Hanacell

都市ガイドシリーズ③

バイエルンを象徴する華々しき都市ミュンヘンの魅力再発見!

16の個性豊かな州からなるドイツ。歴史や文化はもちろん、言葉も食もそれぞれ異なる。そんな魅力たっぷりのドイツ各地の都市を、一つずつスポットを当てて紹介していく「都市ガイドシリーズ」の第3回目は、バイエルン州最大の都市「ミュンヘン」。かつてバイエルン王国の中心として栄え、オクトーバーフェストが開催されるドイツビールの名産地として有名なだけでなく、グローバル企業が拠点を置く世界有数の産業地域でもある。そんな歴史とインターナショナルな雰囲気が魅力のこの街を思う存分楽しもう。(文: ドイツニュースダイジェスト編集部)

ミュンヘンの魅力再発見!

ミュンヘンってどんな街?

ミュンヘンってどんな街?

ドイツ南部に位置するミュンヘンは、バイエルン州と隣国オーストリアにまたがるアルプス山脈を望むことができ、イザール川が流れる優雅な街。欧州の主要なビジネスとメディアが集結する大都市であると同時に、バイエルン州の文化の中心地でもある。

歴史的には、バイエルン公国(548前後~1648年)の首都として1158年に形成され、さらに1648年のヴェストファーレン条約によってバイエルン選帝侯領(1648~1805年)に、そしてバイエルン王国(1805~1918年)の首都として世界中に知られていくように。現在はアリアンツやBMW、シーメンスなどのドイツを代表する大企業の本拠地が多数あり、ドイツ経済にとっても重要な地域だ。家賃がドイツで一番高いという面もあるが、国際都市としての開けた雰囲気が魅力。ドイツ国内の人口10万人以上の都市で4年連続1番犯罪率が少ないなど、治安も良い。

またミュンヘンにはデュッセルドルフに次いで日本企業の拠点が多く集まっている。日本関係のイベントとしては、毎年7月に在ミュンヘン日本国総領事館、バイエルン独日協会、ミュンヘン日本人会の三者共催によるミュンヘン日本祭り(ヤーパンフェスト)がある。

アクセス

ミュンヘン空港 Flughafen München

[ 空港→ミュンヘン市内 ]

● Sバーン
ミュンヘン中央駅まで約45~50分 S1、S8

● タクシー
ミュンヘン市内まで約30~40分

www.munich-airport.de

ミュンヘン中央駅 München Hauptbahnhof

● ハンブルク中央駅から
ICEで約5時間30分

● フランクフルト中央駅から
ICEで約3時間40分~

● ベルリン中央駅から
ICEで約4時間30分

www.bahnhof.de/bahnhof-de

お得なカード

ツーリスト向けミュンヘンカード/ミュンヘンシティーパス
München Card/München City Pass

ミュンヘン市内の公共交通機関が乗り放題になるカードで、1~5日券から滞在期間や目的に合わせて選べる。ミュンヘンカードでは美術館や博物館、娯楽施設など、指定された100以上の施設への入場が最大70%の割引に。シティーパスではさらに人気スポット45カ所が入場無料になる特権付き。
www.simply-munich.com/cards

居住者向けファミリーカード
Die Familien Karte

家族生活の経済的負担を減らすことを目的に、市が6ユーロで発行しているカード。条件は18歳未満の子どもがいる家族で、各種割引やクーポン券、限定特典など、日常生活や休日のアクティビティーなどに利用できる。毎年1月1日~12月31日まで有効で、各市役所や自治体のほか、オンラインでも申し込み可能。
https://online.muenchen.de/familienpass

ミュンヘンのおすすめスポット

ミュンヘンのおすすめスポット

ミュンヘンに旅行で来たり、引っ越してきたりした人はぜひ訪れるべき、おすすめスポットをご紹介。

Neues Rathaus① 新市庁舎

新市庁舎

ミュンヘン中心部のマリエン広場には、19世紀末にネオゴシック様式で建設された巨大な新市庁舎(旧市庁舎は広場の東端にある)がそびえている。ここでの名物は、新市庁舎の塔に取り付けられた仕掛け時計。毎日11時と12時(夏場は17時も)に動き出し、上段では騎士たちの騎馬試合の様子、下段ではビール樽職人たちの伝統的な踊りを見ることができる。仕掛け時計が動き出す直前には多くの観光客が広場に集まる。ぜひ時間をチェックして行ってみよう。

