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毎日をアップグレードする ドイツの優秀な家電たち

ドイツの家電は、壊れにくさ、機能性、シンプルなデザインにより世界中で信頼を集めてきた。その背景には、効率と耐久性、環境を重視するものづくりの姿勢がある。本特集では、そんなドイツ家電の特徴や最新トレンドとともに、ミーレ、ボッシュ、シーメンスといったドイツの代表的家電メーカーの技術や製品をご紹介する。
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:本誌1096号「ドイツの優秀な家電たち」、Stiftung Warentest 11/2025、t-online「Warum Geräte aus dem Osten heute noch funktionieren」、European Parliament「Right to repair: Making repair easier and more appealing to consumers」、www.home-connect.com 朝日新聞デジタル「近未来のキッチン、『考える家電』で 欧州最大の見本市」(2018年8月31日)

※各商品のバリエーションなどは、国ごとに違いがある場合がございます

ドイツ家電が優秀な3つの理由

1. 高性能で使いやすい

ドイツには、長い歴史の中で培われた技術と革新的なアイデアで、使いやすく快適な製品を世に送り出してきた有名なメーカーがそろう。

2. 耐久性が高くて丈夫

欧州の大型家電の平均使用年数は12年6カ月だが、ミーレ製品は平均17~20年の寿命を持つなど、ドイツの主要家電メーカーはそれを大きく上回る耐久性を実現している。

3. 洗練されたデザイン

さまざまな分野で工業デザインに優れるドイツらしく、家電製品もシンプルで優美なデザインであることが多くのメーカーに共通している。

ドイツ社会を支えてきた家電

ドイツで家電製品が誕生した1920年代は、電気が普及し始めていたものの、多くの市民にとって家電は高級品のままだった。第二次世界大戦後の1950~60年代には、西ドイツでは冷蔵庫、洗濯機、テレビなどが一般家庭に普及し、家電業界は最盛期を迎える。経済発展や技術革新でドイツの戦後復興を支え、女性の社会進出も促した。1900年当時、洗濯、調理、掃除は今日の4倍である約60時間(1世帯1週間当たり)かかっていたが、さまざまな家電製品の登場により、その負担は徐々に軽減されていった。

一方、東ドイツでは、VEB(人民公社)による計画経済のもとで独自の家電産業が発展した。Foron(冷蔵庫)やWMW(洗濯機)などのブランドが知られ、資源不足から製品を長持ちさせる必要があり、修理しやすく耐久性の高い設計が特徴だった。東西再統一後、多くの東独メーカーは市場から姿を消したが、各家庭では今も現役で使われている製品があるほか、Ostalgie(東独ノスタルジー)の対象として一部で人気を保っている。

1955年に発売されたボッシュの冷蔵庫の広告1955年に発売されたボッシュの冷蔵庫の広告

環境性能とスマート家電

近年のドイツの家電メーカーは、特に環境性能の向上に力を注いできた。30年前の洗濯機は平均180リットルの水を必要としたが、現在では40〜 50リットル未満にまで節水が可能に。Stiftung Warentest(商品テスト財団)の2024年10月の最新テストでは、ボッシュ、ミーレ、シーメンスの洗濯機がいずれも「良好(1.7)」の総合評価を獲得している。

さらに近年、欧州連合(EU)の環境規制はより厳格化している。2024年に施行された「修理する権利」法によって、家電の修理可能性が重要な評価基準となった。これにより、メーカーは最低10年間の部品供給を義務付けられ、製品寿命の延長とサーキュラーエコノミー(循環型経済)をさらに促進している。

また、スマート家電の進化も目覚ましい。ボッシュやシーメンスなどが展開するスマート家電プラットフォーム「Home Connect」では、洗濯機やオーブン、食洗機などをスマートフォンから一括操作できるようになった。人工知能(AI)が使用履歴を分析してプログラムを自動調整する機能も導入され、家事の効率化がますます進んでいる。

スマホから操作可能なシーメンスのコーヒーマシンスマホから操作可能なシーメンスのコーヒーマシン

ドイツが誇る家電メーカー9選

ミーレ、ボッシュ、シーメンスの三大家電メーカーをはじめ、ドイツにはそれぞれの伝統と強みを持つ企業が多く存在する。そんなドイツ発の家電メーカーから、最新のトレンドを踏まえたおすすめ家電をご紹介しよう。

