Hanacell
輝け、原石たち


アメリカンフットボーラー 佃宗一郎さん

アメリカンフットボーラー
佃 宗一郎さん Soichiro Tsukuda

佃宗一郎さん
1983年 大阪府生まれ
2006年 立命館大学 卒業
2006年 渡米。NFLを目指し、トライアウトに挑戦
2010年 Xリーグ、アサヒ飲料チャレンジャーズ所属
2012年~ 渡独。ドイツリーグ(GFL)、デュッセルドルフパンサー所属

アメリカンフットボールが盛んな関西に生まれ、小学5年生にして楕円形のボールと出会う。立命館大では、エースとして活躍。卒業後は、NFLを目指して渡米した。そして今年、再び海外に挑戦。ドイツリーグ・デビューを果たし、チーム最小のランニング・バック(RB)を務める。

身長157cm。小柄な佃宗一郎選手が戦うフィールドでは、常に彼より一回りも二回りも体の大きな敵が立ちはだかる。しかし彼がボールを持ち、攻撃に転じると、その差は一瞬にして無に帰し、逆に武器となる。ディフェンダーにかすりもせず駆け抜ける姿に、観客は熱狂する。  

「アメフトでは、どんな体格の選手でも何らかの役割を持ってチームに貢献できるんです」と言う佃選手にとって、「体格の差」はまさに20年間付き合ってきた課題であり、そこから選手としての彼の個性が引き出され、磨かれてきた。  

中学生の頃から変わらぬ夢を追い続けている。「いつか、本場米国のNFLでプレーしたい」と。中学、高校、大学と所属したチームで日本一の称号を得て、大学卒業と同時に渡米。NFLを最終目標に、まずは室内で行うアリーナフットボールのチームの入団テストに挑戦した。2シーズン、常に試される過酷な挑戦を続けたが、あと一歩が届かず日本に帰国。新たな課題を胸に社会人リーグのアサヒ飲料チャレンジャーズに入団するも、その直後にアキレス腱断裂という大きな怪我を負ってしまう。前だけを向いて進んできた男が、初めて立ち止まった。その衝撃は、本人の精神を破壊し、精神病院での療養を必要とするほど大きかった。  

NFLを目指すことにのみ注力し、いつの間にか「試合に勝っても、優勝しても、嬉しいと感じなくなっていた」と当時を振り返る。不本意ながらも一時的にアメフトから離れたことで、再びアメフトを楽しむ気持ちを思い出した佃選手の回復は早かった。アサヒ飲料チャレンジャーズに復帰し、同リーグでブランクを感じさせない活躍を見せたのだ。  

二度目の海外挑戦の地にドイツを選んだのは、「欧州の文化に興味があったから」と、今の状況を楽しみつつ、「NFLを目指す選手もGFLにはたくさんいるんです」と、やはり夢はぶれない。(編集部:高橋 萌)

デュッセルドルフパンサー・佃宗一郎選手
デュッセルドルフパンサー・佃宗一郎選手
佃デュッセルドルフパンサー・佃宗一郎選手
デュッセルドルフパンサー・佃宗一郎選手
チームメイトとの体格差に驚かされるが、それよりも目を見張るのが佃選手の俊敏性。屈強なディフェンダーをすり抜け、前進を続けるプレーに注目

Stadion VfL Benrath佃選手が活躍するのは、6度のリーグ優勝の実績を持つデュッセルドルフパンサー。ホームでの試合は、ベンラート城から徒歩10分ほどの場所に位置するスタジアム(Stadion VfL Benrath)で行われる。派手な選手入場シーンや、試合を盛り上げるチアガールの応援など、アメフトならではの臨場感を味わえる。契約を延長した佃選手、来年の春から始まる新シーズンでも活躍が期待される。

Stadion VfL Benrath
Karl-Hohmann-Straße 70, 40597 Düsseldorf
デュッセルドルフパンサーのHP: www.duesseldorfpanther.de
佃宗一郎選手のブログ: http://blog.lirionet.jp/so22/
最終更新 Montag, 01 Oktober 2012 10:15
 

薬学博士 藤川雄太さん

薬学博士
藤川 雄太さん YUTA FUJIKAWA


藤川 雄太さん
1980年 福岡県北九州市生まれ
2004月3月 千葉大学薬学部
薬学総合薬品科学科卒業
2009年3月 東京大学大学院
薬学系研究科博士課程修了。
薬学博士号取得
2009年9月~ ドイツがん研究センターにて
博士研究員。ハイデルベルク在住

薬剤師の資格が取れる、薬という物質の作用を多角的に見ることができるという理由で薬学を修めたが、新薬開発のきっかけになり得るような生命的現象の発見につながる研究をしたいと思い、渡独。がん研究センターに、博士研究員(ポスドク)として勤務している。