Marienplatz, 80331

Städtische Galerie im Lenbachhaus.② レンバッハハウス美術館

レンバッハハウス美術館

19世紀後半のドイツの画家、フランツ・フォン・レンバッハが住んでいたイタリア・ルネサンス様式の建物。現在はミュンヘン市の美術館として使われており、20世紀初期のドイツ表現主義画家のグループ「青騎士」の作品コレクションが充実していることで知られる。ワリシー・カンディンスキーの作品をはじめ、彼と一緒に活動していたフランツ・マルクの作品、さらに「青騎士」に同調していたパウル・クレーの作品も。噴水のある庭が美しいので、作品鑑賞後にゆっくり休息するのもおすすめ。

Luisenstr. 33, 80333
www.lenbachhaus.de

Hofbräuhaus③ ホフブロイハウス

ホフブロイハウス

ビール好きなら一度は訪れたいのが、バイエルン州立醸造所であるホフブロイハウス。バイエルン公爵ヴィルヘルム5世によって造られた醸造所で、1806年にバイエルン公国が王国になるとバイエルン王立醸造所として運営されていた。王冠と「HB」の文字が組み合わさったロゴマークは、バイエルン王国時代の1879年に商標登録されている。2階には静かなレストランがあるが、観光客が訪れるのはにぎやかな1階の大ホール。バイエルンの伝統的な民族衣装に身を包んだバンド隊が調子の良い音楽を奏で、それに合わせて皆で大騒ぎ!

Platzl 9, 80331
www.hofbraeuhaus.de

Frauenkirche④ 聖母(フラウエン)教会

聖母(フラウエン)教会

13世紀にヴィッテルスバッハ家がマリア礼拝堂を建て、街の発展と人口の増加に伴い15世紀に新しい教会として再建された。内部にはヴィッテルスバッハ家の納骨堂がある。タマネギ型の屋根を乗せた約98メートルの二つの塔は、ミュンヘンのシンボル的存在。内側の壁に配置された21の礼拝堂には、バイエルンゆかりの人物たちがまつられている。

Frauenplatz 12, 80331
www.muenchner-dom.de

Münchner Residenz⑤ ミュンヘン ・レジデンツ

ミュンヘン ・レジデンツ

14世紀末からヴィッテスルバッハ家の住居となり、公爵、選帝侯の時代を経て1918年までバイエルン国王の宮殿だった。床面積4万平方メートルという広さで、19世紀後半の国王ルードヴィヒ1世は、当時からすでにレジデンツの一部を市民に公開していた。現在は150以上の部屋が展示室となっており、磁器やクリスタル、金細工作品などヴィッテルスバッハ家ゆかりのコレクションを見ることができる。18世紀半ばに建設されたロココ様式のキュヴィリエ劇場の見学ツアーも。

Residenzstraße 1, 80333
www.residenz-muenchen.de

Alte Pinakothek/Neue Pinakothek⑥ アルテ・ピナコテーク/ノイエ・ピナコテーク

アルテ・ピナコテーク/ノイエ・ピナコテーク

ヴィッテルスバッハ家の絵画コレクションが元になった美術館で、旧(アルテ)と新(ノイエ)の二つがある。ヴィッテルスバッハ家の絵画コレクションは16世紀前半から始まり、19世紀前半のバイエルン国王ルードヴィヒ1世の時代に絵画館を建設するに至った。アルテ・ピナコテークにはクラーナハやデューラー、ホルバインなどドイツの巨匠作品や、オランダ、フランス、イタリア、スペインの名画が、ノイエ・ピナコテーク(2025年まで改修工事中)にはゴッホやセザンヌ、マネ、モネ、ゴーギャンなどの傑作が並ぶ。

アルテ・ピナコテーク:Barer Str. 27, 80799
ノイエ・ピナコテーク:Barer Str. 29, 80799
www.pinakothek.de

Englischer Garten⑦ エングリッシャーガルテン

エングリッシャーガルテン

イザール川に沿って広がる375ヘクタールの広大な緑地公園で、1792年から市民のために開放されている。幾何学模様のフランス庭園に対し、自然の樹木を生かした英国風の庭園であることから、エングリッシャーガルテンと呼ばれる。イザール川を引き込んだ小川や、水鳥が集う大きな池も。夏場はビアガーデンが有名で、年末にはクリスマスマーケットが開かれるなど、年間を通して市民や観光客の憩いの場となっている。

Reeperbahn 1, 20359

BMW Welt⑧ BMWワールド

BMWワールド

2007年にオープンしたBMWワールドは、BMW博物館やオリンピアパークの近くにあり、体験型のイベント会場として人気が高い。展示場には世界のオールドファッションやスポーツカーなど珍しい車が並んでいるほか、館内にはミシュラン2つ星レストラン「エスツィマー」(Esszimmer)があり、ここでの食事のために訪れる人も少なくない。

