムでした。翌年、コラムは同名で小説化され、大ヒット。フィールディングは続編を次々と発表していきます。

ブリジットがシングル女性の代名詞としてさらに広く共感を呼んでいくのは、2001年公開の映画がきっかけです。恋も仕事もうまくいかないけれど、一生懸命生きるブリジットを米俳優レネー・ゼルウィガーが演じ、若きヒュー・グラントがハンサムな上司ダニエル、演技派コリン・ファースがブリジットの恋人マークとして登場しました。2004年には2作目、2016年には3作目の映画が公開され、今年2月中旬からは第4作目となる「Bridget Jones: Mad About the Boy」がお目見えしました。邦題は「ブリジット・ジョーンズの日記 サイテー最高な私の今」で、日本では4月に公開予定となっています。


最初の映画公開から24年もの歳月が過ぎましたが、ブリジットはなぜ今でも人気なのでしょう? BBCの記事(2月8日付)の中で20代の女性たちがその理由を語っています。最大の理由はブリジットが「等身大のリアルな女性であること」。映画の中で描かれるブリジットは「独り暮らし」「恋人なし」「タバコやお酒の飲みすぎを抑えたいけど、つい手を伸ばしてしまう」「痩せて格好よくなりたいけど甘いものに手を出してしまう」「親に結婚をせかされる」「仕事で失敗続き」「自分のことを大事にしてくれそうにない男性に身を任せてしまい、自己嫌悪に陥る」の姿を見せます。最初の映画では恋する男性からの連絡を待つブリジットが赤いパジャマ姿でアイスクリームをやけ食いし、「独り」がタイトルになった音楽「オール・バイ・マイ・サイド」に合わせて歌いだす場面に「分かる!」とうなずいた女性は筆者だけではないでしょう。上司ダニエルとの初ベッドシーンでは「決めパンツ」ではなく、どでかいパンツを着用していたことがバレてしまいます。ちょっと小太りで「ドジ」という言葉がぴったりのブリジットは、「ありのままの君が好きだ」と告白した、心から自分を愛してくれる男性マークと熱い抱擁を交わして第1作は終わります。

2作目そして3作目と公開されるなかで、ブリジットは等身大でありながらも少しずつ成長していきます。せっかく愛するマークと恋仲になったのに、第3作の冒頭では別れてしまっています。「かつては愛し合った2人が離れ離れになる」のは人生の中でもよくある顛末ですよね。テレビ界でキャリアを積む女性となった40代のブリジットは完璧な女性に一歩近づいたかのようでしたが、ある男性とまもなく深い仲となり、妊娠してしまいます。ところが、生まれてくる子どもがこの男性との間にできたものなのか、マークの子どもなのかが分かりません。どうしたらいいのでしょう? すてきな男性たちに囲まれて、ブリジットは悩みます。


2作目、3作目と続くなかで、ブリジットもほかの登場人物たちも年を取っていきます。新作4作目では2人の子どもを持つ未亡人として登場しますが、今回もまたまた新たな恋に遭遇します。最初の出会いの場面から無様な格好を見せてしまうブリジットのドジぶりは変わっていません。「女性は知的でかつ痩せて美しくなければならない」「家庭も仕事も完璧であるべき」……そんなプレッシャーを押し返すようなブリジットの姿はこれからも私たちを笑わせ、ほろっとさせ、励まし続けてくれそうです。

キーワード

Diary of Bridget Jones (「ブリジット・ジョーンズの日記」)

1995年、コラムニストで作家のヘレン・フィールディングが、独身女性ブリジットの日記として新聞に書いたコラムのタイトル。体重、飲酒量、吸ったたばこの本数、カロリー摂取量とその評価を冒頭に書いた。96年の同名小説は文学賞「ブリティッシュ・ブック・アワード」を受賞。続編は99年、さらにその続編は2013年に出版された。

 
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