科学者ならば、誰しもが「世紀の大発見」を夢見るのではないだろうか、その分野が薬学なら、病気に苦しむ人々を救う画期的な新薬の開発に望みをかけるのではないか―そう思っていた。しかし薬学博士、藤川雄太さんの話を聞く限り、研究とはそれほど単純なものではなさそうだ。  世界中から科学者を集め、がんなどの疾患の解明に取り組むドイツがん研究センターで、藤川さんはがん細胞に多いとされる活性酸素を捉える方法論の開発に励んでいる。「方法論」という言葉が気になった。がん組織の研究ではないのか。  

「生命科学の研究とは、生体内で起こる現象を計算式や論理を用いて記述し、理解するもの。ただそこにはいくつかの階層があり、新しい実験方法を開発する研究、未知の現象を明らかにする研究、それを基に実際の医療などに応用していく研究……。それぞれの研究分野に役割がある」と藤川さんは言う。彼の研究に当てはめれば、出現する細胞もタイミングも作用も全く異なる、捉えどころのない活性酸素という分子をいかに見えるようにするか、そのための方法を開発する役割を担っているのだ。それを使って未知の現象の解明を目指す研究者が実験を行い、活性酸素がいつ、どこで、どのように発生するのか、がんの進行にどう寄与しているのかが分かれば、その仕組みを遮断する新薬開発の道が開けるかもしれない。つまり発見とは、様々な研究の積み重ねによってのみ得られるものであり、藤川さんが行う研究は、その過程の土台作りといったところ。  

一大発見によって世界から注目を浴びるようなポジションではない。しかし、もし誰かが藤川さんが開発した方法論を用いて成果を挙げたなら、それは彼にとっても大きな功績となるだろう。「自分が関わる人々にインスピレーションを与えられる人間になりたい」と語る藤川さんは、この8月で3年間のドイツ生活を終え、日本の大学で助教職に就く。謎に満ちた自然界の紐解きを支える“縁の下の力持ち”の本領が発揮されるのは、これからだ。

(編集部:林 康子)

実験風景
DKFZの研究室での実験風景。危険な試薬を扱うため、白衣を着用。自分の名前が入った白衣が支給される
研究室のメンバー
研究室のメンバー。出身国はさまざまで、インターナショナルな雰囲気セミナーの風景
がん研究センターでのセミナーの風景。関連分野の研究者たちの前で自分の研究を発表し、ディスカッションを行う
 
がん研究センター
がん研究センター

ハイデルベルクにあるドイツがん研究センター(DKFZ)は、地元の大学病院などと提携した臨床応用向けの研究からがんの基礎生物研究まで、広範な視点でがんの実態に迫る、この分野では世界トップレベルの国立研究機関。2008年には同センターのハラルト・ツア・ハウゼン博士が、子宮頸がんを引き起こす「ヒトパピローマウイルス」の発見によってノーベル医学生理学賞を受賞している。

Deutsches Krebsforschungszentrum
Im Neuenheimer Feld 280, 69120 Heidelberg
www.dkfz.de
最終更新 Freitag, 17 August 2012 10:44
 

ミュージカル女優 テリエン美範さん

テリエン 美範さん ミュージカル女優
テリエン 美範さん Minori Therrien

1982年 愛知県名古屋市生まれ。
三重県桑名市で育つ
2001年 名古屋芸術大学音楽学部声楽科に入学
2002年 劇団四季入団。同時期に大学を中退
2010年 劇団四季を退団
2010年
2月~
渡独し、当地でミュージカル女優として
活動中

ドイツ系米国人の父と日本人の母のもとに生まれた。旧姓は今井。19歳で劇団四季に入団し、「ライオンキング」のナラ役をはじめ、「AIDA」でアイーダ、「Wicked」ではエルファバ役で主演を務めるなど経験を積んできた。米国人ミュージカル俳優である夫と共にドイツに挑戦の地を移し、この秋からは夫婦で「キャッツ」に出演予定。

エンターテインメントの髄を極めたミュージカルの世界にあって、舞台と一体となって作品に命を吹き込むのが、ミュージカル女優という存在。芝居、歌、ダンスと、持てる表現力の限りを尽くすことに「最高の喜び」を見出しているというテリエン美範さんの天職だ。  

日本のミュージカル界の名門「劇団四季」に所属し、女優としてのキャリアを積んできた。底抜けに明るい笑顔からは、挑戦し続けることに伴う苦労をもエネルギーに変えてきた彼女の強さが感じられる。  

子どもの頃からずっと夢を追い続けてきた。スポットライトを浴びる世界に憧れ、高校1年生でミュージカル女優になることを目標に据えた。華の女子高生時代の思い出は、バレエとピアノのレッスンだけ。その甲斐あって、芸大在学中に目標を達成した。  