Am Olympiapark 1, 80809
www.bmw-welt.com

ミュンヘンのおすすめスポット&お土産

Viktualienmarktヴィクトアーリエンマルクト

ヴィクトアーリエンマルクト

市民のための常設市場で、1807年以来、日曜・祭日を除いて毎日オープン。小さな小屋が所狭しと並び、パンや乳製品、野菜や果物、肉、魚などの食料品が売られている。屋台小屋に囲まれた広場はビアガーデンになっており、夏場には朝から地元市民たちがビールを楽しむ姿も。マーケットで売られる香辛料や蜂蜜などは、お土産にもぴったり。

Viktualienmarkt 3, 80331
※S+U「Marienplatz」から200m

Dallmayrダルマイヤー

ダルマイヤー白ソーセージは、やわらかくてふわふわの食感が最高!

新市庁舎の裏手にある、創業1700年という老舗の高級デリカテッセンの店で、1870年にバイエルン出身のアロワ・ダルマイヤーに受け継がれている。ドイツでも有名なコーヒーや紅茶ブランドであり、ワインやチョコレート部門も充実。高級レストランも併設されている。本店を訪れる時間がなければ、ミュンヘン空港のショップをのぞいてみよう。ミュンヘン名物の白ソーセージの缶詰のほか、コーヒーや紅茶、プラリーネ、フルーツゼリーなども人気。

Bierkrug mit Deckel蓋付きビールジョッキ

蓋付きビールジョッキビールを飲むのにはもちろん、インテリアとしても◎

ミュンヘンのお土産屋さんに行くと、必ず見かける蓋付きのビールジョッキ。ドイツ最大のビール都市であるミュンヘンらしいお土産だ。装飾用なら小さいサイズがおすすめ。ちなみにホフブロイハウスでは、常連客はお店でマイボトルならぬマイビールジョッキをキープすることができるほど、ミュンヘンの人にとってビールジョッキは大切!

きらびやかな王都の歴史からひも解くミュンヘンが国際都市になるまで

かつてバイエルン王国の都だった華々しい歴史を持つミュンヘン。才知に優れた数々のバイエルン公爵や選帝侯、王たちもいれば、市民を顧みない王や独裁者の登場など、波乱の歴史も経験してきた。そんなミュンヘンが今日国際都市として発展するまでの、街の歴史をのぞいてみよう。

参考:中経出版『ドイツ王室1000年史』、BR「Vom Umsturz zum Absturz」、stadt.muenchen.de「München - ein chronologischer Überblick von Helmuth Stahleder」、lpb「Novemberrevolution 1918/19」、Haus der Bayerischen Geschichte「ATLAS ZUM WIEDERAUFBAU」

ミュンヘン市内西側の目抜き通りであるマキシミリアン通りの1850年ごろの様子。中央奥に見えるのはバイエルン州議会議事堂があるマキシミリアネウムミュンヘン市内西側の目抜き通りであるマキシミリアン通りの1850年ごろの様子。中央奥に見えるのはバイエルン州議会議事堂があるマキシミリアネウム

「ミュンヘン」の名付け親は神聖ローマ皇帝

バイエルン公国が形成されたのは548年ごろにさかのぼるが、今日のミュンヘンの基礎を作り上げたのはバイエルン公ハインリヒ3世の時代だ。彼は、塩の交易路であったミュンヘン市内のイザール川に目を付け、橋のふもとで税を徴収することを思い付く。このおかげでミュンヘンは財政的に豊かになっていった。

ところでバイエルンといえば、780年間も統治したヴィッテルスバッハ家を思い浮かべるだろう。ヴィッテルスバッハ家がバイエルン公に初めて就任したのは、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世、通称バルバロッサによって任命された1180年のことだった。上記の徴税のようにやり手であったハインリヒ3世だが、バルバロッサと対立したことから領地を取り上げられてしまう。そしてバルバロッサはヴィッテルスバッハ家のオットー1世に領地を与え、バイエルン公に任命した。「ミュンヘン」という都市名もバルバロッサによって、修道士の意味を持つ「メンヒェ」(Mönchen)から命名されたといわれている。

ヴィッテルスバッハ家で初めてバイエルン公になったオットー1世ヴィッテルスバッハ家で初めてバイエルン公になったオットー1世

バイエルン王国の栄枯盛衰

14世紀になると、ヴィッテルスバッハ家から神聖ローマ皇帝のルートヴィヒ4世が誕生。やり手な彼は、塩の専売権を獲得するなどミュンヘンの経済を発展させるのに一役買った。さらにルードヴィヒ4世の孫シュテファン3世の代には、ヴィッテルスバッハ家のミュンヘン・レジデンツの建設を開始。以降19世紀まで改築され続け、今日でも豪華に装飾が施された王宮を見学することができる。

