ニュースダイジェストの制作業務
Fri, 22 August 2025

2025年8月22日~9月27日初めての女子ラグビーW杯ガイド―― 知って観る、英国大会の見どころ

2025年の夏、女子スポーツの勢いが一段と加速している。サッカー女子ワールドカップではイングランドが初優勝を飾り、9月にはインドでクリケット女子ワールドカップが開催予定。各競技で歴史的な瞬間が生まれようとしているなか、もう一つ注目を集めそうなのが、8月22日から始まる女子ラグビー・ワールドカップだ。開催地はラグビー発祥の地、イングランド。記念すべき第10回大会には、日本代表「サクラフィフティーン」も3大会連続の出場を果たす。強豪国が集うこの舞台で、日本チームがどこまで食い込めるのか。在英の日本人にとっても、現地で観戦できる貴重な機会となるだろう。今回は、大会スケジュールや会場情報、基本ルール、女子ラグビーの歴史なども紹介。初めてでも観て楽しめる、女子ラグビーの奥深い世界へご案内する。 (文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

参考: www.rugbyworldcup.com/2025

女子ラグビー・ワールドカップ

2025年女子ラグビー・ワールドカップ
出場チーム(プール別)

2025年は初の16チーム参戦*となり、合計32試合というこれまでにない規模で女子ラグビー・ワールドカップが開催される。6週末にわたり、英国内8都市を舞台に熱戦が繰り広げられ、8月22日の開幕戦から9月27日のロンドン郊外トゥイッケナムでの決勝まで目が離せない。出場チームは下記の通り。

* 前回ニュージーランドで開催された2021年大会では、参加チーム数は12で全26試合

プールA プールB プールC プールD
イングランド カナダ ニュージーランド フランス
オーストラリア スコットランド アイルランド イタリア
米国 ウェールズ 日本 南アフリカ
サモア フィジー スペイン ブラジル

女子ラグビー・ワールドカップ

会場で楽しむ? テレビで観る?女子ラグビーW杯観戦ガイド

ラグビー発祥の地イングランドで開催される女子ラグビー・ワールドカップ。会場に足を運んでの熱い応援はもちろん、自宅でゆったり観戦するのも楽しみ方の一つだ。ここでは、試合スケジュールや主な会場、チケット情報、ファンゾーンなど、観戦に役立つ基本情報をまとめた。

日英の1次リーグ試合日程

日本で地域ごとに方言があるように、英国でもその地域で使われる独自の言い回しや単語が存在する。実際はこれから紹介するよく知られた地域ごとの訛りからさらに細分化されている。

  • 出場チームがA~Dの4組(プール)に分かれて1次リーグを戦う。日本代表はC組。各組で総当たり戦を行い、それぞれの上位2チームが準々決勝へと進出する。
  • 英国ではW杯開催期間中の全ての32試合がBBCでライブ中継される。BBC iPlayer、BBC Sportウェブ・アプリでも観戦可能。
    https://www.bbc.co.uk/sport/rugby-union

※試合スケジュールは英国時間で表示

イングランド(Pool A)
8/22(金) 19:30 vs アメリカ
8/30(土) 17:00 vs サモア
9/6(土) 17:00 vs オーストラリア
ウェールズ(Pool B)
8/23(土) 14:45 vs スコットランド
8/30(土) 12:00 vs カナダ
9/6(土) 14:45 vs フィジー
スコットランド(Pool B)
8/23(土) 14:45 vs ウェールズ
8/30(土) 14:45 vs フィジー
9/6(土) 12:00 vs カナダ
日本(Pool C)
8/24(日) 12:00 vs アイルランド
8/31(日) 14:00 vs ニュージーランド
9/7(日) 12:00 vs スペイン
アイルランド(Pool C)
8/24(日) 12:00 vs 日本
8/31(日) 12:00 vs スペイン
9/7(日) 14:45 vs ニュージーランド
準々決勝
9/13(土) 13:00 プールC勝者 vs プールD 2位
9/13(土) 16:00 プールB勝者 vs プールA 2位
9/14(日) 13:00 プールD勝者 vs プールC 2位
9/14(日) 16:00 プールA勝者 vs プールB 2位
準決勝
9/19(金) 19:00 準々決勝1勝者 vs 準々決勝2勝者
9/20(土) 15:30 準々決勝3勝者 vs 準々決勝4勝者
3位決定戦
9/27(土) 12:30 準決勝1敗者 vs 準決勝2敗者
決勝
9/27(土) 16:00 準決勝1勝者 vs 準決勝2勝者

女子ラグビー・ワールドカップ

チケットの買い方

申込方式と販売スケジュール

2024年11月5日~19日に1次抽選によるチケット申込期間があり、約13万枚が事前販売された。その後、2025年2月25日より一般販売が開始され、現在も英国国内外で幅広く販売が行われている。

