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独断時評

伊達 信夫
伊達 信夫 経済アナリスト。大手邦銀で主に経営企画や国際金融市場分析を担当し、累計14年間ドイツに在住。2年間ケルン大学経営学部に留学した。現在はブログ「日独経済日記」のほか、同名YouTubeチャンネルやX(旧Twitter)(@dateno)などでドイツ経済を中心とするテーマを解説している。デュッセルドルフ在住。

第37回外国人労働者の受け入れ ドイツは日本の手本となるか

戦後復興における「ガストアルバイター」の導入以来、外国人労働者受け入れを積極的に進めているドイツでは、日本の2倍以上の外国人が就労し、社会基盤を支えるのに不可欠な働き手となっている。本稿では日独両国における外国人労働者活用の現状を比較し、多国籍化する社会を私たちがどう生き抜くべきかを探る。

  • ドイツの働き手を維持するためには、毎年40万人の移民受け入れが必要
  • ドイツと日本は共に人手不足だが、外国人労働者活用方法は大きく異なる
  • 外国人との共生を意識した異文化理解力は、ビジネスだけでなく日常生活にも必須のスキルとなる

毎年1%の働き手が消えるドイツでも深刻な人手不足

ドイツでは日本にやや遅れて少子高齢化の悪影響が顕在化している。ドイツ経済の低迷長期化の主因は人手不足であり、潜在成長率を日本と同程度の年+0.4%にまで押し下げている。連邦雇用庁の労働市場・職業研究所(IAB)の試算によると、シニア世代の大量退職などにより、2020~2035年の間に約720万人分(全就業者数の約15%相当)の労働力が消滅する。 何も対策を打たなければ、毎年1%程度の働き手が失われていくということだ。

IABは「この穴を埋めるためには、毎年40万人の移民受け入れが必要だ」と主張し、ドイツ国内で大きな注目を集めた。帰国者を差し引いた純増で40万人を確保するということは、グロスで毎年100万人規模の外国人を新たに迎え入れることを意味する。これは一部の工場での「人材活用」といった生易しい話ではなく、社会の軋轢を生みかねない異文化の大量受け入れにほかならない。一方で、メルツ首相が年金受給時の所得や残業手当に対する減税などを通じてドイツ人自身の労働時間を延ばそうとしているが、「ワーク・ライフ・バランスの世界チャンピオン」であるドイツ国民の抵抗は根強く、国内での労働力掘り起こしは難航しているのが実情だ。

日本とドイツで違う外国人受け入れ状況

世界最先端の少子高齢化で早くから働き手が減少している割に、外国人労働者受け入れに消極的だった日本は、ドイツよりずっと前から深刻な人手不足に陥り、潜在成長率がゼロ近傍に低下していた。しかし近年、経済界からの強い要望に応える形で「特定技能」制度などを拡充し、恐る恐る外国人労働者を増やしてきた。介護施設や建設現場が外国人に支えられているという意味では、ドイツに少し近づいてきたかもしれない。しかし、下表のように両国を比較すると、多くの違いが浮き彫りになる。

外国人労働者を巡る日本とドイツの比較

比較項目 ドイツ 日本
外国人
就労者数
584万人
(2025年6月)
257万人
(2025年10月)
就労者の
外国人比率
17% 4%
外国人就労者の
主な出身国
①トルコ(10%)
②ルーマニア(9%)
③ポーランド(9%)
①ベトナム(24%)
②中国(17%)
③フィリピン(10%)
受け入れ
コンセプト
学歴・資格・実務経験・将来性など複数の基準を設け、スキルを有する人材を世界各国から計画的に受け入れる方針 介護・建設・外食など人手不足が深刻な分野を中心に、特定産業の人材確保を目的とした受け入れを段階的かつ慎重に進める方針
歴史的
背景
1950年代からの移民受け入れ経験が豊富 近年になってから本格的な受け入れに移行
言葉と
環境の壁
多様性尊重の姿勢が広がりつつあり、特にIT・研究開発・一部の国際企業では英語を主な業務言語とする職場も増えている 多くの職場で高度な日本語能力が求められ、組織文化として周囲との協調や暗黙のルールへの適応が重視される傾向がある
現在の
主な課題
住宅不足や難民政策との線引きの難しさに加え、極右政党AfDをはじめとする右派勢力の影響で移民・難民政策を巡る政治的対立が強まっている 記録的な円安の影響で国際比較上の賃金水準が相対的に低下し、アジア近隣諸国との人材獲得競争で条件面の見劣りが指摘されている

ドイツでは早くから日本よりはるかに多くの外国人労働者を積極的に受け入れてきており、その存在なくしては社会基盤の維持が不可能な状態となっている。両国の最大の違いは「社会の成熟度」と「言語の壁」だろう。半世紀前から移民と共生し、英語での就労も広く許容するドイツに対し、日本は未だに高度な日本語能力や独特の同調圧力を求める傾向が強い。深刻な人手不足という共通課題を抱えながらも、グローバル人材から「選ばれる国」としての土壌には、大きな開きがあると言わざるを得ない。

誰もが「異文化理解」を問われる時代に

ロボットや人工知能(AI)で全ての人手不足を解消できない限り、日本の外国人労働者は今後も増えていくことになる。これは決して企業や人事部だけの問題ではない。これから社会に出る学生には、国籍の異なる上司や同僚と共にパフォーマンスを発揮するスキルが不可欠となる。家庭においても、子どものクラスメートや将来自分たちを介護してくれる人の多くが外国人となる日常に向け、異文化コミュニケーション能力が問われることになる。

ドイツのビジネス現場で日本人駐在員が日々直面している「国籍や文化の違う多様な人材をまとめ上げる苦労」は、そのまま未来の日本社会を生き抜くための必須スキルになるということだ。「外国人アレルギー」を克服し、「対等なパートナーとして共に社会を創る」という意識へのパラダイムシフトが日本人全員に求められる時代になりつつあると思っている。

 
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