品質主義を貫くドイツの老舗メーカー
Miele ミーレ

創業年:1899年
創業場所:ヘルツェブロック
強い製品:キッチン全般、洗濯乾燥機、掃除機
www.miele.co.jp
www.miele.de

Aeriumキャビネット型の衣類ケア機器 Aerium

クリーム分離機の製造から始まったミーレは、「常により良いものを」の理念のもと、20年使用を想定した独自テストなど徹底した品質主義で知られ、世界100カ国で信頼を集めている。近年はビルトイン調理機器の中核ライン「Generation 7000」に加え、2025年には新世代IH「KM 8000」を発表。鍋側センサーと連動する知能化調理システム「M Sense」により、吹きこぼれや焦げつきを自動で回避することができる。キャビネット型の衣類ケア機器「Aerium」(写真)では、シワ伸ばしや匂いのリフレッシュ、花粉・ほこり対策、デリケート素材のケアまで対応。暮らし全体を美しく整えるミーレの革新は今も続いている。

ユーザー本位で進化するドイツ発スマート家電
Bosch ボッシュ

創業年:1886年
創業場所:シュトゥットガルト
強い製品:キッチン全般、洗濯乾燥機、電動工具
www.bosch-home.com

Bosch Backofen Serie 8 ©BoschSeries 8 オーブン

1886年、ロバート・ボッシュが自動車用点火装置の製造で創業し、工業分野で名を広めたボッシュは、1950年代に家庭用家電分野へ本格参入。戦後に「より良い暮らしのための技術」という理念を掲げ、キッチン家電や電動工具など、家庭と産業の両面で革新を続けてきた。現在、家電部門ではAIとIoT(モノのインターネット)技術を軸に、生活をより便利にするスマートホーム戦略を展開。AIを活用して衣類の汚れや素材を自動検知し、最適な洗剤量や洗浄プログラムを選択する「i-DOS 2.0」搭載洗濯機や、AIレシピ連携の「Series 8 オーブン」(写真)など、ユーザーに寄り添う家電を次々と開発している。

速さ・省エネ・美しさのトータル設計
Siemens シーメンス

創業年:1847年
創業場所:ベルリン
強い製品:キッチン全般、洗濯乾燥機
www.siemens-home.bsh-group.com

Picture by: Carsten Koall/DPA/PA ImagesiQ700食器洗い機

電信機器の製造会社としてベルリンで創業したシーメンスは、電信・発電・医療・交通など幅広い分野で技術革新を牽引。現在は、世界200カ国以上で事業を展開するドイツを代表するテクノロジー企業だ。AIとIoTを活用し、調理工程を自動制御するAI搭載オーブンや、使用状況から洗剤量と水温を最適化する「i-Dos」洗濯機など、暮らしに寄り添うスマート家電を次々と発表。さらにiQ700食器洗い機(写真)は、使用者のフィードバックを学習して最適な洗浄サイクルを提案し、時間短縮を可能にしている。機能美と効率性を追求する現代のキッチンに理想的な一台だ。

文化財を磨いたプロ級洗浄力を日常に
KÄRCHER ケルヒャー

創業年:1935年
創業場所:バート・カンシュタット
強い製品:高圧洗浄機
www.kaercher.com/de

RCV 5RCV 5

ビビッドなイエローを基調としたプロダクトが特徴的なケルヒャーは、1935年創業。1950年に欧州初の高圧洗浄機を開発して事業を拡大し、1990年にはベルリンのブランデンブルク門を洗浄して世界的に名を広めた。以後、文化財や著名建造物の清掃支援を各国で展開し、インフラが乏しい現場でも品質は揺るがない。プロの現場で培った技術を家庭向けにも還元し、現在は高圧洗浄機や掃除機に加え、吸引と拭き掃除対応のロボット「RCV 5」(写真)も登場。「プロのような洗浄力」がキャッチフレーズで、ムラなく汚れを落とせるのがポイントだ。

長く使える道具で生活の質を底上げ
VORWERK フォアベルク

創業年:1883年
創業場所:ヴッパータール
強い製品:オールインワン調理機・掃除機
https://corporate.vorwerk.de

オールインワン調理機「サーモミックス TM7」オールインワン調理機「サーモミックス TM7」

カーペットメーカーとして事業をスタートしたフォアベルクは、そのノウハウを活かして、1930年に家電分野にも進出し、現在に至る。同社の主力分野の一つであるオールインワン調理機「サーモミックス TM7」(写真)は、刻む・混ぜる・加熱・蒸す・計量を一台でこなし、10インチの大型タッチスクリーンでレシピ手順や動画ガイドを確認しながら簡単に操作できる。多彩な調理モードで日々の下ごしらえから本格料理までをサポート。ドイツの開発拠点が設計と品質基準づくりを主導し、各国の工場で製品の完成度を高めている。