「根拠のない自信に溢れていた時期だった」と当時を振り返る。しかし、大学を辞め、ミュージカルの世界に全身を投じる彼女の前に立ちはだかる、プロのレッスンの厳しさ。それでもミュージカルがもっと好きになれたのは、海外のオリジナルスタッフと一緒に仕事ができたから。「指導するのではなく、一緒に作ろうとしてくれる」。この頃から、「いつかは海外で」との想いを強くしていた。  

夫のドイツ公演参加が決まり、思いがけず訪れた海外挑戦のチャンス。日本では味わったことのない、厳しいオーディションに戸惑いながらも、ようやく結果が出てきた。  

いつかまた日本で、母国語で演じたいという想いも持ち続けている。でも今は、海外での経験が自分の糧となると信じている。日本では、きっとめぐってこなかった「キャッツ」への配役も、その1つ。ミュージカル女優として生きていく、その情熱と覚悟を胸にこの秋、彼女は舞台に立つ。

(編集部:高橋 萌)

ミュージカル「AIDA」ミュージカル「AIDA」
ミュージカル「AIDA」で、アイーダ役を演じた際のテリエン美範さん
歌手としてイベントに
ドイツでは、歌手としてイベントに出演することもWAZ紙
ゲルゼンヒルヒェンでイベント「Day of Song」に出演し、WAZ紙の一面を飾った

キャッツミュージカル「キャッツ」

都会のごみ捨て場を舞台に、ネコたちが織り成す物語。全編を通してアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲の歌で構成され、ネコの動きを模したアクロバティックなダンスも見どころ。「一見、単純で単調な物語と受け取られがちですが、登場するネコたちは皆個性的で、それぞれにサイドストーリーを持っています」と、美範さんが言う通り、登場するネコの背景を少し予習してから観ると、さらに深い感動が味わえそう。

2012年9月22日(土)~
ドイツ国内は、ケルン、シュトゥットガルト、ニュルンベルク、
フランクフルトを巡回予定
*詳細は下記ウェブサイト参照  www.cats.de
最終更新 Freitag, 20 Juli 2012 10:19
 

パフォーマンス・アーティスト 井門 由理枝さん

1980年 愛媛県松山市生まれ
2003年 多摩美術大学 油画科卒業。渡独
2006年 パフォーマンス・アートを始める
2007年 ベルリン芸術大学修士課程Institut für Kunst im Kontext修了
2012年現在 ベルリンを拠点に各地でアート活動を展開中
日本で絵画や映像アートを学び、渡独後は映像と音、パフォーマンスを組み合わせた作品をベルリンの劇場やギャラリーなどで発表してきた。近年は、カナダやカメルーンなど各国のアート・イベントに参加。今年1月には制作のため、フィンランドのレジデンスに1カ月滞在した。

描きたいモチーフを筆でキャンバス上に表現していく絵画と、映像と音を組み合わせるビデオアート。ここまでなら、アートとして一般に馴染み深い分野だろう。しかしそこに、身体の動きが加わると? パフォーマンス・アーティストの井門由理枝さんいわく、それは「動く絵」になるとのこと。

幼い頃から絵を描くことが好きだった井門さんは、当たり前のように美大へ進学した。油絵を学んだ後も、さらに美術の勉強を続けたい、そしてアーティストとしての生き方を追求したいと志し、一路アートの風が吹くベルリンへ。しかし大きな環境の変化にさらされ、制作は思うようにできない。悶々と考える中で編み出したのが、絵に音と身体の動きを足すことだった。それまでもビデオアートは制作していたが、そこに自ら入ってしまおうという大胆な試み。人前で行なうパフォーマンスが加わることで、製作段階では自分の世界に没頭する絵画にはない、「見せる/見られる作品」という視点を強く意識するようになった。

映像素材を組み合わせ、そこに音楽や自然界の音を付け加えて、はまりそうな身体の位置と動きを決めていく。そして、プロジェクターで映像を映しながら井門さんが実際に動くことで、初めて作品は完成する。そんなパフォーマンス・アートを通して井門さんは、「人の心の奥底にある感情や衝動、エゴをリアルに表現したい」と言う。自身の生々しい感情を作品に投影することで、それを観た人が今度は自分の心の奥底に潜む同様の感情に触れられるかもしれないと考え、人間の核心に迫る作品を生み出し続けている。

パフォーマンスを始めて早7年。観客の反応を直に感じられるこの方法に手ごたえを感じながらも、「アーティストとして生きるとは?」という渡独当初の自問に対する答えはまだ見付かっていない。アートで稼ぎ、生活基盤を固めることは決して容易ではないが、「ほかの生き方は考えられない」。ドイツで培った不屈のアーティスト魂さえあれば、茨の道もきっと切り開けるはず!( 編集部:林 康子)


