2月12日、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院(SOAS)において、ビジネス日本語スピーチ・コンテスト(ジェトロ・ロンドン・センター、SOAS主催)の本選が開催された。
日本語の学習を通じて、日本のビジネス文化理解と日英ビジネス交流の発展を目的とするこの大会の参加資格者は、日本国籍を持たない欧州連合加盟国在住者たち。日本のビジネス文化についての日本語スピーチを通じて、出場者たちはスピーチの内容や日本語能力、質疑応答能力などを試される。第26回目を迎えた今大会の優勝者は、ジョナサン・キングさん。ブラック・ジョークを交えた流れるような語りと絶妙な間で会場を沸かせた。「Nature Versus Nurture」というスピーチの題名には、生まれたときから何でも出来てしまう天才と、努力をしなければ何も出来ない自分の姿の対比を投影。キングさんは、インターンシップを含む様々な国や企業での就労経験を通じて、グローバル・ビジネスの現場で仕事をする厳しさを痛感したという。この実体験から、世界共通の「仕事が出来る人」に凡人の自分がなるにはどうするべきかというテーマで、多国籍企業で働く上で必要な順応力や協調性を持つことの大切さを訴えた。
日系企業に勤めながらも、仕事では日本語を使う機会がほとんどないというキングさん。「家の中では四六時中ひとりで練習を繰り返していました。シャワーを浴びている間も」。半年前から熱中している落語も、流暢でユーモアあふれる語り口の秘訣。「本大会への出場は3回目の挑戦でしたが、これまでに比べて自分の経験などを多く盛り込むことができたと思います。聞いている人に受け入れてもらいやすいスピーチになるように心掛けました」。
第2位のマシュー・ブラウンさんは、富山県・高岡市に実在する中小企業を例に交えて、衰退が進んでいる伝統産業を技術革新により復活させるべきと提案。実体験に基づく説得力のある内容と、高齢化社会や伝統産業における後継者不足に悩む日本に対する前向きな解決策を示して観客の心をつかんだ。第3位には、前大会で特別賞を受賞したライル・ラウクさん。現地社員と駐在員の間を隔てる壁に着目し、ロンドンで働く日本人駐在員に向けて積極的に現地社員とコミュニケーションを図るよう求めた。特別賞のアーサー・オルザスキーさんは、日本で行った2度にわたるインターンシップの経験を踏まえて、日本の商慣習は他国と異なる部分があるとの見解を提示。自国の独自性を無視して、欧米のビジネス・スタイルを模範しようとする日本に異を唱えた。
今大会で優勝したキングさん(写真左)
入賞者の4人。左からオルザスキーさん、ラウクさん、キングさん、ブラウンさん
執筆: 茂成真遊