機能美で選ぶドイツ発キッチン家電
AEG アーエーゲー

創業年:1883年
創業場所:ベルリン
強い製品:洗濯乾燥機 、キッチンコンロ
www.aeg.de

「サファイアマットIH」「サファイアマットIH」

130年以上の歴史を持つ老舗メーカーAEGは、キッチン回りやランドリー家電を主力として展開している。創業当初は発電設備や電動機、家庭用電気機器まで幅広く手がけ、1907年には建築家ペーター・ベーレンスを芸術顧問に迎えて企業デザインを確立。1988年には家庭用IHクックトップを発表して普及を後押しした。近年は傷や指紋に強いマット仕上げの「サファイアマットIH」(写真)を展開。鍋に合わせて加熱エリアを連結・拡張でき、レンジフードも自動で連動して風量を調整するなど、使い勝手の面でも進化を続けている。

手間は最小、意匠は最大の小物家電
BRAUN ブラウン

創業年:1921年
創業場所:フランクフルト
強い製品:ハンドブレンダー、電気シェーバー
www.braun.de

電動シェーバー「シリーズ9 プロ プラス」電動シェーバー「シリーズ9 プロ プラス」

複合ラジオとレコードプレーヤーで名を高めたブラウンは、創業以来、耐久性と機能美を備えた家電を生み出してきた。近年の旗艦は、濃いひげでも素早く深剃りできる電動シェーバー「シリーズ9 プロ プラス」(写真)。五つの刃と押し上げ用のトリマーでヒゲを取り込み、毎秒の細かな振動で肌にやさしく剃る構造だ。防水仕様のため風呂場でも使え、もちろんドライシェービングもOK。持ち歩き用の充電ケースで外出先でも使える上、専用スタンドに置けば自動で洗浄・乾燥・充電を一手に引き受けてくれる、まさに至れり尽くせりの仕立てである。

室内空気家電の市場を牽引するブランド
Venta ヴェンタ

創業年:1981年
創業場所:ヴァインガルテン
強い製品:空気清浄機・加湿器
www.venta-luftwaescher.de

室内用の空気清浄機を手がけるヴェンタは、1981年創業のドイツ発ブランド。独自の気化式空気洗浄を採用する「プロフェッショナル・エアウォッシャー」は、乾いた室内に潤いを与えながら微粒子やアレルゲンの除去も同時に行う二刀流。フィルターに頼りすぎず加湿でき、超音波式に比べホワイトダストが出にくいとされるのも利点だ。広めの空間にも対応し、静音性や省エネ性、シンプルな外観はそのままに、部屋の広さに合わせて選びやすいのも魅力。カラーはホワイトとブラックの2色を展開する。

素材の美しさを引き出すキッチン家電
gaggenau ガゲナウ

創業年:1683年
創業場所:ガゲナウ
強い製品:オーブン、キッチンコンロ
www.gaggenau.com/de

17世紀末に鍛冶工房として出発したガゲナウは、1880年に調理器具の生産を開始。さらに1956年、世界初のビルトインオーブンや独立コンロ、換気装置を市場に導入して名を高めた。1960年代にはバウハウスの精神に通じる、機能を最優先するモダンな造形を確立し、「機能に従うフォーム」という信念は今も息づく。近年の最新冷蔵庫シリーズは複数の保存ゾーンで温度・湿度を最適化し、食材の鮮度と食感を長く保つ。アプリ連携や庫内カメラ搭載モデルでは、外出先から在庫確認や温度管理も可能だ。

家電を選ぶ際の指標「エネルギー消費ラベル」って?

