2023/24税年度の個人向け税制について
4月6日より2023/24新税年度が始まりました。税率や所得バンドは変更なしですが、賃金インフレを加味すると実際には増税ということになります。法人税も上がります。今回は個人に関する税制改正についてです。
税金が上がらないのはいいことですよね。
税率や対象となる所得金額(Earning Bands)は据え置きとなりますが、高インフレの下、賃金が上がっているので実際には増税となる方が多いと思います。例えば昨年5万270ポンドの給与が6パーセント(3016ポンド)上がり5万3286ポンドとなっても、5万270ポンド超の所得に対し40パーセントが課税されますので、上昇分賃金の60パーセント、1810ポンドのみの所得増加となります。さらに、最高税率45パーセントが適用される所得は12万5141ポンドからと前年度より下がりましたので、高所得者にとって不利になっています。
個人控除額と所得税率(勤労所得)
2022/23 | 2023/24 | |
---|---|---|
個人控除額 (Personal Allowance) |
£12,570 | £12,570 |
ただし、右記を超える所得£2に 対し£1控除額が減少 |
£100,000 | £100,000 |
所得税率(控除額を差し引いた後の所得に対し) | ||
基礎税率: 20%のかかる所得 | 〜£37,700 | 〜£37,700 |
高税率: 40%のかかる所得 | £37,701 ~150,000 |
£37,701 ~125,140 |
高税率: 45%のかかる所得 | £150,001~ | £125,141~ |
会社を経営してますが、法人税も上がりますか。
はい、課税対象利益25万ポンド超の会社は19パーセントから25パーセントへ大きく上昇します。利益が5万ポンド未満の会社は19パーセントのままですが、その間の会社の法人税は利益が増えるごとに段階的に25パーセントまで増える形になっています。さらに、配当所得の非課税枠(Dividend Allowance)も半減されてしまったので、会社経営者には不利な税制改正といえるでしょう。
もう少し詳しく説明してください。
会社経営者は給与の代わりに、会社・本人双方のナショナル・インシュランス拠出金(NIC)対象ではない配当によって、報酬を受け取っている場合が多いです。昨年まで配当所得は2000ポンドまでは非課税でしたが、今年は1000ポンドに半減してしまいました。
では、投資信託の配当も影響されるんですね。
はい、会社経営者だけでなく、通常の株式や投信の投資家にも当てはまります。ただ、配当控除は半減しましたが預金利子控除(Savings Allowance)は昨年のままで、基礎税率納税者は1000ポンド、高率納税者は500ポンドまで非課税です。
金利・配当収入の税率
金利に対する税率 | 配当に対する税率 | |
---|---|---|
基礎税率納税者 | 20% | 8.75% |
高税率納税者 | 40% | 33.75% |
追加税率納税者 | 45% | 39.75% |
投資不動産を売却する予定なのですが、売却税控除が下がると聞きました。
はい、不動産や株式などの証券を売却する際、買った金額との差(利益)に対しキャピタルゲイン税(CGT)が課せられます。昨年までは1万2300ポンドまで非課税だったのですが、本年からは6000ポンドと半減、さらに来年度は3000ポンドに下がる予定です。ご夫婦で不動産に投資していれば2人分の控除額が適用されますので、従来の2万4600ポンドから1万2000ポンド、6000ポンドへと下がってしまうのは大きな増税といえると思います。
キャピタルゲイン税(CGT)税率
証券に対する 税率 |
不動産に対する 税率 |
|
---|---|---|
0%(CGT allowance) | £6,000*まで | £6,000*まで |
基礎税率納税者 | 10% | 18% |
高税率納税者 | 20% | 28% |
追加税率納税者 | 20% | 28% |
でもISAで投資すれば非課税になりますよね。
不動産は非課税投資貯蓄口座(Individual Savings Account=ISA)では投資できません。ISAの限度額も据え置きとなっていて、Cash and / or Stock&Shares は2万ポンド、Junior ISAsは9000ポンド、Lifetime ISA(LISA)は4000ポンドが限度額です。また、1税年度に一個人が投資できるのはそれぞれ1タイプで、合計限度額は2万ポンドですのでご留意ください。A銀行でCash ISA、B投資会社でStock&Shares ISA、C銀行でLISAという形です。全ての合計限度額が2万ポンドですので、もしLISAを4000ポンド利用されたらCash ISAは1万6000ポンドまでの積み立てとなります。なお、政府から支給されるボーナスは限度額に含まれません。
Lifetime ISA(LISA)とは何ですか。
18歳から39歳までの方が開設できる非課税貯蓄・投資口座で、積み立てられた金額の25パーセントまで、政府からのボーナスが口座に支給されます。例えば1000ポンドを積み立てるとボーナスは250ポンドで、LISA口座は1250ポンドとなります。限度額は1税年度4000ポンドですので、ボーナス支給最高額は1000ポンド、1年で合計5000ポンドまでの積み立てができます。ISA同様、口座内で発生する金利・配当・売却益は非課税で複利で運用されていきますが、LISAには資金使途に条件が付いています。①初めて自分の住む不動産(First Time Buyer)を買うか、②定年用資金として60歳以降の引き出し。これ以外の目的で引き出す場合にはペナルティが課せられます。購入不動産価格の上限は45万ポンドで、購入にあたっては居住用不動産ローンを借りる必要があります。
国民年金が増えたと聞きましたが。
年金生活者にはとても良いニュースです。高インフレに合わせ、本税年度の満額は年9628ポンド(月802ポンド)から1万600ポンド(月883ポンド)へ、10パーセントも上がります。満額はNIC を35年以上払った方に支給されます。また、定年を目指し年金積立をしている方へも吉報です。昨年まで4万ポンドであった1税年度に対する年金拠出限度額が6万ポンドへ上昇します。
当コラムは2023年4月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。投資助言を含まない税務助言はFCAに規制されていません。
※次回のマネー教室は8月17日号に掲載致します。