価格とカテゴリーの目安

1次リーグ試合は大人£10~25、イングランド戦は£10~35程度。子ども料金は各試合£5。
決勝トーナメントは、準々決勝が£15~45、準決勝£55、決勝£95~。子ども料金は£5~20。

購入方法(英国国内外共通)

公式サイト https://tickets.rugbyworldcup.com から。チケット受領は、アカウント上からeチケット(QRコード)としてダウンロード可能。

日本代表の試合会場

ノーサンプトン会場

cinch Stadium at Franklin's Gardens
Weedon Road, Northampton NN5 5BG
www.franklinsgardens.co.uk

ロンドン中心部からNorthampton駅まで電車で約1時間、会場は駅から徒歩15分ほど。シャトルバスも出ている。

エクセター会場

Sandy Park
Sandy Park Way, Exeter EX2 7NN
www.sandypark.co.uk

ロンドン中心部からDigby&Sowton駅まで電車で約2時間30分~3時間、同駅から会場まで徒歩約15分。もしくは、Exeter St Davids駅まで直通2時間10分、同駅からシャトルバス。

ヨーク会場

York Community Stadium
Kathryn Avenue, Monks Cross, York YO32 9AF
www.better.org.uk/destinations/york-stadium-leisure-complex/stadium

ロンドン中心部からYork駅まで電車で約約2時間30分、同駅からシャトルバスで会場まで約25分。

女子ラグビー・ワールドカップ

英国人と一緒に巨大スクリーンで観戦したい

ファンゾーンでの鑑賞方法

今大会は英各地の計8カ所で試合が実施される。これに伴い、各試合会場の近くには「ファンゾーン」と呼ばれる区域が設置。基本的に入場無料となるこの区域では、大勢の人々と一緒に大スクリーンでW杯の試合を鑑賞することができる。ここではロンドン市内に設置される公式ファンゾーンを紹介する。

Battersea Power Station
バタシー・パワー・ステーション

9月13日(土)から27日(土)にかけてファンゾーンを設置。準々決勝、準決勝、3位決定戦、決勝戦をライブ中継する。期間中の試合日以外も、ラグビー・ピッチが設置され、コミュニティー・コーチによる体験セッションが開催。家族向けのイベントなどもある。また、地元のカフェやレストラン、バーが発電所の向かいに出店し、特別なフード・エリアも出現する。

44 Electric Boulevard, Battersea Power Station,
London SW11 8BJ
Battersea Power Station駅
https://batterseapowerstation.co.uk

ルールを知ればもっと楽しい女子ラグビー入門

女子ラグビーは基本的に男子と同じルールで行われる。重さ約400グラムの楕円形のボールを奪い合い、トライやゴールで得点を競う。ルールを押さえておけば、試合の流れや選手の動きがぐっと見やすくなり、会場でもテレビでも観戦の面白さが一段と増すはずだ。

ラグビーの基本ルール❶
ボールを前に投げたり落としたりしてはいけない

  • ボールを手で味方にパスする際に前方に投げたら反則 (スローフォワード)
  • ボールを受け取ろうとするもうまく受け取れず、ボールを身体の前に落としてしまった場合は反則(ノックオン)
  • ボールを保持している間に相手からタックルを受け、その勢いでボールを身体の前に落とした場合は反則(ノックオン)

ラグビーの基本ルール❷
トライするか、ボールが相手のゴールポストを通過すれば得点

  • 相手ゴールの後方に設けられたエリア(インゴール)にボールを置く(トライ)ことができたら5点
  • トライを決めた後に、相手のゴールに向けてキックをする機会与えられる(ゴールキック)。このゴールキックがゴールポストの間を通過したら2点(コンバージョンゴール)
  • 相手チームの反則によって与えられたペナルティーキックがゴールポストの間を通過したら3点(ペナルティーゴール)
  • 通常のプレー中に、ボールをいったん地面に落とした上で蹴ったボールがゴールポストの間を通過したら3点(ドロップゴール)

タックル

ラグビーの基本ルール❸
ボールを奪い合うために身体を密着させたり、ぶつけ合ったりするプレーがたくさんある

  • ボールを持った相手選手の動きを止めたり倒したりする(タックル)
  • ボールを持った選手を中心に両チームの選手1人以上が参加し組み合う(モール)
  • 地面上のボールを両チームの選手1人以上が参加し、組み合った状態でボールを奪い合う(ラック)
  • 両チームの選手各8名が組み合った状態になり、押合いながらその中央に投じられたボールを足で後方に運び、最後方にいる選手へと渡す(スクラム)。軽度の反則などで1度中断されたプレーを再開する方法として用いられる
  • 選手がタッチラインの外側から投入したボールを奪い合う。その際に味方の選手を担いだりする(ラインアウト)
試合は1チーム15人、前後半40分ずつのハーフ制で行われる。ラグビーにはその他にもたくさんのルールがあるが、以上の3点さえ覚えておけば、試合観戦を楽しむことができるはずだ。