欧州連合(EU)加盟国で販売される対象家電には、共通指標に基づいたエネルギー消費ラベルの貼付が義務付けられている。主な対象は、冷蔵・冷凍庫、オーブン、換気扇、食洗機、証明・電球、洗濯機、テレビ、給湯器、換気設備など。2025年現在は、7段階(エネルギー効率が良い順からA〜G)にランク付けされており、これにより消費者はエネルギー効率の良い家電を選びやすくなる。欧州委員会によると、このラベルは欧州の93%の消費者が認識しており、79%の消費者が製品を購入する際に考慮しているという。

エネルギー消費ラベル

  1. 1. EUエネルギー消費ラベルのロゴマーク
  2. 2. EPREL(欧州製品データベース)へのQRコード
  3. 3. エネルギー効率クラス(A~Gの7段階)
  4. 4. 製品のエネルギー効率クラス
  5. 5. エネルギー消費量
  6. 6. そのほかのエネルギー関連パラメータ(騒音レベル、水消費量、容量、修理のしやすさ、信頼性クラスなど)
  7. 7. 関連するEU規則番号の表示

スタッフが行ってきました! 欧州最大の家電見本市
IFA 2025現地レポート

ベルリンで毎年開催される家電見本市IFAは、米国ラスベガスのCESと並ぶ世界最大級のテック見本市として、業界の最新トレンドを知る上で欠かせないイベント。ドイツニュースダイジェストスタッフが、そんなIFA 2025の現地視察レポートをお届けする。
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:IFA「IFA 2025 draws a successful conclusion: more innovation, more new products, more content, more visitors」、netzwoche「Das sind die Trends der IFA 2025」

IFAとは?

IFA IFA(Internationale Funkausstellung/国際ラジオ展示会)は、毎年9月にベルリンで開催される、欧州最大のコンシューマー・エレクトロニクスと家電の国際見本市。1924年に始まった歴史あるイベントで、当初はラジオの展示会としてスタートした。時代とともに扱う製品は広がり続け、現在では家電、スマートホーム、オーディオ、ビジュアル機器、モバイルデバイス、デジタルヘルスなど、あらゆる先端技術が一堂に会する場となっている。ビジネス関係者だけでなく、一般客も入場可能。
www.ifa-berlin.com

IFA 2025のハイライト

今年のIFAは9月5〜9日に開催され、140カ国から22万人が来場。1900を超える出展者が参加し、主要テーマには「ホーム&コンシューマーテック」「日常生活におけるAI」「ロボティクス」「スマートホーム」「ゲーミング」「コンテンツ制作」が挙げられた。新たに導入されたIFA Innovation Awardsには500を超えるエントリーがあり、多数のブランドがIFAをグローバル製品発表の場として活用した。

トークイベントショルツ政権で副首相、経済・気候保護担当連邦大臣を務めたロベルト・ハーベック氏(中央)が登壇したトークイベント「持続可能性とグリーンテック」の様子

とりわけAI技術の進化が顕著で、各メーカーが生成AIを搭載した家電製品を相次いで発表。自動で在庫を管理する冷蔵庫、時間帯に応じて調光する照明、調理完了を通知するコンロなど、スマート技術が生活の具体的な利便性に結びついている製品が目立った。防犯分野でもAIの活用が進み、顔認識による玄関ロックや自動警報システムが紹介された。ロボット分野では、「状況判断ができる」掃除機や芝刈り機などが登場。AIによるカメラ解析によって障害物や動物を認識し、回避する新機能が搭載されたことで、より安全で効率的な運用が可能になるという。

シーメンスのブースシーメンスのブース

AEGのブースAEGのブース

また、今年のIFAでは「スマート化と省エネ性能の両立」がキーワードに。自動調整式の暖房や、沸騰すると自動で電源が切れるIHクッキングヒーターなど、エネルギーを無駄にしない家電が数多く展示された。さらにサムスンは新型スマートフォン「Galaxy S25 FE」に7年間のソフトウェア更新を保証し、持続可能性をアピール。IFAはまた、次世代ユーザーの取り込みにも力を入れている。今年は若年層を対象としたゲーミングエリアを拡大し、プロゲーマー向け製品や配信スタジオ、電動スクーターの試乗エリア、さらに美容家電の新製品を紹介するスペースも設けられた。

来場者に混ざってメッセ会場内を闊歩するロボット来場者に混ざってメッセ会場内を闊歩するロボット

ほかにも会場では「IFA Sommergarten」という音楽フェスティバルも開催され、約1万人が集まったオープンエアーコンサートや、ポッドキャストデュオ「Fest & Flauschig」のイベントチケットが完売するなど、Z世代やα世代、家族連れにも人気を博した。単なる業界関係者向けの展示会ではなく、一般消費者も楽しめる文化的イベントとして、ベルリンの街全体を巻き込む盛り上がりを見せた。

SHARPTOSHIBA日本を代表するさまざまな家電メーカーも出展

 
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