野心家として知られる15世紀のアルブレヒト4世は警察機構を設置し、河川・橋・水道工事を手がけた。これにより治安も安定し、人口は1万3500人に増加。またその息子であるヴィルヘルム4世はビール純水令を定め、バイエルンで造られるビールの質を格段に向上させた。ドイツのビールは、今もこの法令に準じて造られている。ホフブロイハウスを造ったヴィルヘルム5世は、彼の孫に当たる。

1805年、バイエルン王国に昇格してからも、経済、産業、政治、文化の面で大きく発展していった。ルートヴィヒ1世はイタリア・ルネサンスに傾倒。ミュンヘンのオデオン広場にある「将軍堂」はフィレンツェのランツィの回廊を模倣するなど、芸術的な建造物を残した。またマクシミリアン2世はミュンヘンの道路の整備拡張を実行し、街並みを新しい建築様式(マクシミリアン様式)に整えた。高級ブティックが並ぶマクシミリアン通りでは、今でもその姿を見ることができる。しかし戦争を嫌い、ノイシュヴァンシュタイン城など建築と音楽に浪費したルートヴィヒ2世の頃から徐々に体制が崩れ始める。

激動の時代を経て現代へ

1918年11月7日から8日にかけて起こったバイエルン革命では、バイエルン国王ルートヴィヒ3世が倒された。そしてミュンヘンでは、ドイツ初の共和制国家「バイエルン自由国」を宣言。しかしその後も情勢は安定せず、1923年にはアドルフ・ヒトラーを中心としたミュンヘン一揆が勃発。その後ナチスが台頭し、第二次世界大戦の空襲によってミュンヘンの街の半分が廃墟となるなど、激動の時代が続いた。

戦争によって荒れ果てたミュンヘンだったが、戦後は旧市街の古い街並みの復元に力を注ぎ、旧市街以外の地域ではビジネス街を建設。さらに1972年の夏季オリンピックに合わせてオリンピアパークの建設を始め、交通網の近代化を成功させる。また旧市街の一部が歩行者天国になったことから、ショッピング街としても大繁盛するようになった。

そして今日のミュンヘンはハイテク産業が集まり、ドイツを代表する大企業が数多く集まるドイツ有数の都市へと成長。インターナショナルで住みやすい街として学生にも人気が高く、最近ではスタートアップ企業の進出も顕著になっている。

1972年のミュンヘンオリンピックに向けて建設されるスタジアム1972年のミュンヘンオリンピックに向けて建設されるスタジアム

ミュンヘンをもっと楽しむヒント

まだまだ魅力いっぱいのミュンヘン。この街をもっと楽しむためのヒントを伝授する。

お散歩にぴったり!ミュンヘンの小さなヴェネツィア

人気のアウ地区にはアウアーミュールバッハという全長7キロの小川が流れ、19世紀ごろまで製粉機をはじめ、洗濯や消火などにも利用されていた。「リトルヴェネツィア」と呼ばれる小川の中流辺りには飲食店が立ち並び、フォトジェニックな風景のなかのんびり散歩を楽しむことができる。年3回マリアヒルフ広場で開催される市場「アウアードゥルト」では、すてきな食器や雑貨、骨董品が見つかるかも!(参考:下町情緒あふれるアウアーミュールバッハ

「リトルヴェネツィア」とも呼ばれるアウ地区「リトルヴェネツィア」とも呼ばれるアウ地区

若者を惹きつける人気カルチャースポット

高級なイメージが強いミュンヘンだが、実はアクティブな若者が集まるカルチャースポットも充実している。鉄道廃墟を改装したテクノクラブ「バーンウェアター・ティール」では、フリーマーケットなど文化プロジェクトも開催。また空き工場の敷地にできた「シュガー・マウンテン」では、芸術・スポーツ・文化的体験の融合を目指しており、施設は誰でも無料で利用できる。

アウトドア好きならミュンヘン郊外の自然へ

ミュンヘン郊外には多数のハイキングコースやサイクリングコースなど、日帰りで行ける自然スポットが数多くある。 ルートヴィヒ2世が謎の死を遂げたシュタルンベルク湖までは電車で約1時間半、車で40分と近場。さらに南へ行くと、ヴァルヒェン湖が広がり、ウィンドサーフィンやセーリングが楽しめる。標高1700メートルのヘルツォークシュタンドまでは、ヴァルヒェン湖からケーブルカーで行くことができる。

 
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