ラインアウト

15人制と7人制の違い

人数だけでなく、試合時間も異なる。7人制は前後半7分(計14分)で、試合展開が速い。少人数のためスペースが広く、スピードと持久力が重要。連戦形式のトーナメントが主流で、オリンピック種目にも採用された。一方、15人制は前後半40分(計80分)。スクラムやラインアウトなどセットプレーが多い。戦術はフィジカル重視、陣地の奪い合いが中心で、より伝統的なラグビーが楽しめる。W杯はこちら。7人制・15人制ともにフィールドは100X70メートル。

注目の日本選手は?

古田真菜
センターで絶対的な存在感を発揮する選手。2016年に代表デビュー以後、豊富な国際経験を積んでいる。22年にはオーストラリア・ブランビーズで活躍し、チーム内で信頼される存在だった。

加藤幸子
プロップとして前線で安定したパフォーマンスを見せるフィジカルの要。17歳で代表デビューを果たし、イングランドのエクセター・チーフスでも実戦経験を積んだ。国際舞台での存在感が今後も鍵になる。

長田いろは(キャプテン)
前線を支えるバックロー(フランカー)のポジションで活躍し、国際経験も豊富。南アフリカで行われたWXV2トーナメント(国際女子ラグビー大会)で初めてサクラフィフティーンのキャプテンを務めた。

日本代表今回出場するサクラフィフティーンのメンバー

女子ラグビーの歩みをたどる

男子ラグビーが19世紀から世界に広がった一方、女子ラグビーの歩みは決して平坦なものではなかった。女性が激しいタックルやぶつかり合いを含む、いわゆるコンタクト・スポーツに挑戦することへの社会的偏見や、それに伴う資金不足など、多くの壁を乗り越えてようやく今日の地位を築いている。ここでは簡単にその歴史を振り返ろう。

日本代表1917年のカーディフ女子チーム

転機は1970年代

女子ラグビーの初期の記録は19世紀末にさかのぼる。1880年代の英国やニュージーランドでは女性がすでにラグビーをプレーしていたとの記録があるが、当時は非公式であり、競技としての認知は低かった。20世紀前半は、世界的にも女性のスポーツ参加自体が制限されていたため、女子ラグビーはほとんど発展しなかった。

転機となったのは1970年代。英国やニュージーランド、カナダ、フランスなどで女子ラグビー・クラブが相次いで設立され、競技としての基盤が徐々に整い始めた。74年には英国女子ラグビー協会が設立され、組織的な普及活動が本格化した。70年代後半から80年代にかけては、国際試合も少しずつ増加。82年には英国とフランスの間で国際試合が行われた。

初めてのW杯

女子ラグビーの世界的な躍進を象徴するのが、1991年にウェールズで開催された初の女子ラグビー・ワールドカップ(当時は「女子ラグビー世界選手権」)。これは当初、正式な国際大会としての認知が薄くスポンサーもいないことから、選手たちは旅費を含め全て自費で参加するなど厳しい状況だった。しかし、この大会の成功が女子ラグビーの認知度向上に大きく寄与し、以降4年ごとに大会が開催されるようになった。ちなみに、日本女子代表「サクラフィフティーン」がW杯に初出場したのはこの第1回大会だ。以来、日本は着実に力をつけ、2017年の第8回大会ではベスト8入りを果たし、世界の強豪国との競争力を示した。

1994年には世界女子ラグビー協会(WRWC、現在のワールドラグビー女子部門)が設立され、女子ラグビーの国際統括が強化された。それでも運営費は20万ポンド(約4000万円)ほどに過ぎず、1人の男子選手の年俸より低かったといわれている。しかし、2009年にはラグビー・ユニオンの国際競技連盟ワールドラグビー(WR)が女子ラグビーを正式に管轄下に置き、男子と同じ組織のもとでの普及・発展が加速した。

近年は女子ラグビー人気が急速に高まり、W杯の観客数やテレビ視聴率も男子に迫る勢いとなっている。21年には東京オリンピックで7人制ラグビー女子が初めて正式種目となり、世界中で女性選手の活躍が注目された。こうした歴史を経て、2025年に英国で開催される第10回女子ラグビーW杯は、女子ラグビーの成長と挑戦の軌跡を示す重要な節目となる。日本代表をはじめとする、世界各国の選手たちの熱戦を期待したい。

 

この記事を気に入っていただけたら、ぜひ任意の金額でサポートをお願いします。

*本文および情報欄の情報は、掲載当時の情報です。

不動産を購入してみませんか LONDON-TOKYO 24時間365日、安心のサービス ロンドン医療センター Ko Dental お引越しはコヤナギワールドワイド

JRpass totton-tote-bag