絵画「フラワーシリーズ」。グループ展“PYRATE REALATIONS”にて(2012年4月)



パフォーマンス「dead」(2010年10月)



パフォーマンス「black and white」(2011年7月 )

Information

「自分のパフォーマンスはあくまで映像のためのものであり、ダンスではない」と語る井門さん。その認識は保ちつつも、このほど初めてダンス作品に挑戦し、新境地を開いている。ハードなダンスの世界に戸惑いを感じつつも、グループで1つの作品を仕上げる喜びを感じながら取り組んでいると言う。
写真:パフォーマンス「black and white」(2011年7月)


フランス・アヴィニョン公演 in Avignon Festival Off
7 月14 日(土)~ 28日(土)
Tanztheater Company
“Cie. Se7en SiStars”
Théâtre des italiens
82 bis, rue du Rempart
Saint-Lazare
84000 Avignon, France
www.avignonleoff.com

井門さんのHP
http://yurieido.com

最終更新 Donnerstag, 14 Juni 2012 09:40
 

ゴスロリブランド「DORAGUMA」代表 フロメル 麗奈さん

1982年 千葉県生まれ
2006年 東京女子大学 数理学科卒業
2009年 渡独、ゴスロリブランドの構想を練り始める
2012年3月 ゴスロリブランド「DORAGUMA」、オンラインでの 販売スタート
日本では、広告制作、美容、アパレル関係の会社で経験を積み、ネットショップのノウハウを学ぶ。渡独をきっかけに、ゴスロリブランドの設立を計画。準備期間を経て、クールで セクシーなイメージのドラキュラと、かわいいイメージのクマを掛けた「DORAGUMA(ドラグマ)」として、今年3月にスタートさせた。

マンガやアニメなど日本文化を紹介するイベントの会場に溢れるコスプレイヤー、そこに中世の絵画から抜け出したような優美な貴婦人たちの姿・・・・・・でははく、ゴスロリファッションに興じる若者たちが入り乱れる。日本のサブカルチャーが熱狂的に受け入れられているドイツで、近年特に愛好家を増やしているのが「ゴシック・アンド・ ロリータ(ゴスロリ)」と呼ばれるファッションスタイル。 ヴィクトリア朝時代の英国やロココ、ゴシック様式からインスピレーションを受け、日本で独自の発展を遂げたこのファッションスタイルが、再び欧州に回帰している。

結婚を機にドイツと日本を行き来するようになったフロメル麗奈さんがドイツで出会ったのは、日本文化に熱い視線を寄せるドイツ人たち。彼らの話を聞き、マンガやアニメ、伝統芸能などはある程度しっかりと現地でも根付いているが、ゴスロリがファッションとしての地位を確立できておらず、コスプレと混同されていることに気付いたと言う。そして、ゴスロリを楽しむ若者達がその状況に不満を抱いていることも。本場、日本のゴスロリ ファッションに憧れ、日本の文化を好きだと言ってくれる彼らの期待に応えたいという想いが、ドイツの消費者向けのゴスロリブランドを立ち上げることを決意させた。

「ドイツでも、普段からファッションとして楽しめるように」。それが、ゴスロリブランド「DORAGUMA(ドラグマ)」のコンセプト。だからこそ、プロのデザイナーではなく、上田安子服飾専門学校のゴスロリ学科の生徒たちに協力を仰いだ。日本のトレンドを押さえつつ、ドイツのゴスロリを取り巻く現状や彼らの好みをミックスさせ、ドイツでゴスロリを楽しむ人のためのデザインを一から作り、素材や縫製にもこだわった良質なものを、豊富な サイズバリエーションで提供している。日本文化の中心地デュッセルドルフに店舗を構えることを目指して、麗奈 さんの挑戦は今始まったばかり。(編集部:高橋 萌)


子どもっぽくなり過ぎないように、色のトーンも抑え目に



日本製ならではの質感を楽しんでもらう



デザインを手掛けるゴスロリ学科の生徒たち「産経新聞社提供」

Information

甘過ぎないゴスロリファッ ションがDORAGUMAの魅 力。かわいいだけじゃなく、 セクシーなデザインがドイツ 人に受け入れられているとい う。こちらの人の体型に合わ せて、サイズはMから、なん とXXLまで用意している。抱 き心地バツグンのドラグマ人 形も人気。
※商品、販売の詳細については下記ウェブサイト参照。

DORAGUMA
www.doraguma.de
www.facebook.com/doraguma

最終更新 Donnerstag, 14 Juni 2012 09:41
 

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